1506「紅葉の季節」(11月17日(木)晴れ)
紅葉前線が日本を北から南に駆け抜けている。すでに関西、関東はもう落ち葉のシーズンに入ったらしい。今年はいろいろあって山などに紅葉を見に行く機会がなかった。しかし一本、二本の紅葉でも目を閉じてそれが全山覆っている光景を思い浮かべれば紅葉気分に浸れるではないか。また落葉も風情がある。
北隣の家はどこかの業界紙の社長の家、わが敷地との境界近くに大きな桜の木がある。私の敷地側にはと私の家とアパート、いづれも2階建て。その二つははるかに超えて少しこちらに枝を張り出している。向こうは気を使って植木屋を入れるのだが、あまり高いところは切れぬようだ。
秋である。亡くなった父親はいつも文句を言っていた。「桜の葉が散ってくる。庭は汚れるし、樋は詰まってどうにも仕方がない。」父親はさらに春に桜の花が散ってくることにも文句をつけていた。怖い父親であったから私の代になると、私と同じ世代のお母さんはしきりに気を使っている様子。「ずいぶんご迷惑をかけているのでしょう。」
桜は昔はわがやの庭にもあったが、いつの間にか切られてしまった。それもあって私は「春の満開のあの美しい桜が私は好きだ、楽しんでいる、秋の葉が散ることは我慢せねばならぬではないか。」
と考えることにした。樋には大工に頼んでメッシュの金網を張ってもらった。
今年も隣の桜から枯葉が降ってくる季節。玄関周りは落ち葉だらけ・・・赤や黄色に色づいた落ち葉、どこにあったって見ようによってはずいぶん美しい。
「少しは落ち葉をはきなさい。」とガールフレンドのAさんは言う。子供のころは落ち葉をはいても楽しみがあった。落ち葉を積み上げその中に芋を入れ焼いた。今頃やったら「火事の危険。」など言いたてる者がいて大変だ。しかし結果楽しみがないからやる気がしない。
Aさんに「君がやってくれても僕は文句は言わないよ。」しかし敵も同じことを考えているのか、お答えは「自分のことは自分でやりなさい。」わかった、わかった・・・しかしまだ桜にはたくさんの葉がついている。あれがほとんど落ちてから掃除すればいいではないか。それに中には我が家の庭を経由して他の家に飛んで行ってしまう葉もある。女性はどうも合理的に考えぬ。この前も「冬は寒いから風呂には4,5日に1回でいい。」と言ったら長女に「不潔!」と言われた!
Aさんはどうもロマンを解さない。この前「一日運動しないで家にいると体に良くないと思う。でも街に出るといろいろ出費する。」というから「朝、ラジオ体操で公園に行くとボランテイアで枯葉を掃除している人がいる。きれいにビニール袋に詰めている。君もあれをやったら・・・・。」
木が沢山あるから紅葉はそれなりに見事だ。桜も美しいがイチョウの黄色い葉ややメタセコイアも美しい。その枯葉を朝の光とともに掃除すれば健康にいいに違いない。金もかからぬ。しかし彼女はきびしく「自分でやってから他人に言うもんです!」
どこかで聞いた話。記憶をたどる。昔千利休のところにお客が来ることになった。息子に命じて
「路地をきれいにしておくように。」
言われた息子は散り一つないまでに掃き清めた。しかしそれを見た利休は「バカなことをする。」とつぶやき、木をゆすって枯葉を落とした。「風流とはこういうものだ。」
玄関周辺の隣の枯葉も見ようによっては大変きれいだ、と思う。桜の葉は赤くなるものもあれば黄色くなるものもある。それにときどき我が家の庭のいろはモミジの真っ赤な葉も混じっている。敷石と朝日に映った落ち葉、その後にあるブロック塀を携帯カメラに収めた。
Aさんの誕生日である。吉祥寺のプリミバチというイタリアンレストランでランチとしゃれこんだ。昔はデイナーでそのあとなんとか、と胸弾ませたものだが、今はその元気がない。南むきの店内は女性客ばかりで一杯。豊かな日本では当たり前の光景。近くのラーメン屋など安い店には男性客ばかり・・・・。私たちは酒も少し入って良い気持ち。
食後、井之頭公園を散策。Aさんはつぶやく。「紅葉がきれいだわ。」小春日和の今日、散策にはちょうどいい。おおかたシベリアあたりからやってきたものか、鴨の種類が多くなった。
枯葉あるいは紅葉の歌を考えた。イブモンタンの「枯葉」・・・・しかし何となく最近練習しているがうまく歌えない五輪まゆみの「恋人よ」を思い浮かべた。
「枯葉散る夕暮れは冬の寒さを物がたり、雨に壊れたベンチには愛をささやく歌もない。」・・・・いまどき、ベンチは老人に占領されている。
しかし枯葉がさらさらと散る木陰の道、頃はよしと私は彼女にあの玄関先の写真を見せた。しかし彼女の返事はつれない。「汚いわよ。枯葉はこういうところにあってきれいなのよ。それはごみというものよ!」
・・・・みなさんはどう思いますか。風情ある落ち葉とごみのさかいや如何?
註 ご意見をお待ちしています。
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