1435「電力自由化の波」(2月24日(水)晴れ)
もともと、電力自由化に私は賛成ではない。電力料金を競合に任せてしまえば、供給の安定は誰が保証するのか。
例えば揚水電力、あれは非常に高くつく、しかし供給義務があるため、現在の大手は夏のピークにはこれを使う覚悟でいる。自由競争になれば、いくら役人がわめいても損をすることは避けるのではないか。配電網の保守はどうだ。投資しても損となれば手抜きをするのではないか。競争で価格が安くなると言うが、本当か。確かに当初は安くなるだろうけれども、寡占が進めば料金をあげるのではないか。もっと根本的に大手電力会社が営々として築いてきた電力供給体制に後からひょいを思いついたものが貸してもらって商売をするなどという事が許されて好い物か。
私はガス会社の出身である。この自由化はガス会社にも適用され、ガスも自由化になるとのことだ。特にガス管は電話回線や電線と違って、簡単に張り巡らせるように簡単にできるものではない。そういえば電力の場合、課題として電線の地下化がある。これから誰が推進し、責任を持つのであろうか。電力の輸送価格、託送料は結局役人に届けて決めるという事らしい。しかし現在の電力料金やガス料金さえ、情報を集めきれぬからうまく制御できない、などと言う役人にうまく規制できるのか。結局はこれらは役人のポスト確保に利用されている、と感じる。
日本経済新聞の3回にわたる「電力自由化」を興味深く読んだ。要約してみる。
電力供給は儲かるかもしれぬ、と多くの会社がこの事業に参入しようとしている。そのために競争が激しくなっている。こういう商品は消費者は一度A社と決めてしまえばなかなか動かぬ。それ故各社とも、顧客囲い込みに向けて値引きやサービスで競争する動き。そんな競争の中で顧客を獲得しても儲かるばかりとは限らぬ。防衛に回った東京電力小売り部隊には『電気使用量で上位3割の顧客を死守せよ』との号令がかかっているとか。導入する値引きプランは1戸建てに住む4人以上の家族とか。この層は確実に利益が見込め利幅も大きい。しかし日本の総世帯の半数は電気をあまり使わない単身や夫婦のみ、既存の電力会社はうまみは少ないが、供給義務があるから供給を絶やすわけにはゆかぬ、こういう客に割引率が低くするのは当然であろう。電力事業の新規参入者は東京、大阪など都市部中心。これもどの事業者もおいしいところだけを狙っていることは明白だ。
2回目でははやくも消耗戦が始まっているとしている。そんな中「電気は供給過剰になる。とても採算が合わない。」と大阪ガスは茨城県で検討していた石炭火力発電所の建設を断念した。他社の相次ぐ大型化計画を受け、見直しを余儀なくされたのだという。東京電力や関西電力も新しい値引き料金プランを提示している。しかたなく新規参入組もさらに電力料金を下げることを強いられている。そして各社ともようやく「そもそも電力は大きなもうけが出るビジネスでない。」と気づき始めた。もはやこちらでは儲からぬ、クレジット契約、鉄道利用などのために客を囲い込むことが目的など考え始めているとか。
電力の小売りの自由化をスタートさせるきっかけとなったのは、東日本大震災と東京電力の福島第一原子力発電所の事故だ。原発停止で全国の家庭用電気料金は震災前より25%もあがった。利用者の負担を減らすという名目で始まった。しかし本当にうまく行くのか、と3回目の記事では疑問を投げかけている。英国は1990年代に自由化の先陣を切ったが、料金が下がったのは当初だけ、やがて寡占化が進み、各社は燃料高騰を理由に値上げを繰り返し、15年の一般家庭電気料金は04年の2.4倍、企業向けの電気料金も欧州全体の平均より6割も高い。電力の安定供給が脅かされることもある。米国カリフォルニア州では90年代後半に電力自由化を始めた。ところが猛暑で需要が増えると価格つり上げを狙い電気を売り渋った。これが00年から01年にかけての大規模な停電が続く原因となった。その後、他の州での自由化熱が急速にしぼんだ。ドイツのミュンヘンの場合は風力など環境に優しい電力供給に舵を切った。この動きはドイツ全土にひろまった。然し発電量は不安定、安定確保への費用増で電気料金は上がり気味・・・。
シリーズは料金、安定供給、電源の構成の最適バランスはどこにあるのか、自由化の号砲とともに利用者と国と業者の大いなる実験が始まると、うまい言い方で結んでいる。
然しもはや国の電力料金自由化はスタートしてしまった。電力会社は顧客を奪われて小さくなってしまうのか。私には分からぬ。まさに壮大な社会実験、そして最後に一言加えれば電力会社が経営危機に陥ったり、電力料金が上がるなどうまく行かなくてもだれも責任は取らぬ。ツケは消費者に回される!
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