1411「幾山河を吟じる」(1128日(土)晴れ)

 

新宿区の「吟剣詩舞の集い」があって参加。

私の霞穂流の秋の研修旅行が終って、私は今回の集いに向けて、50日くらい、毎日10回以上今日吟じる若山牧水の「幾山河」を練習した。最初に3回、ドレミ発生器に合わせて練習。次に先生の歌に合わせて3回、オーケストラの38番に合わせて吟じるのでそれに合わせて2回、最後に吟じたものをテープにとってそれを聴き問題点を自分で考えることを2回である。

一緒にやっているa氏が剣舞名人のb氏の板吟をやることになった。a氏はまだ初心、b氏から「君は130回吟じるとよい。」と言われたとか。私もそうしようかと考えたけれど30回だと途中の時間も入れると1時間半かかる。とても1日のうちにそれだけの時間を詩吟に取れぬから10回にした。老人でも結構忙しい。その間に先生にも特訓を受けたりした。今日も朝早く10回の練習を坊主のお勤めのように行う。しかし会場についても本番でうまく唄えるかどうか心配。特に第一声が思う声で出るかどうか。あれが狂うとみんなくるってしまう。会場はいつもの新宿文化センター、リハーサル室で何度か練習する。

詩吟は今では忘れられてゆく老人の趣味のひとつかもしれぬ。参加者がだんだん老齢化していると主催者の挨拶。そういえば元気いっぱいに剣舞を見せてくれる少年がいたが、今年は現れなかった。会場は出演者自身ばかりに見える。そんな中、私は聴衆、つまり詩吟を聞きに来る人を1人確保。中国語の先生である。詩吟の大会があり、私も吟じるが聴きに来る気はあるか、快諾してくれた。

彼女は私の助言に従い剣舞等がおこなわれる12時過ぎに合わせてやってきた。彼女の事は1405で書いた通り、40ウン才の未亡人。詩吟の多くは漢詩を日本語で独特の節回しで歌う。もちろんそんな物は中国にはない。剣舞や日本舞踊もないから、一体彼女がどういう反応を示すだろうと思っていた。しかしこうも考えた。異国でその独特の芸能に招待すると言われて私ならどうするだろう・・・・もちろん行く。

c氏等にも紹介すると、明るい彼女は直ぐに打ち解け気軽に話していた。昼の剣舞を見た後、私の詩吟まで聞いてくれて4時ころ帰って行った。「峨眉山月の歌」「涼州詞」「早に白帝城を発す」「元二の安西に使いするを送る」などは小学生か中学生の時に習ったことがある、としていた。彼女の詩吟に対する最終コメントは「いい人生経験になった。大きな声を出すことは絶対健康にいい。私もあと数年経ったらはじめようかしら。」であった。数年経ったら、というところはやはり老人の趣味とみたのだろう。

いよいよ私の出番。最初にマイクの操作を少し間違えたが無難な滑り出し。リズムにも乗り、本詠になった。高い声を出したつもりであったが、少少かすれてしまったのが残念。2分が終るとやっと解放された感じになった。私が席に戻ると中国語の先生は「随分高い声が続く。」と言ってくれた。私より5番後に洌風会の和服姿の女性が同じ「幾山河」を吟じたが、私とまるっきり違っていてびっくりした。これだけ録音する。

自分の詩吟が皆にどう評価されているかは非常に気になる。今回はおおむね良好であった。尺八の演奏を行い、レコードもだしているd氏は「よかった。これで基本は完成、然し細かいところはこれからだ。」・・・・今までひどかった、の裏返し?e氏が「よかった」というから「なかなかeさんのようなどっしりした声にはなりません。」というと「大変だね。」・・・・私に追い付くなどとんでもない、と言っているのかもしれぬ。ほかにf氏、g氏なども褒めてくれた。

しかし評価しない者もいる。たぶんh氏だ。h氏と私は一度研修旅行で対立した。「まず4行の絶句を完全にできるようにしなければいけない。」私は「詩吟を趣味でやっている。それを完成するまでほかの律詩、和歌、新体詩などやるのはいかんというのはおかしい。」

私が今回の「幾山河」それなりに夢中になった理由は先生が「和歌はまだやめた方がいいかもしれぬ。まだ10年早い、などという人がいる。」といい、私は「10年後に詩吟などやっているかわからぬ。やりたいことをやらせぬというのなら詩吟をやめようか。」くらい強く言った。結局「そこまでいうのならやったらいい。」と言うことになったが、そうなったからには失敗したくない・・・できる範囲ながらベストを尽くそうと考えた。

h氏と最後のカラオケの席でぶつかった。h氏は酔っているのだろう。私のカラオケを聞いて「リズムも音程もくるっている。君の教室の教育のあり方が問題だ。」など言いだした。癪に障った私は「水、ぶっかけるぞ。」その後は「黙れ、ひっこめ」等の応酬。大先輩のh氏に明らかに言い過ぎだ。修行が足りぬ、と後から反省する。

一方で帰り道、これで私から「幾山河」は過去のものになった。次のものに向って気持ちを切り替えよう。」そんな風に考えた。

(追記)128日。あの日も元気に剣舞を演じていたb氏の突然の訃報。77才とか。人生一寸先は何が起こるか分からぬ。御冥福を祈る。

 

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