1630「「下流老人」を読む」(3月1日(木)晴れ)
今日からようやく3月、朝ひどい雨であったけれども、午後には青空が広がった。気温もそれなりに上がり、暖かい。TVは桜の開花が例年より4日早くなりそうだと伝えている。
藤田孝典「下流老人」を読んだ。著者は1982年生まれというからまだ36歳、反貧困ネットワーク代表などとあり、ソーシアルワーカーとして現場で活躍する一方、生活環境や支援の在り方に関する提言を行っているという。著者の出身、聖学院大学卒はキリスト教系の大学。
まずは内容紹介。本書でいう下流老人とは「生活保護基準相当で暮らす高齢者及びその恐れがある高齢者という事だそうだ。
3章は誰もがなりうる下流老人と題して下流老人になるケースをあげている。
@病気や事故による高額な医療費の支払い
高齢期は想像以上に病気に侵されやすい。「年金+就労収入」で暮らしていける生活設計は「健康であること」を前提になりたつ。事故等の場合は加害者になることもありうる。人々は長寿命化しているが家族や地域社会のネットワークは機能しなくなっている。
A高齢者介護施設に入居できない
老後格差はすさまじい。特別養護老人ホームや養護老人ホームは極端に不足している。
B子供がワーキングプア
子がうつ病にかかるなどで働けなくなるケースも多い。
C増加する熟年離婚
男女雇用機会均等法施行後「夫が外で稼いで妻が家を守る」というスタイルは平均的家庭像ではなくなっている。離婚に際して年金は折半など妻の権利が認められるようになった。また二人で暮らすことに比べ一人*2で暮らすことは余計に金がかかることに留意すべきだ。
D認知症で回りに頼れる家族がいない
高齢化に伴い認知症にかかるケースも多い。この場合、オレオレ詐欺など別次元の脅威にさらされる可能性が高くなる。認知症+一人暮らし+悪徳業者=下流老人という危険性も大きい。
そしてこの章では「近い未来編」を予測している。
一方で、一億総老後崩壊の時代。もらえる年金が減る恐れがある。「一人暮らしなら月に14-5万あれば大丈夫」は高齢者が想定外のリスクに見舞われる可能性が高いことを考える必要がある。年収400万円以下は下流化のリスクが高い。格差がますます広がり、4割の世帯は、老後の資金がほとんどない。非正規は下流に直結する。モデルでは国民年金の約78万円しか支給されず、正社員(厚生年金加入者)との差は110万円にもなる。また未婚率の増加も下流老人を増やす。
第4章の「「努力論」「自己責任論」があなたを殺す」という章は、著者がいつも非難されることに対する反論、あるいはボヤキのようにも聞こえる。
高齢者の加齢化が進みこれからも増え続けることは明らかだ、しかし何も対策が講じられないのはなぜか。その背景には私たちの無自覚がある。例えば「自立していないこと」「他者や地域に依存する事」を悪だとみなす風潮はないだろうか。」として以下の内容。
「努力できないできそこないは死ぬべきなのか」「イギリス、恐怖の「貧困者収用法」」「下流老人を救済することは税金のムダ?」「言わなければ助けないという制度設計」「生活保護バッシングに見る「甘え」を許さない構造」・・・・・
ただ税金を取られる方のことも少しは考えてほしい。下流老人に陥ったり、生活保護に頼らざるを得なくなる人たちは多いだろう。しかし人はそうならぬように努力すべきなのだ。努力を怠り、隠し財産があるのに「助けてもらうのは当然だ、権利である。」と言うのは間違っている。
第5章の制度疲労と無策が生む下流老人の章で収入面の不備、家族扶助を前提とした年金制度の崩壊を家族機能の低下に帰しているところはうなづける。そのために特別養護老人ホームの拡充、住宅対策、医療制度の不備対策などは国が取り組む問題と言えるだろう。
そのように考えると「自分でできる「自己防衛策」はよく理解しておくべきだ。「地域社会に貢献する」「豊かな人間関係を築く」「ためるべきものをためる」なども重要だ。
いづれにしろ著者がいうように「人間がクラス社会システムを作るのは私たちである。」しかしよい社会をつくるにはやはり金が要る。そのためには稼げる層には稼いでもらわねばならぬ。社会の発展を保持しながら社会保障をどう構築してゆくか・・・・。
若いから後半のご意見はいかにして貧困をなくすか、という著者の主張になっている。そのためには「あれもすればいい、これもすればいい。」という事になるが、著者の言う「一億総老後崩壊の時代」が来るとするなら、だれが彼らを救う金を払うのか?自分はともかく、子たち、孫たちがそこに陥らぬようどうすべきか、という観点から」読んだ。
註 ご意見をお待ちしています。
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