1557「15年前の誕生日」(5月24日(水)晴れ)
今日で76歳。しかし一人で過ごす。昼は日高屋でラーメンを食い、夜は自宅でクサレかかったトマトと牛肉を炒めて食べた。私は誕生日を今までどうして過ごしたのだろうと、日記のファイルをひっくり返してみる。すると61歳、つまり定年になってすぐの日記が出てきた。不思議に今自分が考えていることに似ている。
2002年5月24日。カミサンがなくなって6年後、親父がなくなって2年後。一部編集。
「61歳・・このごろ強い女房殿」
今日で私は61歳である。昨日ガールフレンドのAさんはから、腕時計をプレゼントされ、その後高級レストランでデイナーなどご馳走になった。私も久々に背広など着て張り切って出かけた。
しかし今日は終日一人。なんとなく淋しく感じる。
いつものように高校同期の集まりを新宿のキャッスルでやるから暇な人は集合、とのメールが入っていた。キャッスルは小田急の裏の鉛筆ビルの地下にある小さなバー。マスターと中国人の大柄美人のウエイトレスが一人いるだけ。地下に降りてゆくとa氏等3人がすでに水割りで酒盛りをはじめていた。a君がじろっと私をみつめて言う。「Aさんを連れてこないのか。」
「軍の機密さ。君こそなぜあの美人の奥さんを連れてこないんだ。」「こっちの言うことなんか聞きはしないさ。強くなった上、天邪鬼なんだよ。ゴルフで右に打てといえば左に打つし・・・。」「でも愛しているんだろう。」「人が楽しく酒飲んでいるときに、まずくなるようなことを言うもんじゃないよ!」・・・・・・。
そういえば最近とみに女性が強くなってきて、日本伝統の妻は夫に従う、という伝統的なうるわしい風習が薄れてきているように感じる。弟が友人を自宅に呼んで久しぶりに酒を飲んだそうだ。彼の報告によると「大きな声じゃいえないが、共通の話題は女房のグチ。みんな強くなっちゃって、手におえないらしい。僕もそうだけど・・・」
Aさんが私に解説。夫婦げんかの絶えないあるご亭主から、奥さんをなだめることを頼まれた。しかし奥さんは妥協しないどころか「男は女がいないと生活できない。けれど女である私は一人になったら、お金さえあればそれなりにやってゆくわ。」って、涼しい顔だそうだ。(中略)
男は、大体精力を会社に吸い取られていたが、女は子育てを終えたあたりから自由にあそびまくっていた。嘘と思うならちょっとしたレストランに行ってみたまえ、女、女の鈴なり、シアターも歌舞伎座も映画館も似たようなもの、男はお付きでいるようなもの、いまさらながら文化は女で成り立っていると思い知らされる。
男としてどうしたものか。一つは自立である。炊事、洗濯、ごみだし等すべて自分でやる。
一つは男同士で群れることである。そうすることによって、君たち女などにわからぬ世界があるのだぞ、と示すことが出来る。どんどんむれて、男らしい女には作れぬ居酒屋文化、ゴルフ文化、パチンコ文化などおこそうではないか。
一つはおしゃれに、他の女性にも優しくなることである。もちろん、それには先立つものがいる。だからめったなことで財布を女房殿に渡してはならない。その上でこのような行動を取ると、女房殿はこんな亭主でも取られてはと、心配する。
一つは適度に女房に優しくすることである。しすぎる必要はない。二月に一度くらいもったいぶって安めのレストランなどにつれてゆく。誕生日にはエルメスのスカーフは高いから、韓国製のヘルメスのスカーフかなんかをうやうやしく進呈する・・・。(中略)
それにしても61歳、淋しい年齢になったなあ。ところでaさん、こんなところで如何ですか。え、あの時はそう言ったまでだ。本当は女房に首っ丈ですって?。
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その後、キャッスルはこの3月で閉店。私たち男は金もセックスも全くダメ、女房殿がますます強くなり、決められぬくせにがなりたてる小池百合子のあこがれる・・・・。
しかし我々の話題はずいぶん変わった。女房殿に対する愚痴は影を潜め、病気の話、亡くなった友の話、それに政治の話が案外多くなった。それどころか、夫婦中がよくなったカップルが目立つように感ずる。文句を言っていたくせに、「二人でクルーズを楽しんできた。」などぬけぬけいう。あの頃は子たちが家庭を離れ、いままで外で働いていた亭主が戻ってきたころ、不満も軋轢もあった。しかしお互い自分自身の魅力も体力も経済力も亡くなり、この世をうまくやっていくには、私にはこの人しか残っていない、と考えた結果か。政治の話が多くなったのは、よく言えば会社から離れ、クールな目で社会を見られるようになったこと、突き詰めればほかに話題がなくなったからか・・・・・。そしてそろそろ終末を考えねばならぬ年齢に差し掛かった、というまぎれもない事実・・・・。もう一度76歳!
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