1734「自分に友に子に私は何ができるだろう。」(4月19日(金)晴れ)

 

「・・・・・しかし、どんなに仲の良い夫婦であろうと、長年連れ添った夫婦であろうと、死ぬときは一人なのである。このことを思うと、私は慄然とする。人間は一人で生まれてきて一人で死ぬ。

生の基本は一人である。それ故にこそ。他人に与え、かかわるという行為が、比類ない香気を持つように思われる。しかし原則としては、あくまで生きることは一人である。

それを思うと、よく生き、よく暮らし、見事に死ぬためには、限りなく、自分らしくあらねばならない。それは他人の生き方を、同時に大切に認めなければならない。その苦しい孤独な戦いの一生が、生涯、という者なのである。」(曽野綾子「私の後始末」)

夕方、長女から電話がかかってきた。「家の後ろのaさんの娘さんが亡くなったって知ってる?ほら、**さん、**さんて仲良くしたじゃない。」・・・・20年前に他界した妻の一の趣味はお茶であった。我が家の北側にaさんの家があった。亡妻はそこのおばあさんにお茶を時々教えてもらっていた。かわいがられてaさんの庭にあった椿をずいぶん我が家の庭に移植した。その椿がつい先日ころ満開の時期を迎えていた。しかし夫の私が、aさんの娘さんまでしるよしもない。知らぬ、と答えると長女は「そう。」とだけ答えた。亡妻のことを私はわかっていなかった、と感じ、同時に私に知っていると期待する長女も長女だと思った。

「人は部分でしか理解しあえない。」冒頭の書の別のところに書いてあった。その通りと感ずる。

「あと三回!」

ガールフレンドのAさんが言っている。彼女は中野の警察病院に毎日放射線治療のため通っている。足腰がしびれるように感じ、体力が落ちた、と嘆いている。

彼女が乳がんらしいと考え、医者に相談に行ったのは確か去年の6月であった。乳がんであることが判明し、抗がん剤による治療が始まった。ずいぶん高い薬も使った様子で、保険のありがたさを知った。髪の毛が抜け、疲れる、と訴えられたが、私には見守るくらいしかできぬ。ようやく終了した。だいぶがんがん細胞は小さくなった様子で、手術をし、それを取り除いた。しかし若干りんぱに転移していたらしい。今度は放射線治療が必要ということで中野の警察病院に通うことになった。それが後3回、来週の火曜日で終わるというのである。

結果の検査もあるが、それで良好なら、治療は終わり、ということらしい。温泉にでも連れてゆきたいところだが、皮膚が放射線治療などで弱っており、しばらく控えるように言われているとか。おいしいものでも食べに行こうか、など話している。

高等学校同期のb君がなくなった。食道がんであったということだった。

葬式に行こうか、と迷ったがやめにした。クラスが同じであった。会社ではそれなりの要職にいたらしいが「パソコンはできぬ、海外旅行に行ったことはない。」と言っていた。会社を辞めた後は何か民生委員のようなことをやっている、と聞いた。個人的な付き合いはなかったから、無理してゆくこともない、と判断したが、なんとなく印象の深い男であった。しかし寂しいことだ。

また冒頭の書「しかしなんにせよ、「稼げる」という行為は大したものだ。万引きだって掏摸だって、その犯罪的行為によって稼げなければ、その人は生きて、生きていけない。生きてゆくということは、しかし人間を認める大前提なのだから、余の中のことは簡単にはいえなくなる。」・・・・・稼げるを生きるに変えても同じことが言えないか。

昼間これも高校同期のc君と公会堂喫茶でお茶を飲んだ。

彼との共通の話題は株である。しかし株のやり方は全然違う。彼は信用でかなり手広くやっているが臆病者の私は実株のみ。彼はパソコンを使いこなすわけでもないのに、毎日データを書き出し、研究し、それなりに良い株に目をつけてくる。しかし最近の市場はなかなか難しい。つい先日彼はガールフレンドと日本一周のクルージングに行った。

「いつも株で儲けた金で旅行に行ったものだが、今回ばかりは元金を取り崩さざるを得なかった。株をそろそろやめにしようかと思っている。」

彼にしてはずいぶん弱気な発言、と感じた。我々二人の間で株の話も最近はあまり盛り上がらぬ。しかしあって昔話などしていると心が和むように感じる。「連休中、彼女が福島の田舎に帰ってしまう。食事をしようよ。」そんなことを言いながら、1時間くらいでいつものように分かれた。

冒頭のように考え、私は達観したように感じるこの頃・・・・・。c君とは、葬式や遺産の話も出たけれど、それは死んだ後の事・・・・・・「あっしにはかかわりのないこと。」と割り切っていいのかもしれぬ、とすら考え始めている。

追記(423日):Aさんの放射線治療が終わった。赤飯を炊き、鯛を焼いて食べた。Aさんはワインもほんの少しだけ飲んだ。まだまだ、墓までは長い。頑張りましょう。

 

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