1545「酔眼朦朧料理談義」(4月15日(土)晴れ)
特に年を取って伴侶を失ったような男性に、趣味として料理を作ることを勧める。料理は非常に奥の深い化学である。この前「知るは無限」と書いたが、料理の化学だけでもそう簡単に知り尽くせぬ。なぜだろう、どうすればいいだろう、の連続、そして努力の結果は自分の舌で判定できる。それゆえ料理をすることは老いた脳を活性化させ、知的好奇心を満足させる。また最近インターネットのおかげで情報が幅広く得られることも大きい。
その際、オーブンも圧力鍋もフードプロセッサもほしいけれど、基本的なものを除けば私は出刃包丁の購入を勧める。あれがあれば魚料理の幅がぐんと広がる!
さて私の料理談義、昨日はリンゴの購入で失敗したのかもしれない。
大きなサンフジあたりらしい立派なリンゴが6つで298円、つい手が出てしまった。
我が家に戻って早速一つを切ってみると中央から四方に茶色い部分。しかし腐っているようではないのでウイキペデイア等で調べる。
蜜褐変と言われる現象らしい。今頃のリンゴは大体昨年の夏から秋に収穫されたもの。保管しているうちに蜜がしみだし、茶色く変色してしまうときがあるそうだ。センサーでチェックすれば別だが、そのままでは外からわからぬとか。すこし苦みがあるが食べて問題はないとのこと。
今日は昼間、会社の同じ地区のOB会が会社のクラブであった。
おいしそうなローストビーフが出ていた。最近我が家でもローストビーフやローストポークを作る。ただし我が家にはガスオーブンはない。肉の塊に塩や香料をすり込み、寝かせたのち、フライパンで焦げ目をつける。それを電子レンジでチンする。大体肉100あたり、電子レンジ500wで1分程度。電子レンジは肉の内部から加熱するから具合がいい。しかし私が作るローストビーフはいつも加熱しすぎて肉が少々固い。この料理のように、肉の内部をジューシイにするには加熱時間、加熱温度をもう少し研究する必要があると気づいた。ちなみローストポークは我が家流でよいのだろうけれど・・・・。
少し飲んで荻窪に戻ってきた。今夜はガールフレンドのAさんと夕食、おかずを買わねばならぬとマーケットに行ったところ、魚屋の魚耕で「さあ、恒例のマグロの解体ショーだよ。」と威勢のいい声。つられて解体ショーを見ることになった。最初にまな板の上のマグロの体重。四国沖で取れたものを言うが66.1キロであった。66キロで当てたものが「キンキ」をもらっていた。
「頭は一つしか出ない、3500円だ。かまは二つ出る、こちらは2500円。中落ちがこの胴のあたり。10切れしか取れない!1000円、くじ引きだ。」中落ちは骨の周りに残った身の部分、おいしいが切り方によってとれる量が変わるのだとか。私は中落ちは手ごろだが競争は激しいだろう、と直感した。そんな前口上があった後、いよいよ解体開始。
「さあ、マグロの頭だよ、3500円!」大分人が集まったが声がかからない。するとセリ人のそばにいた小学生くらいの男の子が「3000円!」セリ人、苦笑して「坊や。買うの、よし、決めた。」それにしてもこの年齢から値切るとはたいしたものだ!しかし坊やは決まるとお父さんを探しに行った。しばらくすると戻ってきて「注文、取り消し!」
「さあ、次はかまだ。」しゃけだって、ブリだってかまが脂がいちばんのっていておいしいことはわかっている。「さあ2500円!」その声につられて思わず、「買った!」・・・・しかし今晩Aさんと二人で食うにはいくら何でもおおきい。すると後ろから「阿笠君!」の小さな声がかかった。なんとbさんであった。
彼女は中学校の時の同級生で、毎朝ラジオ体操の行われる妙正寺公園のそばに住んでいる。同じ大学出身の先輩らしい男性と結婚された。中学校時代はテニスが得意で元気いっぱいであったが、中年になってから病気になったらしく、あまり外に出てこなくなっていた。
「ずいぶん大きいのを買ったわねえ。」
「実は少し大きすぎる。何しろ今晩彼女と食うだけだから。半分持ってゆかないか。」
商談成立。魚屋が半分づつ切り分けてくれることになり1250円で引き取ることにした。何だか彼女が元気でいる様子を見られてうれしかった。
自宅の戻り、件のマグロ。トロはほんの少ししか入っていなかった。これじゃ面白くないと、出刃包丁を振り回し、骨の周りについている肉を少しでもと切り取る。手も包丁もマグロの脂だらけになった。しかし、2500円は良い値だったなあ、さすがに商売人だ!それでもトロ部分はおいしかった。残りはいつものように煮魚にした。Aさんの持参した肉料理も加わり、なかなか豪華な夕食となった。
食後にあのリンゴをおそるおそる切ってみた。今回はきれいであった。しかし昨日のリンゴほど甘くはないように感じた。蜜が少ないから褐変も起こらなかったか。
註 ご意見をお待ちしています。
e-mail address agatha@ivory.plala.or.jp
ホームページ http://www4.plala.or.jp/agatha/