1710「「万葉仮名で読む「万葉集」」を読む。」(1221日(木)晴れ)

 

また石川九楊。また古本屋で見つけた。今年後半彼の著作に凝っている。

万葉集は平仮名ではなく、現代人には漢字の羅列に見える万葉仮名で書かれている。その意味を通じて日本と日本語の成立過程を考えさせてくれる興味ある書物である。自分自身の知識を確かめながらそのさわりを書いてみる。

(最初に日本史のおさらい)

漢字が日本に入ってきたのは、遅くとも紀元後1世紀ごろか。

漢委奴国王印 福岡県志賀嶋で発見。漢委奴國王(かんのわのなのこくおう)

・・・・これを得るために上奏文を漢語で書いたのであろう、と考えれば、当時すでに日本には漢語を話し、書く者が多くいたことがわかる。

卑弥呼(生年不明 - 242年〜248年)が邪馬台国に都をおいていた。

280-290年ころ、魏志倭人伝(西晋、陳寿)に日本の風俗記述。卑弥呼の記述。

400年ころ、広開土王碑。高句麗国王、広開土王の功績を記した石碑。 538頃 仏教伝来か

600頃 聖徳太子(574-622)、推古天皇のもと蘇我馬子と協調して政治を行う。603十七条憲法

600頃遣隋使派遣、第二回に小野妹子派遣。618年に隋が滅びた後、遣唐使になり、907年唐が滅びるまで続く。660頃、百済滅びる  

663白村江の戦い。これにより、日本は日本として独立した道を歩まねばならなくなった。

(これらを踏まえたうえでの著者に歴史観)

「日本は650年ころ以前は、独自の国家形態があったかどうかはよくわからず、正確に言えば「中国時代」とでも呼ぶべき、大陸と一体化した時代であった。

それにつづく政治的に独立せざるを得なくなった650年ころから平仮名の生まれた900年ころまでは疑似中国時代である。それまで900年ころまでは政治的には中国から独立したものの、文化的にはそれまで以上に中国化した時代であった。この過程で日本の国の基本的な形も、それからの日本語の基本構造も形成されてゆく。(94p)

(万葉集と古今和歌集前後)

759以降 万葉集成立。日本に現存する最古の和歌集である。天皇、貴族から下級官人、防人などさまざまな身分の人間が詠んだ歌を4500首以上も集めたもの。774 835 空海の渡唐。

905古今和歌集 醍醐天皇の勅命により万葉集に撰ばれなかった古い時代の歌から撰者たちの時代までの和歌を撰んで編纂したもの。

・・・・さて本論。確か漢字は早く日本に入ってきた。しかし民衆・生活者のレベルでは文字らしいものがなかった。彼らの言葉が負かったわけではない。それと漢字をスパークさせ、固定させ、自由かつ滑らかに表現したい。とはいえ、漢字は表意文字である。その表意性を生かしながら、他方でこれをはがし、表音文字として使う・・・・矛盾である。その過程を著者はいう。

「万葉の歌は漢詩と和歌の間の多様な多種多様雑多な歌からなる。まずは漢詩を身近な形の歌に翻訳し歌作りの訓練をする。次に和語以前のまだ文字に書きあげられておらず定着していない言葉(倭語)を書くことによって定着させ登録して和語、和歌を作ってゆく。漢語・漢詩の理解によって、言葉、詩、語彙の構造を知り、その構造に従って、形と姿の固まらなかった原地語を固め一定の形へと構築する。この双方向の営為を通して、日本語というものを創造していく過程の文字、それが万葉仮名である。」(24p前後)

これがやがて古今和歌集となり、孤島独自の女手=平仮名が成立してゆくことにつながる。日本語に漢字・漢文を使ったスタイルと平仮名スタイルの2トラック方式ができてゆく。

万葉仮名で書かれている万葉集はまさにその葛藤が垣間見られる作品という事が出来る。万葉集の書きぶりが数多く紹介されているが一つの例を挙げてみる。

石激垂見之上乃左和良妣乃毛出春尓成来鴨

石はしる 垂水の上の さ蕨の 萌え出づる春に なりにけるかも

石激は特に表意性が強い。二つの文字により水が石にせき止められて激しく流れる様子よくわかる。

和良妣は固有名詞に当て字をさすようにあてはめた。孤島にのみ存在した?わらびどのように書き表そうかと苦労したときに行き着いた結論だ。しかしこれが一字一音の平仮名へつながる。「鴨」になるともう一字一音もすてとりあえず組み合わせた感じ。

「之」「乃」「尓」は漢文を訓読するために持ち込んだ和語の助詞である。漢語が入り込み、圧倒的な漢語の力との衝突の中で国語も文法も作られてゆく‥‥それがわかるという事であろうか。本書にはほかに多くの例が挙げられ、万葉集を万葉仮名で読む楽しみを与えてくれるが、その辺は実際に読んでみてのお楽しみ・・・・・。

 

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