1546「個人の思い、組織の思い」(413()晴れ)

 

最近全体の思いと個人の思いの齟齬というものを改めて考えている。

以下は昔実際にあった話の情報の断片を思い起こし私が勝手に創作したもの。

「貿易商社Xの男が、北アメリカに出張中。面白い話を聞きつけた。「北極海に近い海域に石油など大量の地下資源が眠っており、ひそかにそれを採掘する計画が進んでいる。」

男は翌日からその情報の調査を行い、あるベンチャー企業Yがそれに取り組んでいることを知る。早速ヒアリングを行い、採掘権をX社で得られないか交渉する。合わせて男は会社の上司と連携しながらこの話を進める。上司はその上司とも打ち合わせ、その事業に投資してよいかどうかお伺いを立てる。現地調査が行われる。もちろんY社は歓待し、現地調査隊は「わが社は今経営が苦しい、起死回生、こういうものに投資すべきだ。」というような具申をする。

しかし最初にこの案件を聞きつけた男は一抹の不安を感じ始めている。「ベンチャー企業Yの連中の言っていることは、間違いないのだろうか。」しかし男は考える。「このプロジェクトを立ち上げれば俺の評価はぐんと上がるだろう。しかし今この投資には参加しない方がいい。」などと言えば評価は下がるどころか、役に立たぬ男と決めつけられるに違いない。ここは進むしかない。この話たとえ上長が告白されたとしても上長も同じ思いに駆られるに違いない。勿論その上長も、現地調査に参加したものも同じ思いに駆られるだろう。

話は広がり、会社から巨額の投資が決定され、実行に移される。しかし1年か2年たってどうやら地下資源などない、あっても巨額の資金が必要で採算が取れそうもない、と判明する。もちろん言い出した男も其の上司も左遷されるが、会社としての責任を逃れるわけにはゆかぬ。あまりに巨額であると倒産の危機さえささやかれるが、それでも責任は逃れられぬ・・・・・。」

・・・・昔読んだ新田次郎の「八甲田山死の彷徨」を思い出す。大将の一言で雪の激しい山に予定通りの行軍を決定し、悲惨な結果を迎える。

個人というものは、たいていは自分中心にのみものを考えると思っていい。みんなのために、会社のために、お国のためにというのは物事を進めるために持ち出す方便にすぎぬ。

役人は外部組織を作りたがる。なぜそうするのか。そうすることによって役人の世界で自分の評判が上がり、立場が強くなるからである。しかしそれでは世間に通らぬから社会的に必要、人もわが小の人がいなければ立ち行かぬから「仕方なく」OBを派遣してやる、など言いだす。

慈善事業家はまだまだ問題は解決していないと運動を続ける。それは彼がそこに己の生きがいがこれしかないこと、仲間内でそれをやることによって評価が上がること、時には生活の糧をそれによって一番効率よく得られることを認識しているからである。

証券会社や銀行もそうだ。会社はお客様のためになど言いながら、自分の売りたい証券や債券の販売に余念がない。それをうけた係員は同じように投資家に持ち掛ける。そして目標は社内での自分の評価の向上のみ。やがて自分はこの職場を離れてゆく。・・・・あとで投資家が首をくくっても知ったことではない。

東芝やシャープの問題も原因を突き詰めれば結局「会社はガバナンスが不足していたから個人の思いの集積で進むしかなかった。しかしそれが間違った方向であり、結果として会社の危機にまで行ってしまった。」ということではなかろうか。そしてこうなった時点でも、個人は自分中心の考えをやめず、ならば「自分はどのようにこの泥船の中で高い給料を得、功績を高めようか。」あるいは「出身会社の名声を背景に自分を他社に売り込もうか。」など考えているのではないか。

築地市場の豊洲移転問題は異なる個人の欲望が錯綜した結果と言えようか。最初何か問題点を出すために築地の移転問題を取り上げた。そして東京都のいい加減さを取りあげ、小池氏は大いに点数をあげた。しかし彼女はその先どうなるか考えていたわけではないようだ。

中断してその責任を追及されると、石原さんを中心とする為政者たちの責任に転嫁しようと試みた。しかし百条委員会は成功しなかった。そして「いつになったら決定するのだ。」の声が上がり始めた。そこで「専門家に任せているから。」など言いだした。旗色が悪いから間もなくやってくる都議選の対立軸にしたくない、との思いだ。移転してかまわない、との結論はすでに専門家会議で豊洲に移転せよと、出ているのだ。それを今度は経営の立場から吟味する特命PTを立ち上げる。そして彼らに任せているからと逃げを打つ。特命委員は委員で任命された権限を生かして己の権限の浸透を図ろうとする。・・・・船頭多くして、船山に登る!宙ぶらりんに置かれる業者こそいい迷惑だ。

最後にずいぶん悪たれを書いたけれども、この観点からものを見直すと真相がよく見えてくるような気がする。安倍氏も、トランプ氏も、プーチン氏も、習近平氏も・・・。もっともそう書いている著者自身も、己の利益を考えて自分中心に動いている。

 

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