1655「キングレコード吟詠コンクール予選」(6月3日(日)晴れ)
いつものように大井町の民謡会館。
これで勝ち残ると9月にイイノホールで決勝大会。それなりに張り切って出かける。
どこかで子供たちを対象に詩吟を教えているところがあるらしい。生徒と思われる6人、「富士山」を吟じたが、独特の節回し、一人の先生が教えていることはすぐに分かった。まだみな小学校前の様子、女の子はみんなきれいな着物を着ている。精いっぱい、子供らしく吟じているところがなんともかわいい。
しかし我々は厳しい。一般の吟詠は何歳で切るのかわからぬが、我々年寄りの部は36名、そのうち18名が入賞または決勝進出、という事であったが、私はまた全然引っかからなかった。今回はかなり練習したからいけると思ったが残念であった。
吟を練習すると細かい指摘を色々受ける。そこは切って吟じろ、回しが長い、声がざらつく、低音から高音に移るときは若干高音の時間を長くせよ、高音移行はホップ、ステップ、ジャンプだ、少し音を下げてから高音に移行せよ、「う」は「お」で歌え、等々・・・・これらを思い出しながら吟じる。一応毎日練習したから、間違えなくできるようにはなっていた。もう街を歩きながら、自然と鼻歌気分で吟が出てくる。絶句する心配もないと思う。
それなのにという感じであった。
今回の吟講評でこれから直した方がいいと思う点
一つは腹から安定して声を出す、という事であった。会員吟詠で親しいaさんをはじめ4人が吟じた。みなうまいと思った。新宿区の大会では最後に宗家吟詠がある。それぞれ宗派をたてているから上手なはずである。しかし代替わりでもしたのかずいぶん情けない吟もある。こちらはそこに行くと実力で選ばれた人たち、みな腹から声が出て堂々としている。私もああいう風に吟じたいと感じた。
もう一つは審査員の講評で伴奏にぴったり合っていないケースが多い、というのである。キングレコードの出だしはともかく、後奏に入るところ等はなかなか音楽が弱く判断が難しい。私も気が付いて収まるよう心がけたつもりだが、正確かと言われると自信がない。
ここは翌日、もう一度私の使ったB30という伴奏を聞きなおしてみた。大体伴奏は1分50秒くらいである。漢詩は4節に分かれているから、平均で1節27.5秒のはず、所がどうも前半2節が長いように感じた。2節で背景を十分に聞かせ、3節、つまり転句は強く早く吟じるべきか?
ぼやき節をもう一つ。
吟じたのは上杉謙信の「9月13夜陣中の作」であった。この詩はよく知られており、人気がある。若い人の第一部で4人、我々の第二部で5人が吟じた。ところが人気があるだけに審判員の判断も厳しいのか第一部で一人が入賞しただけで後は全員お呼びがかからない。この詩は次回からは吟じるべきではない、のかもしれない。
終わってから見事に決勝進出を果たしたbさんが、私を慰めるつもりかどうかはわからぬが付き合ってくれた。bさんは今日は「冬夜書を読む」であった。転句の「閑かに乱帙を閉じて疑義を思う。」というところを情感いっぱいに吟じる。歌手の福田こうへいの話が出た。民謡出身の歌手、彼もキング出身で「南部蝉しぐれ」で大ヒットした。彼の歌は高音が素晴らしく我々が目標とする声のような気がする。
最後にやはり詩吟を何のためにやるのか、今後どうするか、と考える。
関西の高校同期の友人のメールに
「6月11日から10日間、シルクロードを旅し、王之渙、王維、岑参などの「辺塞詩」を砂漠に向かって思い切って吟じてきます。」
具体的には「涼州詩」、「元二の安西に使いするを送る」、「碩中の作」などであろうか。それにしても唐の時代、西域に送られる人たちはどういう気持ちであったか。
「・・・・・酔うて沙上に臥す君笑うことなかれ 古来征戦幾人か帰る」
彼は寒山寺に行って「楓橋夜泊」を吟じたこともある。吟歴も私よりずっと古いベテラン・・・。
彼はこんな試合などでない。しかし彼は「詩吟をやっていてよかったと感じている。広い空間に向かって吟じるのは実に気持ちがいい。」という。
私もこれからはその気分でやろうか、と考えている。もう77歳、足腰の衰えを感じる。シルクロードにこの先行くチャンスがあるかわからぬがせめてそれを夢見て・・・・。
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