1493「築地の豊洲への移転問題」(9月14日(水)曇り)
私は1967年から71年まで築地の移転先候補に挙げられている豊洲工場に勤務していた。
石炭からガスを作る。石炭を簡単な話、蒸し焼きにするのである。
石炭も石油も天然ガスも炭素に水素がくっついた混合物、しかし石炭はほとんどが炭素、天然ガスは炭素原子1個に水素原子4個のついたメタンと考えていい。外観は、炭素の数が多いと固体、中くらいだと液体、水素原子が多いと気体になる。
石炭からは全体の3分の1か4分の1、多くの炭化水素が気体となって出てくる。常温で液体や固体の炭化水素も蒸し焼きにされて多くは気体となって出てくる。これが石炭ガスと呼ばれる物のもと、このままでは常温にすると多くの炭化水素がもとの液体や固体に戻ってしまうから精製する。具体的には冷やしたり、水を掛けたり、集塵機で塵をとったり、そうしてきれいになったガスを他のガスとブレンドしてカロリー調整し、パイプラインを通して消費者に届ける。
一時期私はその精製係を担当していた。途中で出てくる不純物にはタールや今問題になっているベンゼン類が多く含まれていた。それらは更に精製されて、化学薬品として売られるなどしていた。夢の島みたいにごみとして捨てるようなことはしていない。残滓が地下に残っても不思議ではないが、全面危険の報道はまったくおかしいと思う。
この問題は食品の衛生という観点から問題はないと考える。洗浄や盛り土などの対策工事をし、しかも何十年の期間がたっている。ベンゼンは融点5.5度、沸点80.1度の水よりも蒸発しやすい芳香族物質。放射能ではあるまいし、そんなに残るわけがない。それにベンゼン蒸気がそんなに危険なら、4年も務めた私などとっくにおかしくなっていたはずだ。
すると案の定、次のような内容のスレッドがでた。「豊洲工場敷地では、2008年に環境基準の4万3000倍の有害物質ベンゼンが検出された。その後対策工事がなされたが、小池知事から指示され都が15−16日に検査したところ、豊洲は1立方メートル当たり最大0.9マイクログラム、これに対し築地は1.7マイクログラムで後者の方が高かった。」
また共産党都議団も独自調査で、地下に漏出している水にベンゼンは含まれず単なる地下水か雨水との結論を出したらしい。すると専門家の一人が盛り土の要請は都側からあり、非常に高いベンゼンを含む流れがあったとしてこのくらい盛り土を要請すれば大丈夫、と結論付けたとの報道。さらに専門家会議のころ、石原元都知事の地下空間は利用すべきだ、巨大なコンクリートの箱を埋めればいいとの思い付き提案があったとの報道。
これらを総合して、以下私の全くの推測、違っていたらごめんなさい。
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豊洲工場全体がベンゼンで汚染されていたわけではない。ただしタール池など一部に濃度の高いところがあったのかもしれない。2008年の検査はどこの何を図ったのかと疑問に思う。盛り土をしたいという意図があって、専門家を仕向けたのではないか
A
専門家はそれを踏まえて助言
B
石原都知事が無駄排除という考えから地下の利用を提言。仕方なく専門家会議の意向は無視した形で設計図を変更。
C
小池都知事は主婦的感覚からこれらを問題視し、政治的に利用しようと考えた?
ここで糾弾されるべきは、むしろ一つはなぜ地下に雨水がたまるような設計にしたのか、またそれを排水溝に導くなどの工事はしなかったのか。もう一つは、専門家会議の意見を軽視していること。「専門家さんの言うこと、意見は尊重するが担当者が不要と考えれば変更してもよいのではないか。」という空気が蔓延していないかという懸念。
後者の傾向は何も東京都に限定された問題ではないように感じる。特に官が主体となるシステムの問題点のように感じる。問題が指摘されると何かというと外部委員会を作る。その外部委員会に結論を出してもらって、自分の従来の意見を権威づけしようとする。しかしそれが終われば謝礼を払って、委員会は消滅、委員はお払い箱だ。委員の方も、その道の専門といってもどこまで実情を理解しているかは不透明。紙の上の判断で自分たちの仕事を終える。もちろん担当者は上述のような考えでせせら笑っているのかもしれない。
しかし最近外部委員会の価値が見直されている例がある。会社経営における社外取締役の役割。欧米の傾向に合わせて、彼らの比率を多くしたり、意見を尊重すべきだ、という声が強くなっている。現場の仕事に精通しているわけではないが、大所高所から見て公正な意見が言える。
お役人の社会にはまだまだこれがない。小池都知事の当選はこの「現場がみんな決める。」という古い考えに対する挑戦であると思う。築地市場を豊洲に移転することは当然で急いでやってもらいたいが、一歩踏みとどまってこれでいいのか、と言わせているところがすごい。
註 ご意見をお待ちしています。
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