1661「米中大豆戦争」(6月22日(金)曇り)
ある読者からメールをもらった。
「大豆が貿易戦争に登場したので、考えてみると興味深い。
もともと大豆は中国から日本に伝来したもので、日本では古来から味噌や醤油の原料につかわれている。
今でも食用に使っているのは日本が世界一らしい。
今や大生産国の米国は日本からペリーが持ち帰って栽培を開始したものであり、生産量二位のブラジルに至っては田中角栄の貢献によって生産開始したものですね。一方消費という面では中国が世界一、ほぼ米国の生産量に匹敵する消費がある。中国の自給率は10パーセントくらいだ。
中國は米国とブラジルから45パーセントずつくらい輸入している。米国では生産量の半分以下だが、ブラジルは自国消費分以外はすでにほとんど中国向けですね。
このバランスからみて、米国製大豆の関税を上げて米国に損害を与えることができても、中国には代替輸入先がない。すると中華料理から油が消え、大豆かすの飼料がなくなる酪農も打撃を受ける。
この辺は日経の後講釈はどうなってくるのでしょうか。」・・・最後に「この辺の分析を貴兄のブログでも取り上げていただけたらよいと思いますが・・・・。」浅学菲才の私としては困った!
まず今回の追加関税戦争の行方はどうなるのか。当初は日経新聞に次のような記事
「追加関税、米側も打撃大」
米中の制裁対象は5000億ドル(約5兆5000億円)、一律25%、7月6日に340億ドル分を発動し、残り160億ドル分は時機を見て検討する。
中国の報復関税はやはり7月6日に340億ドル分、残りは米国の動向を見ながら決める。
米国の制裁対象はボイラー、タービン、電動機などで中国からの輸入総額の6.4%
中国の制裁対象は米国の「中国依存」が目立つ品目が多い。特に大豆は米国が17年に輸出した55%が中国向け。第1弾545品目は米国からの輸入総額の22.5%を占める。
やはり、その他の品目よりも大豆が焦点であることは間違いない。
読者氏の記事を追加検証することから始めてみる。
米国大豆栽培は、1850年、難破していた日本の樽廻船「栄力丸」が商船オークランド号に救助され、その中の一人が大豆を伝えたことが始まり。1853年にペリーが来航したとき日本の農産物や植物の種子の収集を行った。その時にこの大豆が入っていた、それがアメリカの大豆栽培の始まり、とあった。
ブラジルは1973年にアメリカは不作を理由に大豆の輸出規制を行ったが、この影響で日本では輸入大豆が底をついてしまった。当時の田中角栄首相は、アメリカ以外の大豆供給国を育成すべきだとしてブラジルに行き、ヘリコプターで荒れ果てたセラードと呼ばれるブラジルの荒地の上を飛んだ。セラードはブラジル全土の24%を占める広大な面積であり、ポルトガル語で作物が育たない不毛の地を意味する「閉ざされた」という言葉で呼ばれているところ。ここでの開発作業は、強い酸性である土壌に石灰を投入して中和することから始め、2001年までの21年間に亘って、34万5千ヘクタールを造成した。その間灌漑を整備し、入植農家に対する技術、金融両面から支援を行った・・・・・・
中国は改革開放以来ずっと食糧自給率95%以上を目指していた。しかしそれは米、麦、トウモロコシなどに重点が置かれ、大豆は蚊帳の外であった。さらに化学肥料の使い過ぎで土地の生産性が低下、農業就業者の低下と就業人口の減少、水汚染と水不足などで農業自体が不振に陥っている。
一方で大豆は重要な食料に変わった。かっては料理やサラダのドレッシングに使われる油のほとんどを占めていた。しかし穀物と油を搾り取った大豆ミールを、およそ4対1の割合で配合して、牛、豚、鶏あるいは魚に与えると良質なたんぱく質に変わり餌の栄養価が高まることが分かった。時には穀物を動物性タンパク質に変える効率が劇的に、倍近くにもなることが判明した。
その結果がこの読者の言うように中国は「自給率は10パーセントくらい」という状況になっているのだ。
今後大豆戦争はどうなるのだろう。
トランプ政権にとって大豆の対中輸出が落ち込めばアイオワ州など、トランプ米大統領を支持する農業生産の盛んな州を直撃する。一方中国もほかに輸入先がなければ困るだろう、との指摘がある。しかし遠藤誉によれば別の見方
「中国は習近平政権になってから中国国内産の大豆価格に関する改革を行ない始め、また大豆農家には国家からの補助金が出るように改善して大豆の国内生産を推進してきた。
4月3日には、2018年財政重点項目「強農恵農」政策を発布したばかりだ。またアメリカに次ぐ大豆生産国であるブラジルやアルゼンチンなどと親密であるのも、いざとなったら他の国で補完できるようにするためである。
」
・・・・・この辺の真実はなかなか素人の判断を許さない。またそれよりも貿易戦争全体の話が関心が高いがそれは別の機会に・・・・。
註 ご意見をお待ちしています。
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