1413「「良寛詩歌集」を読む」(125日(土)晴れ)

 

NHKのテレビテキストである。詩吟をやっているとよく良寛の詩にであう。その心みたいなものをもう一度考えてみたくて買い求めた。,3時間のうちに読み切った。

著者中野東禅は「人は寺や神社に参拝して「願いがかないますように」と手を合わせることが多いが、本来ならば「今まで無事息災で生きられたことを感謝します。」という気持ちで手を合わせるべきだという。私はこの考えに大いに共鳴した。神社や寺で手を合わせるとき今まで「何を祈るべきか」何度も考えたが、その結論が出なかったがこう考えればいいのだ。本題に戻る。

*老いが身のあはれを誰に語らまし杖を忘れて帰る夕ぐれ

・・・私も最近そんな年になってきたと心中苦笑い。

良寛は1758年、越後の国出雲崎の名主・橘屋山本家の七人兄弟の長男として生まれた。子供の時には動作がのろく引っ込み思案で「橘屋の昼行燈」などと呼ばれた。名主に向かず、18歳で仏門に入る。22歳の時に国仙和尚のもとで得度。僧名「大愚良寛」。国仙和尚は備中玉島にある円通寺の住職であったため、そこで厳しい修行生活を送る。33歳の時に「印可の偈」と杖を与えられるが翌年国仙人和尚が遷化(逝去)し、諸国行脚の旅に出る。民家の軒先や納屋で仮眠を取りながら托鉢だけに頼って各地を放浪する旅。故郷の越後に38歳の時に戻る。やがて出雲崎から20キロの所に或る真言宗の国上寺にある「五合庵」に住みつく。引退した住職に一日五合の飯が支給されるところからこの名がついたとか。59歳の時に五合庵をでて乙女神社草庵時代を経て69歳で木村家草庵、74歳で逝去。晩年の良寛は病に悩まされ続けたという。40歳年下の貞信尼という尼が木村庵の良寛を訪れている。二人は精神的な恋愛関係にあったらしい

次の二つの詩は詩吟でもよく吟じられている。。

*薪を負いて 青岑(せいしん)を下る 青岑平かならず。時に思う、長松の影、間(しずか)に聴く、山禽の声を

・・・・自然の声は、自分の命や心の根底が「捨て果てた」「無」の状態になっていてこそ聞けると著者は解釈している。

*雨晴れ雲晴れ、気もまた晴る、心清らかなれば遍界物みな清し捐(す)て世を棄てて、間者となり、初めて月と花とに余生を送る

著者は、この詩のポイントは徹底した「捨」に生きることが、良寛にとって心のゆとりとなっている。世を捨て自然の中に身を置き孤独と対峙したからこそ、それまで気が付かなかった自然の美しさ、素晴らしさに気が付いたのだとする。私自身はとてもここまでの悟りには至らぬ。生への執着も、欲もまだ強いが、これは一つにはこの時代に比べ好い時代になったこと、長生きになったこと、等が影響しているのであろうか。

*首(こうべ)を回らせば五十有余年、是非得失(詩吟では「人間(じんかん)の是非」)一夢のうち、山房の五月、黄梅の雨、半夜蕭々として、虚窓にそそぐ

*六十四年、夢裏に過ぐ、世上の栄枯は、雲の往還。巌根も穿たんと欲す、深夜の雨、燈火明滅す、孤窓の雨。

*首(こうべ)を回らせば七十有余年、人間の是非、看破に飽く。往来、跡は幽可なり、深夜の雪、一炷の線香、古窓の下(もと)

いづれも、第二句にそれぞれの年代の気持ちが集約されている。五十代の良寛は世俗とは一歩離れた距離から社会のありさまを批判的な目で見ていた。六十代では、世の中の事は「雲の往還」のようだったとする。実家橘屋の没落を含む栄枯盛衰を表現したか。七十代では「人間の是非、看破に飽く」としている。人間世界の損得、よしあしは見飽きてしまった。少し違うが私自身も50代、60代、そして今では少しづつ物の考え方が変わってきていることに気付く。今ではあまり「人間の是非」に抗議する気力が失せ、流れに任せて生きるより仕方あるまいと考えるようになってきている。百歳まで生きたいと願う金持ちに、良寛は「今が百歳だと思いなさい。」と言ったという。

良寛の書を私はうまいとは思わぬ。時に金釘流、時に細すぎてペンで書けるではないか、と感じる書体。しかし何とも言えぬ暖かさがある。下田近く蓮台寺温泉の蓮台寺荘に泊まったことがあるが、オカミの趣味らしくそこにもここにも良寛の書が掲げられていた。良寛の書はその書を通して良寛の生き様を感じ、共感すると気持ちを人々に与えるからであろうか。

なぜ良寛が受けるのかを考えてみると著者のいう良寛の肚のくくりにあると思うという見方に賛成。「決して高尚な悟りではなく、「世間並みの喜び」、「愚痴」という人間的な考えがあってこその「悟り」であることが分かると思います.(95p)

蓋し、本質を考え、自分に正直に表現することを標榜した結果と言えるのであろうか。

 

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