1353「私をめぐる動物たち」(413()曇り)

 

この項を書くに当たり、私は通信を読み返した。すると「30クマの死」というエッセイが出てきた。2003年から4年にかけての話。読み返してみると、なんとも懐かしい。クマが死んだときは迷ったが、結局あれ以来動物は飼わなくなった。あのエッセイでもある通り、長い旅行に行けなくなるし、それに本来私は面倒くさがり屋だ。

この前沼津の息子の家にいった時、今年から中学校に入る次女、私から見れば孫の千夢が「犬が飼いたい。」と言った。嫁は賛成の様子であったが、息子が反対の様子であった。飼ってやればいいじゃないか、と思いながら、私は返事を濁した。これは一家の問題、親父の顔をつぶしてはいけない。

話のタネになるかもしれぬと、私の周囲の動物たちのことを書いてみたいと思う。

杉並の土地に移ってきたのは昭和22年である。私はまだ小学校にすら上がっていなかった。そのころは食うや食わずであった。兎と鶏を飼った。父親は非常に器用でどちらの小屋も手作りした。兎は太らせて肉をくらうためであった。鶏は卵を産ませ、産まなくなったら締める算段であった。もう想い出とてないけれど、一度近所の人が来て兎を見せたことがある。白い兎で長い耳をつかんで持ち上げると、赤い大きな目をくりくりさせ、何か言いたげにこちらを見つめていたことを思い出す。鶏はそのころの絵日記に小屋から逃げだし、弟と一緒に追いかけまわした、とある。しかしか兎はある時犬に襲われてしまった。鶏はそこに物置を建てることになり、処分してしまった。ようするにペットではなく生きるための一環として飼ったものであった。

生活がすこし豊かになると猫を飼い始めた。鼠をとってもらうことが目的であった。いつか飼ったクロという猫は優秀だった。朝起きると台所に5、6匹の鼠の死骸のそばで寝ていた。沢山取ったものの食いきれなくなってそのままにしたらしい。ただし猫はいくらしつけても時々部屋の中で糞をして困った。猫の糞は格別に臭い。ある時父親の座椅子の上にした。書きものでもする予定であったかインクツボを持って座ろうとした父親はその糞を踏んづけてしまった。驚いた父親は、腕を激しく振った。インクツボからインクが飛出し、部屋の壁中インクだらけになった。クロを見つけ首の後ろをつまんで持ち上げ、思い切り外に放り出した。然し猫は自然にバランスを取るのが上手く、器用に着地し、どこ吹く風で消えてしまった。後で母親がぶつぶつ言いながら、インクで汚れた壁を掃除していた。クロは、やがて年を取り大分弱った様子であったが、いつの間にか消えてしまった。消えてしばらくしてから物置でクロの死体を見つけた。おばの亭主は太った米国人であった。彼がその尻尾をつまみぶら下げている様子が記憶に残っている。

猫と入れ替わるようにして犬を飼うようになった。最初はコロという犬で少し大きめ、がっしりしたスピッツみたいな様子であった。あまり利口ではなかった。良く散歩に生かされた。そのころは道路は舗装されておらず、犬の糞を買主が回収するなんてお触れもなかった。最近聞いた所によると犬の散歩をしていると犬同士が気にしあって、やがて飼い主も親しくなるケースがあるとか。然しそんな話もなかった。

結婚した時に父親は敷地内に私たちの新居を建ててくれた。さすがにこれは大工に発注したのであるが・・・・。そしてやはり次女の要請により、わが家でも犬を飼うことになった。それがエッセイにあるクマである。柴犬の系統らしくエッセイにもあり通り、こちらは元気なことは格好良かった。母屋にいたころは私も随分犬の散歩に行かされたが、クマの時は大体子達が対応してくれた。

クマについてはあまり想い出が無い。次女が結婚して出て行って数年、私が面倒を見たのだが、その時はどうしたのであろうか・・・・。

その他の動物も時々飼った。そして一時期生き、死んでいった。一つ面白い事、一つのケージに小鳥2羽は難しいようだ。縄張り意識が強く、大体一方が他方を殺してしまう・・・・。

現在わが家の近所では、もちろん鶏やウサギを飼っている者はいない。犬や猫はいるが、随分減っているような気がする。私のアパートに犬を飼っている家が1件、猫を飼っている家が1件ある。家畜は部屋を汚すし、他の住民の手前もあるから断っていたが、ある時客が少なくなりいれた。然し猫はともかく、犬は時々夜鳴きする。少少気になる。もう一軒入ったら二匹で夜鳴きをしあうのではないかと、以後犬は勘弁と言っている。

息子に子達が希望するから犬を飼え、とは言わぬ。しかし動物が人間のこころに癒しを与えることも事実。この前いった時に、大人たちが話しているときに子達は何をしているかを観察していた。長女は、ぼんやりしていた。次女は、母親の手伝いで忙しく動き回っていた。長男は、ビデオゲームみたいなものに夢中の様子であった。あんなときに犬がいたらどうであったか。そちらをからかってまた楽しい時間が持てたようにも感じる。又彼等の面倒を見、死を見ることによって学ぶことも多いのではないか、と思うのだが・・・・。

 

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