1693「アパートの鍵、貸しません」(1010日()晴れ)

 

昔、谷崎潤一郎の「鍵」を読んだことがある。「アパートの鍵、貸します」という映画を見たことがある。推理小説では密室殺人事件などでは、よく鍵が問題になる。それぞれにロマンがあるが、最近の鍵問題はまた少し変わってきている。

私の新しいアパートは、シリンダー錠を用いたオートロック式になっている。敷地に入る鉄製の門を鍵で開ける。同じ鍵を使って自室に入る。外部からの訪問者は鉄製門の前でインターホンを通じて話し、部屋の内部からロックを解除してもらう。

アパートに一人で住むような女性は多くは非常に気が強い、一人で生きてゆくためには仕方のないことだろうか。昨年末に出ていった102号室のお客はその中でもひどかった。

確か4年くらい前、親父さんは立川か八王子あたりに住んでおり、大工をしていると言っていた。娘さんは初めて家を出る、必ず大家さんに挨拶に行かせます、と言っていた。

しかし娘さんは来ないどころか、入居するなり、部屋に文句をつけてきた。クリーニングを入れたのだが、床がまだ汚れている、風呂に木の葉が入っていた等々。すこし長い間空き室であったからかもしれぬ。あまりしつこく言うので、途中から大工に対応させた。家賃はときおり遅れるものの一応規定通り払ったが、彼女がこちらに挨拶に来ることはなかった。

昨年の春ごろであったか、アパートの前で親父さん風がうろついていた。娘から連絡がない、心配になってやってきたが鍵が開かぬ。身分証を要求するとそれらしいものを見せた。

私は控えの合鍵を出して開けてやろうとした。ところが開かぬ。勝手に自分で鍵を変えてしまったのだ。親父さんがこれかもしれぬ、と鍵束から別のカギを差し込むと開いた。中は雑然としており親父さんは驚いていたが、私は関係ないことなのでその場を立ち去った。

10月頃になって、不動産屋を通じて彼女から退出すると連絡が入った。家賃の遅れがあったのでその清算もあわせて請求した。でてゆくさいの立会日も決めた。ところが突然引っ越してしまった。しかし立会日に現れるだろうから、その後についての打ち合わせは、その時に位に考え家賃の清算だけを要求し続けた。しかし立会日に大工と待っていると、不動産屋が駆けつけ「本人から都合で行けぬ、との連絡が入った」と主張。

「家賃の清算が終わっていない、転居先がわからぬ、鍵を変えたから、こちらは中に入れぬ。」と不動産屋を通じて勤務会社に文句を入れさせる。ようやく家賃は清算してくれた。親父さんが金を払ったらしい。本人は現れぬ。そこで「もうこの件は終わりだ。鍵を返さぬから壊して入る。」と強硬に言う。それでも現れず、とうとう鍵屋に内筒を交換してもらって部屋に入った。

後から考えるとこの辺で最初の鍵のことをもっと考えればよかった。

それから間もなく新しい客が入った。関西から来た大学を出たばかりの男性であった。しかしその彼は、3か月くらいで職場で自分の思うことがやらせてもらえぬと、関西に帰ってしまった。就職して、やりたい事をやらせてくれぬくらいは当たり前とも感じるが、詮索はおく。

部屋を再びきれいにした後、不動産屋に「お客募集、頼むよ」と言って2か月。ところが引き合い等全然ない。価格も安いし、設備もいいと不思議に思った。ふと鍵のことを考えた。案の定、不動産屋に鍵を渡すのを忘れていた。鍵がないから紹介してくれぬのだ!

しかし鉄製門用と部屋の鍵を二つ使わせるのはややこしい。ここで最初の女性は鍵を無断で作り替えたから、内筒をこちらに返していないことに気が付いた。

最近は特に女性客中心に鍵の交換を希望する客が多い。鍵は鍵とそれを受ける内筒、それに外筒からなっている。古い鍵は内筒と一緒にとっておかねばならぬ。この場合、大工の話では鍵の複製はできるが、鍵から内筒を作ることはメーカーがやらない、という。仕方なくこの部屋のお客に限っては正門と自分の部屋、二本鍵を使ってもらう事にした。

合わせて鍵の管理をよほどきちんとしないと何が何やらわからなくなってしまうと反省。

最近はデインプルキーを好むお客が多いらしい。普通の鍵にくらべて複製ができにくい、というのだ。別にできないわけではない、鍵屋に行けば普通の物は600円前後、こちらは2000円以上だが作ってくれる。しかし客は安全第一と考えるようだ。また一本一本は安いようだが、大家の立場に立つと不動産屋、大工に渡し、手元にも取っておかねばならぬ等それなりに大変。

大工の話「2本にして、部屋はデインピルキーにすれば、お客募集に有利ですよ。実は最近鍵の管理が苦労する大家さんが多く、こちらを採用する人も多い。」この案は目下考慮中!

それにしてもややこしい時代になったものだ。大家の皆さん、なにか情報があれば教えてください・・・・・。

 

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