1570「10年後の私様へ」(7月9日(日)晴れ)
中国語放送CCTVを見ていると、休日ということで、中国に住んでいる中国語のうまい外人たちのクイズ番組。毎回一つの字につてその知識を競うが今日は「時」という字で会った。時を使った単語を列挙したり、熟語をあげたりいろいろやっている。最後の問題は「10年後の自分に」当てたレターを中国語で書きなさい、というもの。出席者はみな若いから「こんにちは、結婚しましたか、奥さんの機嫌はいいですか。赤ちゃんは元気ですか。もう課長くらいにはなりましたか。お給料は増えましたか」など想像力を膨らませている。希望いっぱいで素晴らしい!しかし76歳の私が書いたらだいぶ違うだろう・・・・。
「こんにちは。もう骨壺の中で灰だけになってしまったあなた、あなたから見ればあの世に残した者の様子はどうですか。一番上のお孫さんはもう結婚しましたか?」
・・・・・と書き出しては身もふたもない。10年後にまだ自分が生きている、元気でやっているとしてこの手紙を書こう。
「貴方は、今どういうところにいるのですか。
「サ高住」ですって・・・・。じゃあ大分体力は落ちてしまったでしょうね。
あれはいけないと言ったでしょ。あそこに行く、しかし帰ってくる人はまずいないのですよ。つまりこの世と半分おさらばすることになるのですよ。あそこは食事も身の回りの世話もやってくれるそうです。しかしあなた自身は毎日することがなくなる、確かにグループ活動などあるかもしれないけれど、あなたの趣味には合わない、設備もパソコン一つ不自由なところ、周りには繁華街などありやしない、緑はあるだろうけれどすぐに飽き飽きしてしまう、なにより何もしなくても変わらないという気持ちに陥ってしまう、体力がどんどん落ちてゆく。人間は頭と体を酷使して初めて若さが保てるのです。
何ですって?まだ一人で頑張って生きておられるのですか。それはよかった。
一番気兼ねなくいいのでしょうね。ガールフレンドのAさんはまだ元気ですか。彼女はまだ毎日食事を一緒に食べてくれるのですか。それは素晴らしい。
あのアパートのaさんはまだご存命ですか?彼女はたしか大正12年生まれ、現在94歳、私は「いつかは亡くなる。そうするとアパート経営としては厄介だ。」と考えつつも追い出すわけにもゆかず、困っています。老人ホームなど行けばいいと思うのですが、近い身寄りもないご本人は、やっぱり一人でやってゆくことがお好きなようです。腰を曲げてゆっくりゆっくりごみを出している彼女を説き落ち見かけます。声をかけるといつも丁寧に「お世話になります。」と答えられます。
貴方もaさんと同様で一人が気楽なんでしょうね。
長男のb君と住んだり、b君一家にこちらに来てもらうようなことにはまだないのですね。
考えてみれば彼らがこちらに来たり、あなた自身が彼の住んでいる沼津に引っ越すようなことになればAさんとの生活は終わることになるのかもしれませんね。
今時々孫娘が私のアパートに住めるのかなど聞いてきます。曖昧な返事をしながら私は
「彼女が来ると私の生活はどうなるのだろう。夜今まで通りAさんと食事をして、そのあとカラオケを歌うなんてできるだろうか。」など考えています。b君一家と住むこともまるっきり同じに考えられます。でもそうでしたね、b君は71年生まれ、定年まではまだ少しありますね。
でもこれから先どうするかも考えておいた方がいいですよ。まだラジオ体操に毎日行ってますか。10000歩歩いていますか。やめればすぐに体力が落ちますよ。日記は毎日つけていますか。やめればすぐにぼけてきますよ。昨日のことが思い出せなくなってきますよ。
目はまだ大丈夫ですか。白内障や緑内障の手術をしないで済んでいますか。え、もう手術をした。すこしは視力が回復したように感じる。それは良かった。歯は大丈夫ですか。現在、私が歯医者に行くと技工のcさんが「奥まで磨いてください。そうしないとそのうち抜けてしまします。」といつも心配しています。下から彼女の襟元ばかり見ていてぼーっとしていてダメなことはわかっているけど・・・・。
もう86歳になったのですね。父さんは88歳で亡くなりました。ある人が平均的には親の年齢+5歳、と言っていました。5歳延びるのは医学の進歩によるもの。すると貴方は93歳。まだ7年あります。頑張ってください。でも倒れたときのことは考えておいてください。相続対策は終わりましたか。遺言は残しましたか。誰かに銀行の口座番号や暗証番号を教えてありますか。
最後に一言、あなたは周りの人からだんだん疎まれてくるのですよ。今の私は、まだ元気、そのせいか年寄りに病気や医者の話、それに愚痴を聞かされるのは嫌です。あなたは今の私が嫌いな年寄りになるのですよ。余計なことは言わず、お嫁さんの言うことでも素直に聞いていなさい!aさんみたいに控えめに・・・・。」
註 ご意見をお待ちしています。
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