1770「新年早々から物騒」(1月6日(月)晴れ)
いよいよ今日から正月が終わり、平常モード。予想通り、株価が大暴落のスタートとなった。
休み明け前は、米中貿易交渉がまとまる雰囲気であったため、高い水準を保っていた。
しかしこの休みの間にトランプ大統領がとんでもないことをやらかした。
イラクで、イランの革命防衛隊のクドス部隊のスレイマニ司令官を、無人攻撃機のミサイルで暗殺した。イラクで、しかも無人攻撃機でというところ目を引く。
スレイマニ司令官はシリア内戦におけるアサド支援、対ISIL戦争と、イラクへの浸透などで活躍した人で、イランにおける実質NO2という人もいる。しかし昨年の12月27日スレイマニ司令官の影響力のあるイラクのシーア派・親イラン武装組織がキルクークの米軍基地に攻撃を行い、軍属の米国人1人を殺害した。これにトランプ大統領が激怒したということだ。
暗殺作戦について、トランプ大統領は声明を出し、「我々は戦争を止めるために行動した。戦争を始めるためではない」と述べたが、イランの最高指導者ハメネイ師は「厳しい報復を行う」と表明している。
ひどいことをするものだ。国際法も国との関係も全く無視した野蛮な行為に見える。ISのやっている行為と同じではないか。しかもトランプ大統領は議会にすら報告を遅らせたとか。
地球の裏側に近いところでの暗殺劇、私に大した関係があるわけではない。あるとすれば株価への影響。そこで素人であるが自分なりの見方をまとめたい。
トランプ大統領の今回の目的は選挙対策であろう。「場合によって武力に訴えてアメリカの利益を守る」ことを鮮明に、強硬派の支持を得ようとしたのだろう。
しかし今回の措置でアメリカはIS対策で一時回復しかかっていた、中東の一般の支持を大きく損なったことになるのではないか。すぐにイラクが「米軍主体の対テロ有志連合を撤退させることを政府に求める決議を採択した。」ことは計算外ではなかったか。
「(イラクに)敵意があり、不適切なことをするなら、イラクに非常に大きな制裁を科す」と警告した。
国務省のオルタガス報道官は声明で、決議に「失望している」と表明し、決定を見直すよう要請した。しかしこれにイラクが素直に応じるとは考えにくい。イラク各地の基地には米軍約5200人が駐留。米軍を中心とする有志連合は2014年、イラク政府の要請により駐留を開始した。これはIS対策であった。ここを基地にアメリカを中心とした複数の連合軍が、イラクで勢力を拡大しつつあった過激派組織ISILに対して空爆を行ったのだ。しかしISがほぼ壊滅した今、存在意義が薄れ始めていた。そうした矢先の事件である。
しかし一方でイラクもまた手段が少ない。イランは15の報復手段があるとしたが、別の報道によればイスラエルへの攻撃、サウジアラビア石油施設への攻撃、ホルムズ海峡を通る船舶への攻撃、付近の米軍基地への攻撃を挙げていた。このうち最初の二つは他国を巻き込み事態を大きくするだけで得策ではないだろう。
ホルムズ海峡の封鎖は別ルートからの輸送、他国による補充など考えれば絶対的なものではない。
堺屋太一が「油断」を書いたころとは事情がまるで違う。原油価格は上がるだろうけれども、世界の需要が冷え込んでおり、従来のよう極端な値上がりはない、との声が多い。むしろ米国などシェールオイル産原油が値上がりし、喜ぶかもしれぬ。
付近の国にある米軍基地攻撃。その中でも今回の直接の関係者であるイラクの基地。納得感がある。しかも米国にとって、遠い親米的とは言えぬイラク。米国はそう簡単に援軍を送るわけにはゆくまい。またイラク側がインフラを止めるなどの手段を取ることもあろう。ヴェトナム戦争を思い起こさせる事態は双方とも避けたい。
両国の世論は平和を渇望しているから、結局はイラクが攻撃のポーズを見せ、トランプ政権が妥協する、という形で終わる・ことになるのか。残したものは中東諸国におけるアメリカに対する憎しみ増強か。仲介役となるべきヨーロッパ諸国や日本はカードがますます限られてしまう。
以上のように考えると今回の事態の影響は限定的、株価は景気が良いわけではないが、それなりに堅調な現在、その流れを変えることはないのではないか、と考える。
少し余計なこと・・・・・そのすきをついて中国とロシアが影響力を強めるのかもしれぬ。もう一つ、強い米国何をするか分からぬ、という恐怖感を世界に植え付けた。北朝鮮金正恩書記はおびえることになるのかもしれぬ。どこの国であれ米軍基地があればそこから無人機を飛ばして爆殺、などということすら考えられるではないか。
追記1月7日 株価は予想通り盛り返している。トランプ大統領のやることは、日本人の目から見れば滅茶苦茶であっても、投資家は支持する、民主党大統領など誕生してはたまらんというところか。
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