1716「顔真卿展」(123日(水)晴れ)

 

上野の森で顔真卿展をやっているというので早速見てきた。但しちょっと期待外れだった。

顔真卿(709785)は唐朝の人、先祖は孔子の弟子であった顔回であったともいう。737年進士に合格し、順調に出世したが、安史の乱(755-763)に遭遇。唐朝のために奮戦した。しかしこの乱で皇帝が玄宗から粛宗に変わり、その重臣元載と対立、追われてしまう。

彼の楷書作品には多宝塔碑、顔勤礼碑、顔氏家廟碑などある。手元に比田井南谷編による楷書「顔君礼碑」がある。1922年に発見されたもので顔真卿60代末の作品とされ、顔法の特徴をもっともよくあらわしたもので、入門書としてこれに勝るものはない、とされている。私はこれで少し顔真卿の文字を臨書した。

顔真卿は初唐以来の流行である王義之流の流麗で清爽な書法に反発し、「蔵鋒」の技法を確立した。力強さと穏やかさとを兼ね備えた独特の楷書がその特徴である。

逆筆ぎみに起筆して穂先を穂の中に包み込むように送筆する筆遣い。重厚さを表現する。露鋒に対する語である。俗に「蚕頭燕尾(サントウエンビ)」(起筆が蚕の頭、右の払いが燕の尾のような形をしている)とも形容されている。

国立博物館で顔真卿展をやっているので見てきた。しかしこの展覧会の売りは顔勤礼碑ではない。

「(台湾)國立故宮博物院蔵の「祭姪文稿」(さいてつぶんこう)をはじめとする顔真卿の名品を通して、顔真卿の人物や書に迫ります。」とパンフレットにある。

「祭姪文稿」は50歳の時山西省にある普救寺で書かれたとされる行書作品。

ウイキペデイアには「(行書についても)顔真卿は書の達人として王羲之に匹敵するとされており、文句なしの賞賛を受けている。遺墨が多く残り、「劉中使帖」、「争座位帖」、「祭姪文稿」が特に有名である。」とある。

「祭姪文稿」は、安史の乱で非業の死を遂げた親族の一人を追悼するため記された弔文の原稿であり、塗りつぶされた34文字を含め259文字からなる。 「稿」の字が示すとおり弔文の原稿であり、塗りつぶしや修正などの跡が見られるが、国家に忠義を尽くした顔真卿が一族を哀悼する気持ちをも露わに記した書は中華史上屈指の名書とされ、歴代の皇帝が至宝として蔵した。

「祭姪文稿」のように紙に書かれた文字と石に刻まれた文字の差を考えた。顔真卿自身は「祭姪文稿」のような自由な書き方の書を石屋に渡したのではないか。それをもとに石屋はきれいに原稿用紙に並べるように配列して彫ったのではないか。そういう意味では「顔君礼碑」に比べて顔真卿の書の真の姿に迫るという事は出来る。

一体どういう人たちが来ているのだろう。「祭姪文稿」の前には大行列ができて押すな、押すな、であった。ある書に文字は「なぞり書き」をしてみて初めてその技術や良さがわかるとあった。とてもそんな雰囲気ではない。ある老夫婦の会話「字なんかわかりはしないんだ、書の展覧会がこういうものと分かればいい。」といっていた。

後世、顔真卿に影響を受けた人の作品も展示されている。彼の書が発展して完成された楷書となった雁塔聖教序、九成宮醴泉銘等もこと細かく解説されている。さらに空海は空海が唐に入った頃、韓愈が王羲之を否定して顔真卿を称揚する主張を行っていたため、空海が顔真卿の書風を好んだのではないかと榊莫山は推測している。その展示と解説。風信帖を臨書したことがある。さらにその後の時代に書かれた臨書や顔真卿をまねた書の紹介まで幅広い。

但し全体としては顔真卿に焦点が絞られておらず、書の歴史の紹介のような趣のように感じた。

甲骨文字、大篆、小篆、隷書、草書、行書、楷書、現在私自身が練習している王義之の蘭亭序、書譜等々。ただし石碑や出土品を持ち込むわけには行かぬから拓本のコピーである。書そのものの歴史を概観するうえではなかなかの展示会であるが、このような文字は習字の教科書にいくらでもある・・・・というのは言いすぎか。

追記 少々恥ずかしいが楷書と行書の区別でいつも迷う。ある解説に「基本の字形を崩すことなく書き記す「楷書」は、一画一画を整然と組み立てるこの書体は分かりやすく、読み違えられることがありません。それに対して「行書」は、速さや筆づかいを重視してスピーディーに、しかも読みやすく書くために、点画の形を変化させたり、省略したりしています。また、楷書のように一画ずつを独立させるのではなく、つなげて書くことで「連綿線(れんめんせん)」という独自の線が表れるのも特徴。」等言うような表記。また別の場所に「隷書を簡略化した書体」ともあった。歴史的にはこちらが正しいか。しかし楷書と行書の境目はなかなかに難しい?

 

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