1619「「君たちはどう生きるか」を読んで」(1月19日(金)晴れ
この本は今小学生や中学生の間で幅広く読まれているという。
読み終えて何かを書こうと、最初に書いてある池上彰の解説を読み返したとき、私が書こうとしていることがほとんどここにあると感じた。
彼は「これは子供たちに向けた哲学書であり、道徳の書なのです。」と書いている。
その通りであるが、ここで感じること
一つには「まだまだ日本の未来も捨てたものではない。」
なぜなら、こういう本を読むほど純粋でどうやって生きてゆくのか考えている子供たちが多いという事、もう一つは学校で教えているのだろうか、という事であった。
私が、この本に出あったのは高校生になったころかと思う。確か河合隼雄の何かを読んで、その続きでこの本も読もうかと手に取った。しかし「子供向け」と考えたが読まなかったような気がする。
従って今回初めて読むようなものである。文字の大きいマガジンハウス版、書店にはほかに岩波文庫版、漫画によるものなどがおいてある。
著者吉野源三郎氏は、池上の解説によれば1899年明治32年生まれ、1981年82歳で没している。東京大学経済学部に入学するが、社会主義団体に出入りしていたことから治安維持法で逮捕された。この経験から、第二次大戦後は、戦後民主主義の立場から反戦運動に取り組み、岩波書店の雑誌「世界」の初代編集長を務め、岩波少年文庫の創設にも尽力した。
この本自体は1937年に発行された。中国大陸では盧溝橋事件が起き上海事変、日本国内では軍国主義が進み、社会主義的な思想やリベラルな考え方まで弾圧された時代。その中で、子供たちを偏狭な国粋主義ではなくヒューマニズムに根差し、自分の頭で考えられる子供たちに育てたい、そんな思いから書かれた作品という。
池上氏は一番傑作は、コペル君が野球の架空実況放送を中継したシーンである、という。私も小学校のころ野球にあこがれた。プロ野球の試合を始めてみたのは小学校4年か5年のころ。大館、飯田,荒巻などの名前が頭の隅に残っている。私は問題児で友達も少なかったから、道路で我が家の塀にボールをぶつけて返ってきたボールを選手気取りで取って遊んだ。コペル君のようにうまくはできなかったが解説し、ノートに書いて楽しんだ。
しかし私が一番今回そうだと思ったのは、最初のおじさんと二人で7階建てデパートの屋上に上がりそこから銀座通りを眺めるシーン。霧雨の中に茫々と広がる東京市、その中にところどころに岩の様に突き出ているビルデイング、そしてこの海の下に数えきれない何人もの人間が生きていると認識する。どんな人間がいることか、コペル君の知らない世界で彼らは何をしているのか・・・・。
彼の不思議な感動をおじさんの解説が補っている。
「コペルニクスのように、自分たちの地球が広い宇宙の中の天体の一つとして、その中を動いて生きていると考えるか、それとも自分たちの地球が宇宙の中心にどっかり座っていると考えるか、この二つの考え方というものは、実は天文学ばかりのことではない。世の中とか、人生を考えるときにもやっぱりついて回るのだ。」
子供のころは地動説ではなく、天動説のような考え方をしている・・・それが大人になると多かれ少なかれ地動説のような考え方になってくる。これでお互いがお互いを認めるようになり成長する・・・・コペル君のあだ名の原点になったこの考え方は人生でまず知らなければならぬ視点であると思う。
そしてこの分子のようなちっぽけな存在の人間がいろいろに絡み合って社会を支え動かしている。その辺の認識は三の「ニュートンの林檎と粉ミルク」の解説が興味深い。
支那の農民が、飼った蚕がヨーロッパの貴族の着物になる、それには作る人間、運ぶ人間、織る人間、いろいろな人が結ばれて行き一つの輪のようになっている・・・・君が生きてゆく上に必要な、いろいろなものを探ってみると、そのために数知れないほどたくさんの人が働いていたことがわかる。
ほかに
@ コペル君が当時は少なかった中学校に省線電車に乗って通うエリート層であることを認識させる豆腐屋の浦川君を訪問した話、貧困とは何かを知り、それが経済学の勉強に発展してゆく。
A ナポレオンの運命から歴史とは何かを学ぶ話。ガンダーラの仏像がギリシャ人のような顔をしている話
B さらに友人が上級生からいじめを受けてみんなで立ち上がる約束をしていながらいざというときに出てゆく勇気を持てなかった話。
いづれも人生をスタートしたばかりの子たちが読む書物としてふさわしいと思ったが、同時に我々が今読んでも何かを考えさせるものがある。最後に著者は「君たちはどう生きるか。」と問いかける。ほんとうに我々もどう生きればいいのでしょうか?
註 ご意見をお待ちしています。
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