1400「a先生のことが心配」(10月24日(土)晴れ)
妙正寺ラジオ体操会、朝ラジオ体操をやりたいものだけが公園にあつまる。スピーカーなどの機材、方針決定の会議等の費用がかかるから、会費は年500円という事になっている。しかし納めないで来たって構わない。名簿には数年前まで住所と電話番号ぐらい書いてあったが、今ではそれもない。時々皆の影にどんなことが隠されているのか、いぶかしく思うが分からぬ。みな60-70歳以上のお歳より。たまに幼児が来たりすると、歓迎されて一番前で体操をやれ、等と言われる。
しかし人の入れ替えは確実に起こる。60才、70歳越えて男は仕事がなくなり、女は亭主の相手も不要となってくると、にわかに自身の健康が心配になったり、一日を気持ちよくスタートさせたいと考えたり、いろいろな理由で来始める。一方で病気やけがをしたり、年齢で足腰弱ってきたりするといつの間にか来なくなる。しかし会としてはもちろん、周囲の人数人を除いて気にする人もいない。dさんは指導員をやっていていろいろ教えてくれたが、数年前に病気で亡くなった。最高齢のeさんはいつの間にか。ガス会社もサービス店をやっておられたfさんも転んで足をくじいてからこなくなった。我々もいつそうなるのか・・・・。
今朝行くとcさんが「a先生のことを御存じありませんか。なにかご不幸があったと聞きました。」そういえばここ数日お会いしていない。先生は確か昭和7年、私より10歳近く上、寒くなってきたから来る気がしなくなったのかもしれぬくらいに思っていた。
a先生は小児科の先生である。誠実なまじめなお人柄である。大体小児科というのは苦労ばかり多いけれど、なかなかむくわれぬ、と誰かに聞いた。子供が心配だから、親はいつ電話をかけてくるかわからぬ、それでいて大したことが無い場合が多いから大金は取れぬ。
数年前から先生と話すようになった。ゴルフが趣味という。近くの有賀園というゴルフ用品専門の店で求めたと言う白い幅広のバンドが良く似合っていた。児童診断などで学校などもよく回っていおられるようだ。周りのおばさんたちにも人気があった。
先生はジャズも趣味らしく、そちらの仲間と1年位一度くらい外国旅行をされる。いつかキューバ旅行に行かれた折、陶製の現地の女性らしい像の人形をお土産に頂いた。素焼きした人形、肥っていて尻と突出し、くわえ煙草をし、豊かな乳房を見せる、真っ黒な女性像、後に私自身がキューバに行ったおり、香炉である、と知った。胴の中で香をたき、口から煙をゆらゆら立ち上らせるのである。可愛くて今でも棚に飾っている。私も時々海外旅行に行くからお返しを買ってきて、そんなやり取りがずっと続いている。
a先生と親しく話すようになってから、やはり先輩で設備会社の社長をやっているbさんも加わった。毎朝会場に行くと三人でハイタッチをする。そしてつぶやくのである。「今日も一日頑張りましょう。ラジオ体操は参加することが一番大事。」今では公認の感じで、おばさんたちが「良い年の爺が3人よって何だ?」と苦笑している。
三人で年末に二度くらい会食とカラオケを楽しんだことがある。bさんはカラオケが大趣味。新しい歌もどんどん仕入れてくる。業者仲間等と夜遅くまで飲みまくり、唄いまくることもしばしばである。だから我々のカラオケでも同じ。一方a先生はほとんど唄わぬ。その場の雰囲気を楽しまれている感じ。それでも前回は「北帰行」を唄われた。a医院は井荻駅の向こうにあると聞いていたけれど行ってことがない。カラオケの帰り、タクシーで帰るが、私はいつも手前で降りてしまう。子供が病気になったら行こうと思っていたが、孫が我が家に来るのは1年に1度か2度、うまい具合に?病気に等ならぬ。
午前中にそのa医院を尋ねてみた。息子さんも医者をしておられるが別のところで開業。この家には奥様とお二人だ、と聞いた。2階建ての町の病院、手前に人形などおいた子供の遊び場。然ししまっており、張り紙には「体調不良により当分の間休院させていただきます。御用の方はベルを押してください。」人が出てきたらなんと聞こう。「先生、亡くなられました。」とはゆかぬから「ラジオ体操でご一緒のものですが、先生最近お見えになりませんが、如何ですか。」くらいか、と考えながらベルを押す。しかし何の応答もなかった。翌日bさんの話「私は電話をかけてみたのですがその張り紙のような内容のメッセージが流れて来ただけでした。」
先生、早く戻ってきてください!
最後に「学校や会社の名簿がなくなった。」「隣組がなくなった。引っ越し挨拶すらまれになった。」「死んでも生きても人に知られぬ」「差別になると採用などで人の事を調べられぬ」「個人情報は得た目的以外使ってはならぬ。たとえ警察でも・・・・。」・・・・みな個人のプライバシーを保護するためのものである。しかしそのおかげで随分と不便な、素っ気ない世の中になった、と感じるのは私だけだろうか・・・・・。
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