1429「「大変化・・・経済学が教える2020年の日本と世界」を読む」(2月5日(金)晴れ)
竹中平蔵、PHP新書。著者については言わずもがな、切れ者の未来予測。
本書の趣旨は未来予想図を提示するのみでなく「これからどうするか」を読者と共に考える、とする。前書きは「地図よりもコンパスが重要な時代」・・・・地図はすぐに替わるがコンパスがあれば自分の進むべき道を考えられる!世の中は決して公平でも不平等でもない。自分の人生を平均に当てはめる必要はない。頭の中にコンパスを持とう。
第1章「「改革のモメンタム」が到来する」で著者は日本は何もしなければ衰退の一途をたどる。しかし東京五輪は日本が再生するビッグチャンスで、2020年は一つのターニングポイントになる。2012年以降ロンドンがオリンピックを契機にニューヨークに逆転したことを思え!東京五輪と並行してアジアの中間所得層は3.5倍に増えた。こういう状況では成功するには「バルコニーに駆け上がって全体を俯瞰せよ」という事が必要ではなかろうか。
第2章ではグローバリゼーションの中でイノベーションの重要性を説く。何もしなければ堕ちて行く時代になってしまったのである。そして個人としては「仲間」と「英語」で生き残れと、英語の重要性を説いている。
第3章「「正社員」より「自由な働き方」を目指す時代」はそうだと思った。
終身雇用・年功序列は戦後に始まったという説が有力。この制度は「可能性の高い人材を雇って、教育し、長く務めてもらうこの方式は、会社にとっても個人にとっても都合のいい制度であった。しかし流動性の低い「会社がつぶれるまで社員をほとんど解雇できない制度」は時代にそぐわない。働く場の中心がサービス産業に移りかってのような高度成長が期待できない時代になったのだ。そういう中で日本の労働市場は守られ過ぎた正社員とその範疇に入らない非正規社員の二重構造になっており、前者の既得権意識が後者との対立を生んでいる。
同一労働、同一賃金は志向すべきだが、「労働時間で給料を払う」点が問題。多くの国ではすでにホワイトカラーの残業代は払われていない。成果主義に基づき自由な雇用形態が推進されるべきだ。そのために個人はプロフェッショナリテイ、つまり専門性を磨かなければいけない。「残業するほど暇じゃない」という人生を送りたいものだ。
第4章「2020年、日本経済の再生なるか。」で、規制改革が最も遅れているのが農業であるという指摘は十分予測がつく。
株式会社が農地をもてないなどはっきりしている。しかしとてつもなく岩盤規制が強い分野を医療分野とする。日本ではほぼ40年近く新しい医学部が作られていない。需要はあるので新設を検討した大学も多いが、ことごとく医師の団体が反対する、としている。さらにこの章では羽田空港が「片田舎の空港」から「世界のハブ空港」になる。「観光立国・日本ののびしろ」は大きい、などとしている。
第6章の「世界経済、変化するものだけが生き残れる」も興味深い。
アメリカ経済は依然として強さを維持しているであろう。一つは次々現れるベンチャー企業に代表されるイノベーション力、もう一つはインターネットや旧共産圏などフロンテイアの存在とそれに対する挑戦力である。ただし格差問題はますます大きくなる。・・・・・ドルは強いという事か。
ヨーロッパはギリシャ問題などがあり、分裂しそうに見えるが、経済だけではなく、したたかに続いてゆくであろう。
中国は「中進国の罠」に陥り、停滞するであろう。低所得国は最初にGDP5000ないし10000ドルの国を目指すが一定の条件さえそろえばさほど難しくない。しかしそこから先、日本のように2−30000ドルを目指そうとすると低所得国の追い上げもあり、苦しくそのまま停滞することも考えられる。ラテンアメリカの国々がそうであった。中国のボトルネックは「法の支配」の欠如が見え隠れするからだ。日本にとっては2017年にトップが大きく入れ替わるが、その結果進歩しないことの方が日本にとって脅威だ。
有望株はインドだ。「人口が多い」という事が利点でやがて中国を追い抜くであろう。ASEANは国境をまたいで鉄道や高速道路をつなげる、制度を共通化するなど「コネクテイビテイ」が発達し、大きく成長するだろう。日本にとってはASEAN企業と手を組み、WINWINの関係のビジネスを作れる。
追記 2月8日の日経新聞。昨年度の日本の経常黒字が6.3倍の16兆円になったことを伝える。原油安による貿易赤字の小や旅行収支の53年ぶりの黒字転換などが影響した。東日本大震災以前は輸出による貿易黒字がけん引したが、震災後は海外への証券投資や配当金などが経常黒字を支えていると説く。そしてエコノミストは「16年も緩やかに経常黒字は拡大する。」とみている。時代は大きく変わった。このような状況の中で残り少なくなった我我老人は平和な余生を全うするためにどう生きるべきか?
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