1427「「戦略がすべて」を読む」(1月24日(日)晴れ)

 

著者は東大卒、京大でも教えているビジネスコンサルタント、本書は雑誌に掲載されたものをまとめたもの。

最終章の「「戦略」をもてない日本人のために」に、「本書は時事評論の形を借りた「戦略的思考」を磨くためのケースブックである。」とある。

意思決定はそのレベルに応じて、上から「戦略」「作戦(オペレーション)」「戦術(タィテイクス)」の三段階に分かれる。戦略を考えるというのは、今までの競争を全く違う視点で評価し、各人の強み、弱みを分析して、他の人とは全く違う努力の仕方やチップの張り方をすることだ。

日本の低迷の時代にアメリカが発見した事実、それは日本人には「戦略が無い」ということだった。事実、(太平洋戦争では)初期に成功を収めても、戦略が無いために最終的に失敗した。

企業組織では、各階層で仕事が違うために、日本のようにキャリアパスの設計は適切でない。最初からリーダーを選抜し、かなり早い段階から難しい意思決定をさせて経験を積ませる方がよいのではないか。そして最後に「身の回りに起きている出来事や日々目にするニュースに対して、戦略的に「勝つ」方法を考える習慣を身につければいい、としている。

予備知識をもとに本書に紹介されている事例を紹介する。

1 コケるリスクを排除する。・・・・AKB48の方程式

「人」を売るビジネスには「三つの壁」がある。どの人材が売れるか分からない、タレントは生身の人間なので「稼働率の限界」(一日24時間以上は働けぬ!)がある、売れれば売れるほど契約の主導権や交渉力がタレントにうつる。しかしAKB48方式では複数のタレントを包括する「プラットフォーム」を作り、人材を纏め売りしている、見えない仕事をアソシエイト(人気、実力等がやや落ちる者)が補う事で、パートナーは見える仕事(一番大切な仕事)に専念できる、そのファームに人気があるので働く人間も強く出ずらい。このプラットフォームをベースにした議論が続くがその中で「11人脈とは外部の脳である」が興味深かった。

16 教養とはパスポートである

この書の中で一番おもしろいと思った章。現代は情報が多すぎて、その中からどのように取捨選択することが必要。そしてもう一つ重要なのは人間関係、それを良くするために「教養の一つの機能は・・・・「他の考え方が成り立ちうることを知ること。資本主義社会を生き抜くにはそうした中で普遍性を持つ様々な考えに思索を巡らせることだ、とする。そして実際のイノベーションは「異なる複数の考え方」を組み合わせることによって得られる」と結論付けている。

17 優秀な人材を大学で作る

著者は企業を「ジェネラリスト」を採用し、企業の中で下積みからゆっくりとスタートさせ成長させるA群と新卒の従業員であってもいきなり大きな権限を与えるB群に分けている。この場合「思考力」「多様な視点」「コミュニケーション能力」が求められ、優秀な人材はこちらに集中する。

18 エリート教育で差別化を図る

有るべき大学の姿についてという観点から、富山という人の論を紹介している。「大学をG型(グローバル型)とL型(ローカル型)に分け、優れたグローバル人材を生み出せる一部のトップ校以外は仕事に直接役立つスキルを教える職業訓練校にすべきだ、というもので著者もほぼ賛意を示している。

20 頭の良さをスクリーニングする。

大学入試の在り方を論じている。二次試験は@暗記科目のカテゴリー A努力の投入量と成果があまり比例しない地頭科目 B英語で要約問題、自由英作文、リスニングなど広い分野に分かれており、大量の作業を短時間でこなせるかを測定するスピード勝負 の三つに分かれるとする。大学入試で測定すべきは「大学教育を受けられる前提能力を持っているか。」であろう。そうなると一定点数を越えた者の中から調査票と面接で選ぶケンブリッジ大学の選考方法も一つの考えであろう。

22 勝ち組の街を足が運ぶ・・・地方創生の方程式

資本主義は資源配分の効率を高めることで「全体」のパイの拡大に最適化するがそのプロセスで「全員」がうまく行くわけではない。その対策としてセーフテイネットがあるわけだが、救われるべきは個人であって企業ではない。時代についてゆけなくなった企業は淘汰すべきだ。そしてこの延長として地方創生と言ってもすべての地方を救う必要はない。自治体同士ボ競争を促し、住民の移動によって強い自治体への統合を目指した方がいい。そのために移転費用を補助することは一つの解決案か。・・・・この延長に24身近な代理人を利用する がある。

・・・・最後に読後感。これですべてではない、個人が自己の能力を思い切り発展させることから未来は始まる、との視点も重要と思う。しかし物の見方としては大いに参考になるように思う。

 

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