端午の節句に銭湯にいったところ、ショウブ湯をやっていた。ショウブは尚武をかけた言葉で男の子が勇ましく育つことを願ったもの。薬草風呂にショウブの葉が沢山放り込んであり、太ったおじさんがしきりに根に鼻を近づけ、匂いをかいでいた。
そのことがきっかけでアヤメ、カキツバタ、ショウブの違いが話題になった。
図書館で「宿根草花・・・育て方・楽しみ方」(西東社 柳宗民監修)を借りてくる
試みにインターネットの検索であやめ&カキツバタといれると、私のようにわからない連中が多いと見え、1000件以上のサイトで扱っていた。
カキツバタ、ハナショウブはアヤメに似ているわけで、いづれもアヤメ科。三つを総称してアヤメと呼ぶときがある。その上ワードでしょうぶと入れてもあやめと入れても菖蒲と変換される。素人がまようのも当然?
アヤメは日本原産の代表的な宿根草。改良種を主体とした同属のハナショウブに比べ、自然の趣が魅力。原種と同じ草丈50-60センチの高性種、20-30センチの矮性種の三寸アヤメ、五寸アヤメがある。花は濃青紫色系が一般的だが、白色やまれに赤紫色もある。
ところでアヤメは湿地で育つイメージがあるが、自生しているのはよく日の当たる草原で、乾燥に強い。4-5月にカキツバタ、ハナショウブに先駆けて咲く。
そのカキツバタはアヤメが終わり、ハナショウブが咲く前の一時に花開く。草丈100-120センチ。葉が長く、花の位置よりも上に葉が伸びるのが特色。忘れてならないのは、水湿性植物であるという点。家庭では庭に直接植えるより、鉢植えにして水気を絶やさないように育てる方がいい。
カキツバタというと、子ども時代にならった伊勢物語の一節を思い出す。
第九段に、あづまに旅した在愿業平朝臣がかきつばたの五文字をすえた句をよんでいる。
「からころも着つつなれにしつましあれば はるばる来ぬる旅をしぞ思う」
この歌も三河の国八橋にいたったとき、沢にかきつばたが「いとおもしろく」咲いていたのを見てよんだものである。
ハナショウブは6月上旬から下旬にかけて咲き、草丈90-100センチ、花色は紫、赤紫、青、ピンク、白などとにかく種類が多い。その原種は「ノハナショウブ」で、アジア各地の湿地帯に見られる。ハナショウブの園芸化が始まったのは江戸時代中期といわれ、育成地ごとに独特の系統(江戸系,肥後系、伊勢系)が生まれた。明治神宮の菖蒲園、堀切の菖蒲園など全国の菖蒲園はシーズンになると観客者であふれる。
湿地を好むが、カキツバタのように水生植物ではない。菖蒲園などでは水を流して演出しているだけで、カキツバタとは違って、少々乾いた畑でも良く育つ。
最後にショウブ湯につかわれるショウブは実はサトイモ科の植物。花は地味でハナショウブとは別種。強い芳香を放つことから古来、五月の節供に魔よけなどに用いられた。ここまではまだいいのだが、じつはこのショウブを江戸時代以前にはアヤメ、アヤメグサと呼んでいるからややこしい。前述の伊勢物語第52段に、ちまきをおくられた返礼に
「あやめ刈り、君は泥にぞまどひける われは野にいでて狩るぞわびしき」
妙正寺公園のおり口にある空き地にものすごく立派な「あやめ」が咲いているのを見つけた。真ん中の盛り上がった部分が白、垂れ下がった部分が紫で大ぶり、朝のラジオ体操でいっしょになるAさんに紹介したところ「あら、あれはジャーマン・アイリスよ。西洋のあやめだから花が大きいのよ。」・・・・ガチョーン!
「欧米で古くから愛好され、19世紀半ばから品種改良されてきた。「七色の虹」といわれるほど花色が多彩、赤をのぞくほとんどの花色が存在する。・・・草丈70-90センチ以上で大輪さきの高性大輪系、30-50センチで中輪さきのインターメデイエート系、30センチ以下で中小輪系に分かれるが、品種改良が多いのは高性大輪系・・・。ハナショウブと違って乾燥した土地を好む、耐寒性だが、高温多湿は苦手・・・」
いや、なかなか植物学とは難しいものです!
追加
テレビであやめとしょうぶの観察日記を放送していた。そのなかで同志社大学の先生がコメントしていたが興味があった。それによると
「花の一番外側に垂れ下がっている3つに分かれた部分は花顎である。内側に60度ずれて小さな花があるが、あの裏側に雌しべがついている。3つはつながっているそうだ。この雌しべのついている花弁に隠れるようにして3本の雄しべがある。葉は単面葉という。茎についているあたりは表裏があるが、上に行くとくっつき、目にするのは裏ばかりだそうだ。ハナショウブ、アヤメ等の区別は花顎にみえるミツヒョウの模様による。アヤメは網目模様をしている。またカキツバタは今では非常に珍しい。キショウブは別物と考えた方がいい。ニワゼキショウはあやめ等の起源と考えられる」
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