1408「パリ同時多発テロに思う。」(1119日(木)晴れ)

 

パリで同時多発テロが発生し、120人以上の人が亡くなった。イスラム国が反行を認める宣言を出した。主犯の男も特定された。5日ほどたった後、フランス警察と軍はサンドニ地区に或る彼等の本拠地を襲った。銃撃戦の末10人前後が逮捕されたり、殺されたりした。その中には首謀者のモロッコ国籍、ベルギー在住の男もいたという。

ある人が「自爆テロは特攻隊と同じだ。」と言った。私はこの言葉が非常に気になった。

YAHOO質問欄などに同じ質問が掲載されていた。

その答えポイントは「特攻隊は国家が主導し、国のために軍人のみを殺した。言って見れば戦争の裏ワザであった。一方自爆テロは国家と認められていない団体が民間人まで標的にした殺人行為だ。」というものであった。

また最近あのおしゃべりジャーナリスト古舘一郎は「有志連合による空爆もテロにあたる。」、同席した学者もイスラエルが14年にガザ地区を空爆したときに、国連運営の学校も攻撃するなどして、約500人の子供を含む市民1400人以上が亡くなったことに触れ、「亡くなったご遺族からすれば、これがテロでなくて何でしょうか」と指摘したとか。

こういう風に考えてくると、私は「一体正義とは何か。」という問題にぶち当たるように感じる。

通信の1234で私はマイケル・サンデンの「これから「正義」の話をしよう。」を紹介した。

功利主義に基づく正義、リバタリアンの正義などが紹介された後、著者はマッキンタイヤの考えをほぼ受け入れている。

「我我は、有る国家の国民であり、民族であり、同業組合の会員であり、そして家族の一員である。その様なものとして過去から様々な負債と遺産を受け継いでいる。私にとって善いことはそうした役割を生きる人々にとっても良いはずだ。これが私の道徳的出発点となり道徳的特性を与える。」

しかしこの考えを取ったとしても愛国者は美徳か、と言うような問題もそうであるし、ある兄弟のように犯罪者の弟をかくまう行為は正義かなどの問題にも直面する。

欠点はあると言いながら、私もこの考え方には賛成したい。しかしこうも指摘したい。正義は時代や環境と共に変わり、現在の視点に基づいて過去のことを断罪することはおかしいと考える。正義は複数ある場合だってある。イスラエルの攻撃の問題などアラブ、イスラエル双方に正義があるのだろう。

現在なぜ、平和が愛されるのか。それは過半の人々が平和であるほうがいい、正義であると感じるからだ。なぜイスラム国が国際的に認められないのか。それは彼等の行為が世界全体の人々に到底受け入れられるものではない、正義ではないと過半の人々が感じるからだ。もしたとえばイスラム世界全体が、西欧文明を拒絶し、平和より我我だけの世界をと信じるならISの行為も正義に替わる可能性が無いとは言えぬ。しかし取りあえずは違って単なる暴力、テロ行為とみられる。

特攻隊の場合は愛国心につながる議論であり、少し違うがそれを行った時点ではやむにやまれぬ行為であり、日本国民は全体としてみれば支持していた。行う本人もそれを正義と信じていた。しかも攻撃の対象はやらなければいつかは自分たちがやられる番になる敵国軍隊であった。

これに対し、イスラム国自爆テロの場合は自分たちの行為が世界でどう受け止められているか十分わかっているはずだ。そして自分たちには影響を及ぼさない、無関係の一般市民を標的にしているのである。それ故に世間はそれを悪と断じ、留めなければいけない、と感じるのだ。

誤爆と一緒にされては困る。誤爆は正義と認められているものを行うために、行った行為の間で起こった誤りに過ぎないのではないか。死んだものの立場から言えばテロと同じだ、などというのなら交通事故で死んだって同じではないか。

人はしばしば自分の本音を隠しながら、あれもおなじではないかなどなんでも都合のいいところを取り出して反論し、自分の立場を有利にしようとする。戦争は嫌いだとして、戦前の日本を否定しようとする立場から考えれば「特攻隊もISのテロも同じだ。」という議論になる。また貧困なる者すべてに同情し、自己の主張の根本に据えたい人々は国連の誤爆も同じと言うのであろう。どこかの国の大統領に至ってはなかったことまであったことにし、謝罪や賠償を要求する一方で、自国の行った蛮行については口を拭う時代なのだから・・・・。

正義とは分かりにくい問題である。それ故に我我一般人は、いい加減な知識でこれもあれもおなじなどという議論を展開してはいけないのではないか。日本には日本の立場がある。世界に順じ平和を希求したいという欲望がある。ここでニュースキャスターごとき輩がIS世界を肯定するかのような発言をすることは、この日本では悪と断定されて当然と考える。それはあたかも太平洋戦争中にアメリカの行為を褒めるようなものではないだろうか。

 

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