「とびうおはどうやって食うんだね。」
「生きがよければ刺身、くさやもいい。」
魚屋「魚耕」のお兄さんは妙なことを言う。素人がくさやなど作るわけはない。
「まあ、いいや。一匹おくれ。」
「あいよ。この時期のは大きいからね。夏場になると小さくなる。」
数ヶ月前に吉祥寺で5000円もする出刃包丁を買った。これまで私は魚をさばいた事は少ない。いつも魚屋におろしてもらって買ってくる。しばらくほっておいたが、折角あるからといわしか何かをさばいた。案外、自分でもできる、と自信を持ち、次には鯵をさばいた。鯖をさばいた。鯛もさばいた。そのうちに友人の一人から「魚耕は丸物を買うと得である。」さばき方も色々アドバイスを得た。
鯖をさばいたとき、湯できれいにした骨を大根、こぶと共に煮ると船場汁になることを知った。なかなかうまかった。鯛でこれを行うと潮汁になる。こういう手合いは魚をさばいてもらったら食えないではないか。
その後、魚耕の前に行くとなんとなくさばきたくなり、切り身を敬遠するようになった。今日でている丸物では、鯖はあきた、鯒(こち)は高いからと、とびうおに目をつけたわけだ。ただ若干危惧はしている。今までの経験では味がどうもぱさぱさしている。
我が家に戻って重さを量ると500グラム以上あった。出刃包丁は、前回使用時お湯で洗い、サラダ油をたらしてていねいに保管してある。うろこをそいだ後、まず胸びれをとる。飛ぶために進化しているせいか、傘の骨みたいでずいぶん丈夫だ。次に腹びれをとったが、これも強いのでびっくりした。腹は臓物が意外に少なく簡単にさけた。小ぶりな頭を落とし、喉のところの強い骨をこさげ取り、3枚におろす。半分を明日に残し、半分を小さく切って塩胡椒し、小麦粉をつけてオリーブオイルで焼いた。骨は小さく切って船場汁、潮汁みたいにした。
料理をしているうちに色々疑問がわいてきた。魚屋が言っていた夏場に小さくなる、とはどういうことだ?どうしてああ、ばさばさしているのだろう。もしとびうおに意志があればとびうおは空高く飛ぶ事が出来るのか。とびうおは飛行中に羽を動かすのか?
インターネットで調べる。サイトによって説明が少し違うが
「日本近海には20種類以上が生息していて各地で様々な名前で呼ばれ・・・。」「日本海に約20種いる」・・・種類の名前は混乱しているが、関東の市場では、春にとれる春トビと夏にとれる夏トビの2つに大雑把に分けられる。春トビはハマトビウオという種類で大型で丸っこくクサヤの原料にもなる。ハマトビウオは晩秋に九州でも漁獲される。夏トビでもっとも多いのはツクシトビウオという種類で小型。幼魚がアゴダシの材料になるほか、鳥取のアゴチクワの原料になる。このほかにトビウオ、ホソトビウオ、アヤトビウオ、本トビウオなどが夏トビとして扱われる。
「海面から10mの高さ、ひと飛びで200m飛ぶといいます。」「海面をグライダーのように飛ぶ珍しい魚で,2-4mもの高さを時速60kmのスピードで200m以上も飛ぶ。」「海上を大きな胸びれと腹びれを広げて飛行することで良く知られています」・・・とびうおは、本来まぐろなどの大型魚に追いかけられた時に逃げる目的で飛ぶ。時速60キロ、200メートルといえば12秒、そのくらいがえら呼吸だから限界なのかもしれないなどと勝手に憶測。
どうやって飛びたつのか、弟や知人に聞いてまわった。その結果どうやら体全体をくねらせてスピードを出し、胸びれと腹びれを水面に浮かして、揚力をえるのではないだろうか。後はグライダーで、まさか飛行中に羽を上下させさらに上昇することはないだろう。(いるかは飛び上がるとき、その分だけ水中にもぐる。岩魚は4メートルまでの岩場なら飛び上がれる、という話も参考になった)結局、とびうおの飛ぶ高さはせいぜい2-4メートルだろうということになった。
確かめようと実際飛行している様子、飛び立つ様子、着地の様子などの写真をインターネットで懸命に探したが見つからなかった。
「少しでも身体を軽くするために食べたものはすぐに消化してしまいます。腸もごく短く、脂肪分も少ないシェープアップされた身体になっています。」「運動量が多いため脂質は少なく味は淡白ですが、高たんぱく。カリウムの含有量も多い。ヘルシーフーズとしても人気が高い魚。」・・・・内臓がすくなく、味がばさばさはこのせいだな、と得心。ヘルシーフーズとはいいところに目をつける。
ほかにも調理方法では油を加える揚げ物、炒め物などにむいている、焼きアゴ、とびこなどとびうおの加工品は意外に多い、島根県の県の魚、「とびうお座」という星座がある、などいろいろ記事があったが省略する。
最後に君のトビウオ料理はうまかったかって?オリーブ油揚げは悪くない。しかしおすましはどうも鯖や鯛に比べて味がうすく、イマイチだった。
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