167「傘の話」(5月23日  曇り)

もう梅雨の季節である。うっとうしい天気が続く。今日は梅雨と切っても切れぬ傘について書いてみようと思う。

まず、傘と笠の違いが分かりますか。
昔、菅の大笠や布や紙をはった笠に長い柄をつけたものを傘といっていた。現行の「ろくろ式」の開閉機構を備えた傘は、1594年、堺の商人納屋助座衛門がルソンから持ってきたのが始まりとされる。

傘が広く民間に使用されるようになったのは江戸時代からで、はじめは長柄傘が使われていたが1718年に禁止されてしまった。これと相前後して柄の短い傘も用いられるようになった。はじめは蛇の目傘、ついで骨太の大黒屋傘などである。日傘も盛んに用いられ絵日傘が流行したこともある。

「からかさ」の呼称については@柄傘の意で、柄をとりつけた「かさ」とする説。A「唐傘」「韓傘」の意で、舶来の「かさ」とする説。B「機械傘」の意でろくろ細工によって自由に開閉できる説などがあるという。自由に開閉できる、ということも当時としてははっとするような技術だったのかも知れぬ。

傘を英語でアンブレラというが、これはラテン語のumbra(影)からきたもの。古代オリエントが発祥地と言われ、アッシリア、ペルシャ、エジプトなどの彫刻や絵画に、王が頭上に天蓋のような傘を指しかけている姿が見られる。日傘の発想である。ローマ時代に雨傘が使用されるようになった。18世紀中ごとになると鋼鉄製の傘が発明され、現在の洋傘の一般的な形が出来上がった。

傘で思い出す映画は、普通「シェルブールの雨傘」、しかし私はなぜか「雨に唄えば」の方が思い出が深い。あの時、ジーン・ケリーが傘を投げ出し、背広姿で雨の中を踊りまくるが、西洋人は雨の日、傘をさすことは一般的ではないのか?

するとあるウエッブサイトに面白い記事が載っていた。
「18世紀、イギリスでは傘は本来女性のもの、男性は雨の日には帽子で雨を避けるのがあたりまえで、傘を使うのはペチコートを着るのと同じくらいに考えられていた。それを旅行家であり、著述家,商人でもあったジョナス・ハサウエイという人がペルシャを旅行中に見つけた中国製の傘が雨傘として使用されているのに感激した。これをひろめようと考え、ロンドンを防水を施した傘をさして歩いた。」
この伝統が少し生きているのかもしれない。

話を元に戻すと、和傘は、明治以降、洋傘の普及によってほとんどすたれてしまった。

植木ひとしの「ナンデアルアイデアル」の広告と共に、アイデアル社のジャンプ傘がヒットしたのは何時ごろだったろうか。その頃は傘もずい分外貨を稼いでいたらしい。しかし安い労賃で製造される中国傘等が出てくるともういけない。500円傘に驚いていたが、今ではダイソーなど100円ショップで傘が売られている。買ったことはないが、あれはどのくらい丈夫なのだろう。

ガールフレンドのAさんはT女子大で教えている。彼女が言うことに
「一昔前、女子大ではフェラガモだのデイオールだのブランド物の傘が目立った。それを盗まれないようにいろいろ考える人もいた。ところが最近はみんないかにも安物の500円傘にビニール傘・・・。」もちろん日傘もあまりはやらない。

先日、大工道具の箱を整理していて傘修理セットを見つけた。今では壊れれば買い換えればいいと、見向きもされなくなった。しかし安い傘ばかりがたまり、多くは布が切れたり、骨が曲がったりしている。あまり安くなりすぎるのも、物を大切にする心が失われ、考え物かもしれない。

(参考) 日本風俗史事典  弘文堂

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