1686 「人に話したくなる世界史」を読んで」(912()曇り)

 

視力検査のおり、眼鏡をつける方がすこし視力がよくなるような気がする。しかし実際には煩わしいからつけていない。その成果少々読みづらくなってきた。

新書版を半月もかけてゆっくりゆっくり読む・・・・そんな状態。

著者は玉木俊明と言う人、歴史を経済的側面から見ることを専門としている人の様。全体13章テーマ別になっている。章の終わりにもっと知りたい人のためにブックガイドと言うのが付いている。

書店で見つけ「蒸気船の世界史・・・マルコはなぜブエノスアイレスへ」と言うところを拾い読みしておもしろそうだと買ってきた。

19世紀中葉、イタリアのジェノヴァからはるばるアルゼンチンの首都ブエノスアイレスに出稼ぎに出た母。しかし1年ほどで音信が途絶える。その母を訪ねて13歳のマルコが旅に出る。そし27日間の航海を経てブエノスアイレス・・・。しかしなぜマルコの母はイタリアから職を求めてブエノスアイレスまで行ったのか。

このころヨーロッパ諸国は産業革命による経済成長を遂げていたが、その恩恵にあずかれない人も多かった。彼らが移民として、新大陸に出かけたのだ。多くの目的地はアメリカであったが、ブラジルやアルゼンチンにも大量の移民が押し寄せた。背景には蒸気船の発達があった。移動時間が安定し、飛躍的に早くなったほか、船は大型化した。エンジン関係のスペースが大きく、石炭を置く場所も必要、大きくしなければ採算が合わない。港、港湾都市も大型化する。さらに帰りも使え、輸送インフラが独占できるようになった。この時代になって初めて世界は一体化したと言える。そしてその中心にあったのがイギリス。蒸気エンジンの改良もあって蒸気船の移動時間はどんどん縮小した。例えばニューヨークからロンドンは1820年に32日要したが、1860年には13日になった。蒸気船によって運ばれたのは商品だけではなく、移民、資本の移動も活発化した。

当時南米には多くのイタリア人が移住、彼らがすでにそれなりの社会を作っていた。彼らの援助を得ながら、マルコはさらに700キロ離れたコルドバまで旅する・・・。

8章「大英帝国は借金上手?」も読んでみておもしろかった。日本国の借金は累積で1000兆円を上回る。家計に例えると年収が577万円なのに借金返済のために235万円使っている。これでいいのか。ヒントがもらえるかもしれぬ。

18世紀、イギリスもフランスも多額の借金に悩まされていた。しかしイギリスは借金を積み重ねながら強い国家体制を築いたが、フランスはブルボン王朝の崩壊を招いた。その理由は何か。この答えが税制で「フランスは土地税などの直接税を主体にしたのに対し、イギリスは間接税特に消費税を中心にしていた。国民の所得が上昇すると、必需品の需要はあまり変わらぬが、奢侈品の消費量は大きく伸びる。イギリスは税収を増やすことに成功したが。フランスは戦争の費用などかさみ債務不履行を繰り返した。

これが端的に表れた例として両国で同時に起きた南海泡沫事件とミシシッピバブルというバブル事件を取り上げる。前者はラテンアメリカでの政府が作った奴隷売買などをする会社。ウィキペデイア等で補足すると、@当時はイギリスの中産階級の資金がだぶつき、投資先を探している状態であった。A新しい南海会社は新株を発行し、それを国が高騰した市場価格で買い取る。Bすると南海会社は資金に余裕ができるからさらに新株が発行できる。それをまた国が買い取る。するとまた新株・・・・。そんなことで株価はどんどん高騰した。しかし本来の商売がうまくゆかず、ある時発覚し大暴落。まさに中産階級を躍らせて、結局は国家が巻き上げてしまった、という構図であった。

一方ミシシッピ会社はアメリカの当時の植民地、ミシシッピ流域を開発するという事であったが、うまくゆかない。信用不安のはてにルーブルが暴落し中心人物は亡命という事態になった。フランスは大量の損失、債務不履行等で信用を失った。更にこの事件、オランダは上手でうまく売り抜け、以後は資金をイギリスに投資することにした。その結果が19世紀のイギリスの発展とフランスの凋落をもたらした、という事のようだ。

12章以下に「手数料制する者、世界を制す」としてヘゲモニー国家について述べる。イギリスは産業革命ではそれほど儲からず、しかも後半には追い付かれ始めた。しかし世界システムを握り、電信、金融、保険等で力を発揮した。決済システムを握るものが世界を制する。そのイギリスと同様、現在のヘゲモニー国家はアメリカだ。中国は一帯一路政策はこれを目指しているけれども、「自国ファースト」の考えが抜けず、なりえないのではと推測している。

この他は実際に読んでもらってのお楽しみとするがほかに大航海時代の始まりはアフリカの黄金目当て、グーテンベルグのもうひとつの「革命」、本当はしぶとかったポルトガルとスペイン、「中立」がアメリカを強くしたなど興味深い章が多い。特に最後の物はトランプ政権のやり方を考え併せてみると興味がわく。

 

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