献体とは、医学・歯学の大学における人体解剖の研究・開発に役立たせるために自分の遺体を無条件・無報酬で提供することをいう。
「人体解剖実習」は、医学・歯学教育の中でもっとも大切な基礎となる課程といわれる。しかし昭和30年、40年代、医科の大学では学生2名に1体、歯科の大学では学生4名に1体が基準だが、大部分の大学はその基準を満たす事ができなかった。この状況を憂えた人たちが、献体を思い立ち、申し出たことがきっかけとなって献体運動が始まった。
昭和58年に「医学および歯学教育のための献体に関する法律」が施工された。現在わが国には献体篤志家団体が56団体あり、登録者数も増加の一途をたどっており、実習をすべて献体された遺体で行える大学も増えている。しかし習慣などの違いにより登録者数の少ない大学もあるようである。
献体を希望する場合、申し込み先は献体篤志家団体または医科および歯科の大学に申し込む。献体登録には肉親者の同意が必要である。生前献体登録をしていても、実際にその意志を実行するのは遺族であって、申し込んだ本人ではない。従って、一人でも反対すると献体は実行されないことになる。遺族は一般に配偶者、及び同居・別居を問わず親、子、兄弟姉妹などをさすが登録する団体に確認する必要がある。
登録されると会員証(献体登録証)が送られてくる。登録者が死亡すると、遺族が電話し、遺体の引取りの日時や手順を大学と話し合って決める。通夜・告別式など、通常の葬儀を行うことは問題とならない。通常は葬儀の後、遺体は出棺して火葬場に向かうが、献体する場合には大学である点がことなる。
献体された後、遺族に遺骨が返還されるまでの期間は、大学によって差があるが、普通は1-2年、長い場合は3年以上かかる事がある。これは次のような理由による。
1)防腐処理等の解剖準備期間として3-6か月
2)実際の解剖実習期間として通常3-7月
実習は大学ごとに決められた時間割によって行われるため、その年の実習に間に合わない場合は翌年の実習まで保管されることになる。保管については「死体解剖保存法」に基づいて行われる、というだけで詳細ははっきりしなかった。大江健三郎の「死者の驕り」は死体洗いのアルバイトの話である。こう言うのを読むとおぞましい気がし、こんな風には扱われたくないなあ、などと感じる。
またこの辺は献体する遺族から言えば「遺体が出たときにすぐ実習を行えばいいではないか。」との議論がでそうだ。こんなに長くては1周忌だの3回忌だのできそうもない。
最後に遺体は大学側で火葬し、遺骨が返される。大学への遺体移送費と火葬費用は大学で負担するが、葬儀の費用等は当然負担されない。
以上が献体というもののお話である。しかし死んでしまえばもうおしまい、切り刻まれ、ぼろぼろにされても結局は焼かれること、火葬や灰にして山に捲くのと同じと割りきれればいいが、実際はそうは行かぬ人も多いようだ。
あるサイトにお母さんが献体した体験談を載せていた。要約すると
「母は死ぬ8年前に大学病院に献体の申し込みをした。同意は父一人だった。71でなくなったが死体が返還されるまでに2年2ヶ月かかった。親戚たちから「お骨はどうなるの?」との電話を受け、そのプレッシャーで私は「うつ」になり、パニックに陥った。遺骨は大学病院で処分してもらうことに耐えられず返還を申し込み、最近埋葬した。母が献体した理由は、ただ単に「葬式代と埋葬料を節約するため」であった。「医学のため」「医者の育成のため」など、確固とした理由もなしに献体はすべきでない。」
しかしまた別のサイトではお坊さんが「献体」を薦めていた。
「私は齢六十。お粗末な人生劇場も終りに近い。伝教大師は「生けるとき善をなさずんば、死するの日、獄の薪とならん。」としている。この先いくばくかの善根をつんでも私の一生は赤字決算になりそうだ。そこでマイナス分のいくばくかの補填をするために、命終した私の五体を役立たせよう。」
どうも私には軽々には結論がだせない。みなさんはどうですか。
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