181「ウナギとカバヤキの話」(7月27日 晴れのち曇り)

何日ぶりだろう。晴れた朝を迎えるなんて。
今年は梅雨が何時までも続き、水がめは心配ないだろうけれど冷夏が心配されている。昨日テレビをつけると隅田川の花火をやっていた。もうそんな時期だったのか、という気分。

土用丑の日だからと、魚耕で蒲焼を買った。

蒲焼は、樺焼、椛焼とも書かれた。いづれも蒲の花に似ている、桜の皮に似ている、樺の皮に似ているなどから来た。アナゴ、ドジョウ、ハモ、ニシン、サンマなどにも用いられる。室町時代以前からあったとするのが通説らしい。

もっとも昔の調理法は
「丸に炙りて後に切る也。醤油と酒を交ぜて付る也。また山椒味噌をつけて出しても吉也」
とあり、今日とは大分違う。
蒲焼には山椒を添えるが、こちらは山椒に川魚の毒を消す効力があったかららしい。

なぜ日本人はウナギというと馬鹿の一つ覚えみたいに蒲焼にしてしまうのだろう、調べたがよくわからない。
外国人には私の経験からは蒲焼はすすめられない。
いつか東南アジアの客を招待したときにはいかにも安いメシを食わされている、という風に食ったし、フランス人にうな重を食わせたときには、小皿にウナギを取り出し、皮をむいてわきに避け、飯だけを恐る恐る食っていた。

「土用丑の日にウナギを食べる」習慣が始まったのは、江戸時代。太田蜀山人が鰻屋の頼みで「土用鰻は体力増進に効果があり、特に丑の日の鰻は食あたりしない。」と宣伝したとする説、平賀源内が「本日土用丑の日」と書いて宣伝したとする説があるとのこと。

ウナギはアナゴ、ハモ、ウツボの近縁で、無足類という。ウナギ科にはウナギ族しかなく、世界で18種類が知られている。しかし日本には普通のウナギとオオウナギ(カニクイ)の2種がいるだけのはず。ヤツメウナギは円口類でウナギではない。

生後7-12年たった40-60センチの雄と50-90センチの雌は、産卵にために秋の増水時に海へ向かう。このときのウナギを下りウナギと言い、脂が乗り格別にうまいということだ。産卵場所は長いこと不明だったが、現在では北緯20度以北から28度以南、西側は沖縄列島、東側は小笠原列島と知られている。

ここで気がつくのは、鮭も同じだが、よく川で育ったウナギが海に出て行っても平気だということ。ウナギの体液の浸透圧は、淡水と比べると高く、水が体内に流入し、水ぶくれになってしまう恐れがある。けれど皮膚にある粘液細胞が不透膜となってこれを阻止している。反対に海水よりは低いので、海では体内の水分が外に出てゆく。そこで海水から絶えず水を吸収し、塩類を排泄して、濃度を保っているそうだ。

さて産み落とされた卵はしばらく浮遊し、やがて孵化しレプトセファルス型幼生という特別な時期を過ぎ、沿岸部に近づいて体長5センチ前後シラスになる。ここは簡単に書いたが大半は他の魚に食われるからシラスまで成長するのはごくわずか。

生き残ったシラスは、11月から5月にかけて、大潮のとき、潮の流れに乗って川に上ってくる。それを捕まえて、養殖池にいれて育てる。
蒲焼をじっと眺める。お前もずい分長旅してきたものだ!

しかし最近になって取れるシラスが減ってきてしまった。この前テレビでシラスの完全養殖に成功した、との報道があったが、あれが普及すればいいのだろうが・・・。
そこで最近は密かに欧州種、通称フランスウナギが使われだしている。スーパーなどでつちのこみたいにずんぐりむっくりしたウナギを見かけたらそれだそうだ。味のほうは基本的には油が多いが、中国での加工法によってそぎ落とされるからわからないとか。他にもアメリカ、メキシコ、アフリカなどのものも輸入されているという。

今日食った蒲焼は、四国産と書いてある。なかなかよい味である。食べる前に「ボンソワール!」とささやいてみたが、フランス語がわからないらしくなんとも答えなかったので表示は正しいのだろう。

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