1458「義理の従弟の死」(5月21日(土)晴れ)
この前の日曜日くらいであろうか、長女から電話があった。「おじさんがなくなった。」
おじさんa君は、私の亡妻の妹、bさんの夫。しばらくして電話をするとbさんが
「突然のことでどうしていいかわからない。」と途方に暮れた様子。
夫婦はそれぞれが独立した生活を送っていたし、お互いまだそのような事態は想定していなかった。そのため遺言もないし、預金通帳、印鑑等もどこにあるかわからぬとのこと。
a君はここ数日体調が悪く臥せっていた。朝起きたら調子が悪い様子ですぐに救急車を呼んだ。蘇生を試みたが全然だめで「あとから警察が来る」ということであった。
検死のため遺体は持ち去られ、家族は形だけであるが事情聴取をされたそうだ。
享年70歳。その後の知らせで死因は大動脈剥離ということであった。血管はバームクーヘンのように3重構造のチューブもなっている。そのチューブの間に血液が入り込み一気におかしくなってしまう。私の友人でも誰だったか、覚えていないが同じ病気で亡くなったものがいた。
そして今日はお通夜。4時半ころ、JR横浜線の十日市場からバスで行った。
親族だけで納棺の儀。高野山真言宗のやり方らしい。みなで冷たくなった遺体を支えて棺に入れる。脚絆、草鞋等死出の旅の用品を入れる。また彼は建設省のキャリアであったが、一度鹿児島県警の本部長で鹿児島に赴任したことがある。bさんに言わせると「あの時は非常に幸せそうであった。」ということで、当時の制服を棺に入れることにした。
祭壇には京都府知事や国土交通大臣の花束も並ぶが、もう現役ではないから出席者はそれほど多いわけではない。やがて7時ころ読経が始まり、式は滞りなく終わった。孫の2歳を超えたばかりというc君がちょっと見ぬ間にずいぶんたくましくなり、大きな声でわめき、お母さんを困らせていた。
なおらいでお寿司などつまみ、我が家方面に向かう親戚の人の車に乗せてもらって11時前にようやく我が家につく。a君と最後にあったのは、この1月11日に彼の家で皆で新年会をした時以来である。私のこのときの日記に「学者で宅地建物関係が専門らしく、いつも執筆などで忙しい様子で、こうした会にあまり積極的でなかった。・・・・それが今日は中心になって話し、にこやかに積極的。「本を読むのが商売であるから。」と言い、1日に8時間も読書に費やすのだそうだ。・・・・・4時ころ辞去。a君は、我我をなんとバス停まで送ってくれた。」など書いている。
ひょっとしたら彼は、今日を虫の知らせで予感していた?そんなことはないと思うけれど、物事は突然起こるし、人は年を取ると変わるとも感じる。
追記:翌日は告別式。天気は今日もよく日差しが暑い。昨日よりは参列者が多いようであった。bさん側の長兄一家や、私の長女一家、次女なども参列していた。型どおり導主が席に着き、読経を開始、次々に焼香、初七日も繰り上げで行ったから、こちらは二度になった。内閣関係者等多くの弔電も読み上げられた。
終わって、祭壇の花を死者の周りに埋め尽くす。目を閉じた死者の顔が妙に大きく、威厳があるように見えて、正視する気にならなかった。みなで棺のふたを閉め、遺影と位牌を手にしたbさん一家を先頭に焼却室に向かう。みなが合掌する中、鉄の扉が占められ、いよいよお別れ。
しばらく昼食をとりながら死者の思い出話。大阪から来たという弟さんが挨拶をした。彼はごく幼少のころ、死者とキャッチボールなどもしたが、途中から勉強に熱心であったという。年に1度くらい同窓会などで大阪にやってきて会食などしたとか。私は1月10日の日記をコピーしてゆき、bさんなどに配った。幸いに喜んでもらえたようだ。思い出話のタネになったかもしれぬ。
かれこれ1時間後、また焼却室の前、高野山真言宗はのどぼとけを高野山に収めるのだろうか。のどぼとけだけを係りの者が別の小箱に詰めていた。もう真っ白の骨だけになったa君。祭壇の遺影だけが面影を残す。戒名はまだついていない。白木の位牌。墓もまだ決まっておらず、しばらくは自宅で保管するらしい。
息子のd君が私に「いろいろありがとうございました。」と言っていた。「これからまだお父さんの生い立ち調べ、税理士との話し合い、遺産分割協議書作成などいろいろあるけれど、がんばってくださいね。」と柄にもなく先輩面で答えた。
bさんは、いい息子さんと娘さんを持った。これからの彼女を十分助けてゆくに違いない。今回息子さんが一番勉強するような気がする。親の死、それも一家の中心をなす男親との別れは、皆初めての経験であり、戸惑う。しかしそれを乗り越えて人間は一つ大きくなってゆくのかもしれない。私が父の死に遭遇してもう16年、今では懐かしいが、いろいろあったと思い出す。
家に4時ころ帰ると、何か私自身も一仕事終えた気がした。同時に思う。私もそろそろ私自身に何かがあったときの対策を考えて置かねばならぬか・・・・。
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