1737「曽野綾子:私の後始末」(5月4日(金)晴れ)
著者はかって「夫の後始末」を書いた。夫三浦朱門をみとった経験を書いたものだ。
今度は自分自身、彼女自身は私より10歳上、年齢とともにできる経験に裏打ちされた考え方・・・・これはその年になってみなければ分からぬと最近感じている。
「・・・・・・邱永漢さんは昔、「本当に幸せなのは、小金のある庶民だ」といいましたが、私も含めて多くの日本人があてはまります。その日に食べるもの、着る者に事欠かず、毎日お風呂に入れて、薪集めをしなくても冬は暖かく暮らせる。近代的な警察組織が治安を守り、交通機関が正確に運行されていて安心して外に出かけられる。世界でもごく少数の人しかあづかれないこういう暮らしに対して幸せを感じないとしたら、大変な人間性の欠落ですね。」30p
・・・・・・妻はなくしたが、私も曽野さんと同じ状態。
「勝気や見栄をすてた時、人間は解放される。勝手の私の首や肩のように。こちこちではなく、しなやかな感受性を持ち、自由になれる。その自由さの中で、人間は光り輝くように、その人らしく魅力的になり、かしこげになり、金はなくても精神の豊かさを感じさせるようになり、大人物に見えてくる。
自分の弱点をたんたんと他人に言えないうちはその人は未だ熟していない人物なのである。」55p
……その通り。私がその域に少しは近づいたことを願う。
「・・・・・・私足たちは映画館や劇場だけで人生を楽しむのではない。そこを通過するあらゆる人にドラマと魅力を見いだせれば、こんな楽しいことはない。」61p
・・・・・・・そうだ。あの「夢芝居」という歌を覚えているか。出たとこ勝負の人生、やり直しは聞かぬ。
「自分流に不器用に生きることである。自分流でなく、他人流に生きようとする人が多すぎるからストレスが起きる」66p
「・・・・・・ボケないで若くいたかったら、自分で料理をすることは手近で一番いい。いかなる薬よりも食べ物と、それを作る過程が動物的に体に聞くはずだと私は信じている。」87p
・・・・・・料理、自分でやってますよ。たしかにボケ防止に一番いい。
「伸ばすという知恵は大切だ。誰かに抗議したくなったら明日までメールを送るのをまったらいい。誰かを殴りたくなったら、この次にあったときにすればいい。・・・・」99p
「・・・・・私はかなり前から義理を欠いている。大切なのは生きている間だと思っているから、お葬式は時々失礼する。生きているうちは見舞いに行くのは大切なことだ。でも亡くなった後は、魂はどこにでも偏在するのだから、何も葬式の場に行かなくても家で祈ればいいことだと思う。」113p
・・・・・・その通り。その人と付き合いがあっても、おおくの場合、遺族とは付き合いがない。知らぬ遺族になぜ挨拶をする必要があるのか。
「私はものの考え方は不順のほうがいいと思う。むしろ小さなことでは不順を許す方がいいと思う。人間には自分を疚しく思う部分が必要だ。自分は正しいことしかしてしてこなかった、と思う様な人になったら
周りの者が迷惑する。」119p
「・・・・でもそれではあまりにも悲しいでしょう。だから私は「ああ、今日はこんなに親切にしてもらった。」「あの人、とても素敵なことを言っていた。」「こんなにおいしいご飯を食べた。」といった具合に、どんな小さなこともすべて、いいんだと思ったことを毎日、覚えておくことにしたんです。」133p
・・・・・・・「喫茶店のあの娘の尻は格好良かった。」「株はこちらで10万円損したけど、こちらで1万円もうかった。」私のいいんだと思ったこと。
「「なせばなる」と信じてはいけない。・・・・・「なせばなる」のなら「一億総火の玉」となって戦った大東亜戦争にどうして勝てなかったのか・・・・・・。」137p
「私はなんでもすぐ「そんなことでは、人は死なない」というのが癖になった。「少しぐらいいゴミがあっても死なない」「少しぐらい食べなくても死なない。」「少しぐらい汚くても死なない」「少しぐらい、義理を欠いても、見捨てられることばかりでない。」ほかに運命が私に教えてくれた言葉は数限りない。」151p
「贅沢はなかなかいいものだ。贅沢をすると、ある瞬間からそうした俗念の執着からきれいに脱却できる。」153p
「余生というものを少しでもわかる年になって、はじめて自分の眼もしっかり落ち着いてあたりを見回せるのである。」198p
「生きるという言葉には二つの意味があるのではないでしょうか。一つは生物として病気もせず、もちろん死にもせずに生きるということです。もう一つは自分の心が生きるということです。肉体が生きている買いがある、と思うことです・・・・。」203p
「故デ・メロ神父はこう書いた、という。「精一杯生きる日が、もう一日与えられていることは、なんとしあわせなことだろう。」214p
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