1776「「ロシアから見た北方領土」を読む」(37日(土)曇り)

 

女性の友人から「「ロシアから見た北方領土」という本の書評を書かねばならぬ。書きなれていない。どのように書いたらいいか。」と聞かれた。よくも文才のない私にそんなことを聞くものだ、と思ったが、頼まれた以上、自分なりに対応してみることにした。

慌てて件の書物を書店に注文する。8年前に出版された文庫本で取りよせてもらった。

この歳になれば書評らしきものを折に触れて書いた。若いころは何を書いていいかわからなかった。

推理小説のそれらしきもの書くにあたって、事件と犯人以外思い浮かばなかった。知人から「推理小説は犯人ばらしてはいけない。」と批評された。ではどう書くべきであったか?

読後感と書評は異なるものと思う。

前者は面白かった、興奮しですむ。しかし後者はその本の著者でも、読んだ自分でもない第三者に本はどのようなものであったか、を伝え、そしてそれに対す自分なりの評価や考え伝えなければならぬ。それゆえ内容と著者の言わんとすることを十分に理解せねばならぬ。速読なんてとんでもない話だ。そしてその本を通して著者にすら語り掛ける何かがなければならぬ。それゆえ書評を通して書き手は批判されることにもなる。

以下依頼主の女性の話はともかく、下手なりに私がまとめてみた例。

「この書は2010年野田内閣のころに書かれた。著者は1937年中国東北丹東生まれ、新聞記者雑誌編集者を経て文筆活動に入った人である。

全体の3分の2以上を北方領土に関す日本とロシアの歴史俯瞰に割いている。

17-19世紀の松前藩の話、ロシアのこの地方への到達の話、大黒屋光太夫の話、ゴローニン、プチャーチンの日本接近、明治維新、さらにロシアのアラスカ売却等を経て1875年に樺太・千島交換条約が結ばれる。千島列島全体が日本、樺太全島がロシアに帰属することになる。

しかし1904-5年の日露戦争、それに伴うポーツマス条約でロシアは南樺太を日本に譲渡する。

その後ロシアでロマノフ王朝の崩壊、第一次世界大戦とソビエト政府の誕生が続く。

そしてあの何の結果をももたらさなかったように見える、1918年に始まる日本のシベリア出兵。

日本の中国進出とともに起こったノモンハン事件。ロシアの力を思い知らされる。

そして日ソ中立条約結んだうえで日本は太平洋戦争に突入する。

この時、スターリンは「いつの日か日露戦争の屈辱」を晴らそうと考えていたようだ。

1945年、日本の敗戦が濃厚な中、ヤルタ会談が行われ、ロシアは日ソ中立条約破棄を通告。89日に侵攻を開始。ロシアは日本の考える終戦の日815日、国際的に認められている92日を超えてまで日本を攻撃する。いつの間にか千島列島には本来属さぬ歯舞、色丹まで占拠。

講和会議で北海道分割論まで上げようとするが、戦後ソビエトの強大化を恐れた米英から拒絶される。

そして、戦後冷戦構造の中、サンフランシスコ講和条約はアメリカ・ダレスの元、結ばれるがソビエトは調印しない。スターリンの誤算と言える。

1956年に日ソ共同宣言がなされ、フルシチョフは歯舞色丹両島返還で落ち着かせようとした。

領土と漁業権が欲しい日本、この地域の開発のため日本の協力は欲しいが領土で譲れぬソビエト。

さらにその実現を妨げていた米国の沖縄返還が1972年に実現する。

しかし日本は4島返還に執着したり、「北方領土返還の日」を設定するなどロシアを刺激、2島返還が実現しない。一方1991年にソ連邦が崩壊し、新生ロシアが誕生する。

その後エリツイン、鈴木宗男等の頑張りもむなしい。ロシアは巨費を投じインフラ整備や資源開発を行い、千島諸島を開発しようとしている。一方で2012年にプーチンが大統領に復帰する。

歴史を俯瞰したうえで第6章「改めて北方領土」、第7章「ロシア人にとっての北方領土」で、自論と将来に対する展望を紹介している。

日本人は一般的にロシアが嫌いである。原因は北方領土問題のほかにあの戦後シベリア抑留問題があるのだろう。しかしロシア人にも感情がある。彼らの立場の立って考えること必要だ

領土要求を実現させるためにどうすべきか。それにこだわるばかりではいけないのではないか。ロシアが望む政治的・経済的互恵関係の構築に日本はどれだけ努力払ってきたか。その辺も考えあわせボタンをかけなおすべ時期に来ているといえまいか。

大いに勉強させられた。巻末に関係資料、関連年表がまとめられており、この問題を考える上での格好のテキストになっていると感じた。」

後記 女性が作り直した書評を送ってきた。問題の第一はロシアは領土観を生活の中で構築し、ロシア人は戦争の結果として考える点。第二は漁業権という利害得失の問題。ロシアはこれに領土問題を絡めて考えようとする。しかし重要なのは北方領土で暮らす人々自身のことだ。これはこれで一つの有力な見方なのでエールを送った。しかし今となっては、北方領土で暮らす人々とは誰のことなのか?

 

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