1542「老いを知る」(4月3日(月)晴れ)
ガールフレンドのAさんは私より1歳若い。熱心なクリスチャンである。その彼女から「教会の会報に「老いを知る」というタイトルでエッセイを書いてほしいと頼まれた。どう書くべきか。」と相談された。そこでもし自分であればどう書くだろうと考えてみた。字数は700字ということで書いたが、以下はそれをもとに加筆訂正したもの。
「「知る」は無限の底なし沼」
「知る」ということは本を通してのように知識・情報として知、直接出会ったり、体験したりして知るなどいろいろな形がある。いつかイギリスでの経験、知人の男が「おれは料理の仕方を知っている。」と自慢するから、確かめると彼が知っているのは電子レンジでチンすることだけであった。キリスト教だって同じ、私がキリスト教を知っている、と言っても嘘ではないが、彼女から見れば電子レンジでチンレベルかもしれぬ。
また「知る」ことには無限の深さがあるように思う。考えようによっては、人類は有史以来ずっと知ろう、知ろうと努めてきたのではないか。知るために多くの議論がなされ、政策が実行され、戦争が起きた。しかしまだ知ること全体から見ればほんの一握りかもしれぬ。戦争の悲惨さを唱えながら、まだやまぬ。貧困撲滅の重大さを知りながらまだ解決していていない。
「老い」とか「死」というものはだれにも来るものだ。考えてみればこの分野でも医学は到底「知る」レベルに達しているとは言えない。寿命は、少々伸びたけれども、だれしも、いづれ死を迎え入れねばならぬことに変わりはない。しかしその本当の意味を、自分がそれを現実に迎え入れるまでは、わからないのではないか、と感じる。私は70歳までは私はまだ人生これからだ、と未来を考えた。しかしそれを越えてくるとあとこれだけと「老い」や「死」を考えるようになったように思う。しかしそれゆえに物事がはっきり見えるようになって感じる。
心の奥底で考えていることと実際に主張し、行動することは違う、ということも重大なポイント。ある男がマンションが建設されることを知り、反対運動を起こした。確かに地域の美観を害すると多くが賛成し、マンションはずいぶん高さを低くさせられた。しかし後で住民はマンション建設によって日照が減るのはその家だけであることに気が付いた・・・・。よくある話。投資話もそうだ。評論家、投資会社は何を考えて投資を勧めるのか考えることが必要。「この私が儲かることを考えて・・・・。」と期待してはいけない。
政治家も同じだ。ひどいものになるとこの世界を自分の思うように動かしたいととんでもないデマを流したりする。それでいて口では平等と民主主義、個人個人の権利を主張する。・・・・経験もないのに老人向けの政策を立案実行する?それゆえに限られた情報の中では無理だろうが、それでも背景に何があるか知ろうと努めねばならぬ。
若いころは人に言われたり、何かの本を読んだりするとすぐに共鳴し、その気になったりしたものだ。しかし少しはそれが見える。
私は幸いまだ元気である。友人から病気の話をされると「目は緑内障で点眼を続けている。歯も悪くなった。逆流性食道炎も恐れている。前立腺がんが心配で定期的に医者の診断を受けている。脚力も弱って走れない。水虫だ。いぼ痔だ。」など並べ立て、弱そうに見せることにしている。これもまた言っていることと思っていることが違う典型か。本当はまだ何番目かの脚を除けば人間としての本質的な機能を維持している。
老年になってくると個人差が大きい。鬼籍に入るもの、何かの病で寝たきりになる者も目立つようになってきた。これは今の感情であるけれども、元気で生きていなければ意味がない、というように思う。チューブ人間になってはおしまいだ。それゆえ健康寿命という考えが大切だ。体力的健康と知的健康。前者のために私は1日10000歩以上歩く、毎朝ラジオ体操に行くなどしている。しかしこれでは実は筋肉の維持には十分でないことを知っている。テニスや山登りを続けている友人を見ると羨ましい。
後者についてぼけ症状は知的健康の衰えの第一歩か。その始まりあたりを狙って「振り込め詐欺」が横行するというのか。ときどき知人の父親で心理学者であった人が晩年に書いた「退行を楽しむ」というエッセイを思い出す。何か老いて自分が朽ちてゆくことを知りながら、それゆえにこそ、其の一瞬一瞬に楽しみつつ世界を広げようと努力する、そんな決意のようなものを感じた。
知的健康を保つために私の場合は書道、中国語などいくつかの趣味を実践している。囲碁、将棋などもよいらしいが負けてばかりで私には精神的に良くない。日記は私の知的レベルを何とか維持するために続けている物。これからも続けたい、「もっと知ろう」と努力しながら、まだ元気であるから老いを迎え撃っていきたいと思っている。
註 ご意見をお待ちしています。
e-mail address agatha@ivory.plala.or.jp
ホームページ http://www4.plala.or.jp/agatha/