1437NHKの「アドラー心理学」を読む」(228日(日)晴れ)

 

ガールフレンドのAさんに「アドラーという人を知っている?」と聞かれて、知らなかった。19世紀オーストリア出身のフロイト、ユンクと比肩される心理学者、今その考え方が話題になっているらしい。書店でNHKテレビテキスト「人生の意味の心理学アドラー」という薄い本が売っていたので買ってきた。1956年生まれ、京大出身の岸見一郎という人が書いている。アドラーの著書そのものではない、アドラーの多くの講演や著作からその思想を抜粋し、現代人にむけてわかりやすく解説したものである。

*あらゆる対人関係は「縦」ではなく、「横」の関係にあり、人と人は平等である。・・・「一緒に暮らしたいと思うのであれば、互いを対等の人格として扱わなければならない。」(5p

*いかなる経験も、それ自体では成功の原因でも失敗の原因でもない。本当は過去の経験が私たちの何かを決定しているのではなく、私たちが過去の経験に「どのような意味」を与えるかによって自らの生を決定している。そして過去はかえられなくても未来は替えることができる。(20p

*多くの人は道の世界に足を踏み出すより、今のままのライフスタイルに固執した方がいい。人は「変われない」のではなく「変わりたくない」ゆえに変わらないでおこう、という選択をしてしまう。

*ライフスタイルに形成について問題であるのは「初めから自分に限界がある」と考えて課題に取り組まないこと、考えようで「器官劣等生」であっても克服できぬことはない。第二に「環境」、きょうだいや親子などの対人関係である。何番目の子であるか、家族の価値観、家族に雰囲気、さらに文化がライフスタイル決定の要因になる。(35-6p

*今より優れたいと思うのは人間の欲求である。ライフスタイルはいつでも変えられる。科学の進歩は、人が無知であること、将来のために備える必要があることを意識しているときだけに可能である。

*劣等感を「言い訳」につかうことを劣等コンプレックスという。優越コンプレックスはこれと対になるもので自分を実際より優れている者に見せようとする行為である。どちらもどんな働きかけにも変わることは容易ではない。

*これらのコンプレックスを克服するには、自分が優越性についてどう解釈しているかが大切だ。多くは優越性を他人との競争だと思ってしまう。競争する相手は他者ではなく自分である。そしてそれを通して他のすべての人を豊かにすることを志向するべきである。(523p

*劣等、優越コンプレックスの人の悩みは自分の事だけを考えて行くところに或る。その結果すべての悩みは行く手を遮る「敵」とみなしている対人関係の悩みになってしまう。彼等は共通して「自分が世界の中心にいる(いたい)」という誤りに陥る。甘やかされた子供が「広場恐怖症」にかかるのは、家から一歩外に出れば知らない人ばかり、自分は注目されなくなる、それが怖いから外に出ないのだ。子供は注目されたい。おねしょもそのひとつかもしれない。声をかけ、面倒を見てやるのではなく、ほっておけばやがて自分が不快になり、対処するようになる。この意識から逃げ出すために他者に関心を持つ事、他者は自分の期待を満たすために生きているのではないという事、そして課題の分離が必要である。子供が学校に行かない場合、それは子供の課題であって、親がイライラしたり不安になっても意味がない。(72pあたりまで)

*一方で人間は個人としては弱く限界があるので、一人で目標を達成することはできない。人はその弱さ、欠点。限界のためにいつも他者と結びついているのである。これをアドラーは共同体感覚という。ここに言う共同体とは所属する家族、学校、社会、国家、人類すべて、過去、現在、未来のすべての人類、生きとし生けるものを含む宇宙全体である。人生の意味は全体への貢献、他者への理解、関心である。

*自分の共同体への貢献度を理解するために、まず「自己受容」が重要。自分の短所、長所を受け入れ、「自分は特別に良くも悪くもない」と考えることが大切。次に他者貢献感。ここでいう貢献は既存社会への貢献や行動だけに限定する必要はない。赤ん坊は存在するだけで貢献しているのだ。そして他者を無条件で信じることだ。「信用」と「信頼」は区別する必要があるが、無条件に信頼することに対人関係の中に入ってゆける。(80-89p)

*教育の目的は共同体感覚の醸成にある。その基本は「勇気づけ」である。教育に世界では「叱ること」「ほめること」が重視されているが、アドラーは双方を認めていない。失敗すれば「ではどうすればいいか」、うまく行けばそれによって周囲が良くなったことを、例えば「ありがとう」の言葉で表現すればいい。(93p)

*人はすべて対等の横の関係にある。人は何にも支配されない。この考え方こそが理想論であるけれども本当の民主主義である、と著者は指摘している。(98p

 

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