1694「「縦に書け!」を読んで」(10月11日(木)曇り)
最初にウイキペデイアの引用。
「縦書きは、文字を列ごとに上から下に縦に連ねる。縦書きには、右縦書きと、左縦書きがある。 横書きにも、右横書きと、左横書きがある。英語など西洋からの文字は、左から右横書き、日本や中華圏でも現代では英語等に倣い左横書きの文書が多くなっている。これに対して、アラビア語、ヘブライ語等の中東圏は、右から左へと文字が綴られる(右横書き)。 またモンゴル語は、左から右へと行を進める縦書き(左縦書き)を使用する。」
2005年というからずいぶん昔に書かれた本。古本屋で見つけてきた。著者は前回の通信で紹介した石川九楊。対話の中から生まれたものを書にしたようだ。
日本で本格的に横書きが使われるようになったのは戦後。しかし新聞は見出しは(左)縦書き、横書き2種類、紙幣は横書き、官公庁文書は横書き、出版物は混在、など定まっていない。パソコンや携帯は横書き、パソコン世代の私や若い人は横書きに慣れているというべきか。
「卑弥呼は中国語ができたのではないか。漢字は和邇(王仁)が漢字を伝える以前から日本にあった。なぜなら中国の柵封体制の元金印がもらえたのだが、そのためには上奏文を書かねばならなかったのだから・・・。卑弥呼の中国語能力はともかく周囲に中国人がいたことは確かだろう。」
「文字が入ってきて、日本人は最初、文献を中国語で読んでいたが、次第に自分たちの言葉で読むようになった。春は中国語ではchunだが、こちらでは「はる」だ。こうして和訓二つの読み方が成立した。」
「一方で自分たちの言葉を文字で表現したくなった。そこで漢字の音を自分たちの言葉にあてはめるべく当て字表記をはじめた。音を借りているだけで漢字のもとの意味とは関係がない。こうして仮字=仮名が成立した。さらに発展して、もはや漢字とは思えない字、仮名文字が作られた。」
「和訓の世界では漢字を自分たち流で読む、すなわち読み下し分にする技術が生まれた。そしてそのためにカタカナが生まれた。九世紀末から十世紀初めのころである。同時に現代にまでつながる日本語が成立したと言ってよい。」
「この結果日本語には漢字、平仮名、カタカナという原理の異なった三つの文字が存在し、かつそれらが一緒に使われるようになった。世界で他にない言語である。」
この文字の形態が「日本人」を規定したと言える。天と地を持つ現実の世界を知る表現として、文字は上から下に向かって垂直に書かれるもの、縦に書くものとして生まれ育った。これを横に書くという事は英語を縦書きにすることに等しい。縦に書くことを通して一つの重さを感じる。これに耐えて書くことにより耐え、踏みとどまる力、「自省」や「自制」が生まれてくる。英語やパソコンではこの感覚は生まれない。
占領軍は縦書きをなくそうとした。ある新聞は一時横書きで書こうとした。しかしどれも受け入れられなかった。一方で横書き文化が氾濫し、例えば鉛筆を正しく握れぬ生徒が増えてきている。封筒のあて名書きでは混乱を極める。郵便番号、住所、氏名の正しい配列はどうあるべきか。そして縦書きと横書きは書く内容にさえ影響を与える。ある人は縦書きは理論的で、大上段から筋立てて考えているのに対して、横書きは経験的、具体的な素材が多く、身辺雑記的でまとめようとしていない、としているとか・・・・。
そして著者は「縦書き」こそが(日本人の)精神を救う、とする。しかるに現在では、横書き文化、特にパソコン等の普及がアメリカのような緊急避難型社会を作り、沈黙に耐えられぬ人々を生んでいる・・・・。
最後に私の意見、私は習字をやるくせに、やはり横書きに慣れている。毎日日記を書くがパソコンに打ち込んでいる。コピー、ペーストができるから文章を考える上では非常に有利であるように思う。一方で縦書き文章を書きだすと、たちまち英語と数字で立ち往生してしまう。横書きは世界の流れの中では、やむを得ないのではないか、と考えている。あまり詳しくないが、学校の教科書でさえ、国語は縦書きだが、英語はもちろん、数学も物理もみな横書きと記憶している。言い方を変えれば子たちに横書きと縦書き双方を知れと強制しているようなものと思う。
日本よりも漢字のおひざ元中国では横書きが当たり前になっているように見える。なぜか。実は平仮名、カタカナが特に文字を続けて書くために縦書きに向いていると感じる。漢字は表意文字だが、こちらは表音文字、表音文字で物を書こうとするとき、文字数が多くなり、一つ一つの文字に意味がなくなる。そのため早く書くために続けたくなる。この点は英語も同じ。ただ続けるために平仮名、カタカナでは縦、英語では横の方はやりやすいのではないか,と愚考している。
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