1561「本を書いた中野君に送るレター」(610()晴れ)

 

半月くらい前のことであろうか、ほとんど知らぬ出版社から新刊案内のはがきが送られてきた。「団塊の店仕舞い」中野重夫。会社にいたころ、隣りにいた席に男と同じ名前だったので出版社店に問い合わせると、その通りであった。総合研究所にいたころ、彼はガスから電気を作る燃料電池の開発に従事しており、よく雑談を交わした。それが縁でまだ年賀状も交換している。早速書店に注文した

それが数日前届き、今日読み終えた。月刊「本の街」に執筆したコラムをまとめたものらしい。彼に電話するかメールを送りたいところだが、あいにく知らぬ。賀状にも書いてない。そこで自分なりの考えをまとめ、手紙で送ろうと考えた。これはその原稿も兼ねている。

文脈等から判断すると、今は奥様や息子さん等と目黒に住まわれているらしい。料理が不得意、カップ麺をなにもかも一緒にして煮るくらいとある。その面では私の方が上かもしれぬ。私の場合は定年まじかになって妻を亡くした。子たちは、幸いなことにみな結婚して世帯を持ち、出て行ってしまった。かわいがっていた犬まで死んでしまった。亡くなった妻は、子たちに世帯を持たせようと頑張ったが、こうなってみると少々寂しい。

料理は自分で作る。研究所を出てしばらくしてから、私は会社から派遣されてイギリスのシェルの研究所にほぼ2年間過ごした。その時妻はもう病床にあったから単身赴任。目の前に牧場の広がる一軒家、そこに一人住まい、飯は自分で作らざるを得なかった。これが私の料理のコトはじめ、日本に戻って状況は変わらず、自分で作る習慣は変わっていない。

彼のコラム欄は推測すると1500字くらいで毎回書いているのではないか。私は定年後ほぼ毎日この5割増しくらいの長さの文を書き綴っている。1週間たつとまとまったもの2本を私のブログにアップロードしている。「私の通信」ということで70人くらいには直接メールで送ってさえいる。1週間で2本、年間にすると、旅行等で休むときもあるから100本程度。この前76歳の誕生日を迎えた。定年過ぎてから始め、そこから15年がたったわけで今1500回を超えたところ。その経験からこのような書籍を出した彼を羨ましく思う。

彼は楽器や高級な音楽が趣味らしい。私は音楽は子供のころから最悪であった。小学校の成績は5段階、+2が最高で-2が最低であった。音楽は表現、つまり歌う実力欄に-2の評価、それでいてペーパーテストで判断する理解欄は+2であった。社会に出てカラオケができずずいぶん困った。あれができないと宴会の場の持たせようがない。しかし家で練習を始めると妻はそっと雨戸を閉めた。楽器はギターをやろうとしたが「ワシントン広場の世は更けて」の最初の一章で投げ出してしまった。古典音楽を少しは知った方がいいだろうとCDやレコードをかけるがすぐに眠くなる。音楽の中にバッハやヘンデルはどうやって睡眠薬を忍び込ませたのだろう。オペラもイギリス出張のおり23回行ったし、日本に戻って小学館の「魅惑のオペラ」なるCD集を買ってきてみたりした。しかし主人公は「歌はうまいだろうがデブばかり、私は島倉千代子!」と投げ出した。

しかし最近少しだけカラオケが好きになってきた。妻が他界して間もなく、私は近くに住む中学校の後輩の女性と親しくなった。彼女は敬虔なクリスチャンで、歌はいつも聖歌隊の後ろで口をパクパクさせる程度であったらしい。もちろんカラオケのような下種なモノには縁がなかったが、あるとき私が自宅カラオケを始め出した。いつの間にかそれに染まり、最近は二人の夕食が終わるとカラオケ、という手順が根付いてしまった。

彼のエッセイをさもありなん、とうなづきながら読み続けた私であったが、「政治の季節」の項は「私とは全く意見が違う。」と思った。「グダグダいうとアメリカより先に日本を焦土にして見せる。」と息巻く北朝鮮、筋の通らぬ慰安婦問題を妥協せず、スポーツで不利な判定が出れば殴り合いも辞さぬ韓国、南シナ海を着々軍事基地化しようとする中国、それらを考えるとき、92項など理想論にすぎぬと考えている。

デモについていうなら樺美智子さんが死んだ頃参加したことがある。シュプレヒコールにあおられ、ジグザグ行進に参加させられ「自分のやりたいことではない。自己の主張を押し付けたい奴らが、我々を煽動している。」と感じた。しかも後になってあの煽動した連中も、ほとんど日米安保の改定内容を読んでいない、と聞いて驚いたものである。

ただ私はそう考えるけれども、人はどう考えるだろうといつも考える。幸い私のブログに会社時代の仲間、学校時代の仲間、趣味の仲間等数名がよく意見をくれる。私のような考えのようなものも、中野君のような考えの者もいる。もし中野君が私のエッセイを読んで意見をくれるなら、それは望外の喜びである。

 

註 ご意見をお待ちしています。

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