1491「私の亡くなったあと」(9月11日(日)曇り)
6月、亡妻の妹の亭主の突然の死は私にはショックであった。
少し体調が悪く伏せていたが、ある朝起きたら冷たくなっていた。彼は私より5歳以上若いはずだ。若いから自分の財産は自分で管理し、妻や子たちには知らせていなかった。葬儀も大変であるがそれ以上に、突然の出費をどうするかが大問題、頼みの銀行は本人の死がわかると、正規の遺産分割協議書ができるまで預金を凍結してしまう。しかもこういう問題は、一生のうち何度も起こる問題ではないから学習機会は少ない。
私にも明日は何が起こるかわからない。病気で突然倒れることも、交通事故に遭うこともないとは言えない。そこで現在とれる手段は何か、と考えた。私には息子一人、娘二人がおり、それぞれ独立した家庭を持ち、幸いなことに孫も5人いる。そんな状況でまず誰に音頭を取らせるか。戦後の民主主義により家族制度は崩壊している。遺産相続について男も女も上も下も平等である。しかし平等というのはまた難しい。どうやったらまとめられるのか。子が一人、二人であればまだ楽なのだろうが・・・・・。
結局私は一番年下の長男にまとめてもらうより仕方がない、と考えるようになった。まとめる者はある程度の公平感を持ち、法律面も考慮し、他からもある程度の納得感のある人物でなければならぬ。そうしたときにサラリーマンをやり、海外に赴任経験もあり、それなりの苦労も知っている長男しかいない、と考えたのだ。もちろんこれが長男にすべて有利になるように分配するという意味ではないけれど・・・・。
私の年齢になると死後のことを考えて対策をとるものが多い。ある者は本人が健康を害していることもあって、自宅を建て直し、息子家族と一緒に住むようにした。しかしそれに5000万を越える資金を投入した、と聞いた。同居は相続税対策になるし、これからは息子を頼りにしたいというのであろう。しかし家が完成して以来、本人がずいぶん元気がなくなったように見える。
私の場合は、そのようなことは起こっても10年以上先のことと考えている。まだしばらく元気でやってゆくつもりであるし、そのあとは一人で生活する、子たちのだれかと同居する、施設に入る、いろいろな可能性がある。その前に大病をして病院生活を送ることになるかもしれぬ。少しばかり蓄えはあるがすぐに費消されてしまうかもしれない。要するに不確定要素が多い。そんな中で、冒頭のようなケースも考えておかねばならぬと、長男と会うことにした。沼津のある長男家族は時々訪問するが、家族中心になり、本人同士が話し合う機会は案外にない。
小田原で落ち合い、昼食をとる。
家系図。私の父は広島の出、晩年に広島に行き、親戚の話を聞き、古文書や墓誌を調べ、家系図を作り上げた。遠い祖先は毛利の家来であったようだ。家系図が戦後の家族制度の下でどのような意味を持つことになるのかわからぬ。しかしそれを伝えておくことは私の義務の一つであるように感じた。
相続等の考え方を書面にまとめてゆき、説明した。しかし私はまだ元気で、子たちに養われているわけではない。したがって不確定な要素が多いのである。財えも自分自身が倒れ、老人ホームに入るために多額の資金を要し、財産を残すどころではなくなるかもしれない。分配も子たちの一人に世話になるかもしれぬ。」そうなれば、やっぱり世話を受けた者に多く渡したくなるのが人情だ。それゆえ今日書いたのは現状の財のありかと私の現在の考え方くらいだ。
実は将来を見通せないのは私だけではない。長男も同じだ。1男2女、彼らにどのような将来が待ち受け、それが彼らの家にどう影響するかわからぬ。
「これから半年に1回くらい二人でこのような機会を持ちたいがどうだ。」というと賛成していた。
情況の変化に応じて私の死後の話の方針も変えてゆきたい。
家族の様子はどうだ、と聞くと特に変わりなく、皆それぞれの道を日々歩んでいるようであった。意見は交わしたが、孫の人生をジイサンが決めるわけにもゆかぬ。
それでもこの話は彼だけにすると打ち明けると、信頼してもらえた、と感じてうれしかったか、図に乗って「な、いい息子を持ったろう。勉強はいまいちかもしれないけれど、いい家庭を持ち、まじめに仕事をしてきている・・・・。」うれしくなくはないが、恩に着せるほどのことはあるまい?
「GNP、元気、長生き、ぽっくりが私の理想だ。歳よりはこれでなければいけない。それが親孝行、自分への孝行、子たちへの孝行につながるのだ。おれもまだ頑張っているだろう。」
するとにわかに心配になったか「親父もあと15年か20年は頑張ってくれよ。頼む!」
何?私が90越えるまで面倒見ない気だな、とちょっと気にかかる。しかしその気で頑張らないと、と自分に言い聞かせる。自分を追い詰めてこそ頑張れるとも感じる。
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