192「小学校の海水浴日記U」(8月26日 曇り)

「次の日は朝4時ごろからみんなに騒ぎ起こされました。ぼくたちは風呂の水汲みです。風呂の水は、かわるがわるポンプをおすと管でドラム缶のようなものの中へ入り、さらに鉄の管で風呂に入ります。1時間くらいかかって風呂の水は一杯になりました。」

井戸水をくみ上げたらしい。結構楽しそうにやっている。それから口を磨き、お話とラジオ体操があった後、やっとご飯にありつけた、とある。

「「海へ行きます」とおっしゃったので大喜びで服を着替えて飛び出しました。・・・・・ちょっと小高い砂山を越してみるとものすごい波がザブーンザブーンと押し寄せています。今度は昨日よりも少し沢山準備体操をして入りました。まもなく泳ぎの検査がありました。ぼくは10メートルくらいのところを力戦奮闘ありったけバタ足で泳いだけれど不合格でした。また今度テストがあったら絶対泳ぐぞ、と思いました。」

このころやっとのしが出来るようになった。検査には次の日に一応合格している。

「まもなく砂浜に上がって体を温めました。海岸の砂はとても熱いけれど、海の中へ入って体がひえているのでとても気持ちがいいです。ぼくは少し体が温まるとぬれている砂浜へ行って山を作りました。しかし山は波にすぐに押し流されてしまいます。まもなく入り、また出ると言うぐあいで2時間くらいたってから人員検査をしてから宿舎へ帰りました。」

読み返しているうちに気づくのだが観察だけは結構細かい。昼食後は昼寝である。

「ぼくは家で昼寝をしないので枕を出してタヌキ寝入りをしていました。何分かしてそっと目をあけると斉田先生がこちらを見ていたのでまたあわててタヌキ寝入り・・・・。」

しかし実際はすぐに寝付いてしまったらしい。あとから「阿笠君、ものすごくよく寝てたよ。」などと友達に指摘されている。
おやつを食べ、また海に行き、それから自由時間になった。

「それから帰り服を着替えると自由時間です。ぼくは芥川君と野球をしました。グローブは沢山あるけれどおんぼろが沢山あります。それでぼくらはキャッチミットとファーストミットを使って投げっこをやりました。」

このころ私は何とかして野球をうまくなりたいものだ、と思っていた。毎日家の壁にボールをぶつけて遊んでいたが、才能はあまりなかったようだ。
この日は夕飯に刺身がでたらしい。間違えてわさびを口の中に放り込みあわてている。

「夕飯がすむと外へ出て火をたき、その火をかこんで大きな声を張り上げて思い切りの声で歌いました。海、浜千鳥、どれもみんな海に関係の深い歌です。「今日は花火をやろうと思ったけれどもお店が品切れでありません。ですから今日はこれで終ります。」と先生がおっしゃいました。」

キャンプファイアーみたいなものである。歌はまるっきり苦手だから、どんな声になったやら。夜は武山先生が怪談を聞かせたらしく、それで寝た、とある。
三日目の朝は掃除当番が回ってきたらしい。

「大きな箒をもってそこいらをはきました。掃き終わってから雑巾がけをしようと思ったら雑巾がありませんでした。品切れです。夕べの花火みたいです。」

なかなか辛らつである。また泳ぎ、昼寝をし、おやつを楽しんでいるが省略。夜、網元が来て話していった。

「ご飯の後演芸会がありました。ぼくはお話をしました。また演芸会の前にはこの辺の網元馬場さんのお話がありました。このおじいさんは頭がもうつるつるです。なかなか面白い話をしてくださいました。」

何の話をしたことやら・・・。最終日は朝食後海に入らず先生と浜を散歩している。

「ぼくは大喜びで砂浜へ先生といっしょに飛び出しました。砂浜へつくとぼくはカシパンを一つ二つと見つけました。カシパンというのは直径5-6センチの丸くて平べったいもので、表面にお菓子のカシパンの模様がついているからこういう名がついたそうです。結局ぼくはカシパンを19拾いましたが5つ6つみんなに上げたので12,3になってしまいました。そのほかイタヤ貝やこういかの甲やつしろ貝(?)なども拾いました。またカイメンも少し拾いました。」

本当にきれいな自然の砂浜だった。帰りには記念写真なども撮っている。

「阪本君や横川君は記念写真をとっていました。はたして本当にうつるかしら。そこのところはちょっと問題です。」

まったく口の減らない坊主ぶりである。

「千葉駅からは電車で一路東京へ向かいました。江戸川を過ぎると東京です。あんまり電車も汽車も速くて筆の方がおいつきません。・・・・荻窪駅には先生をはじめ父兄の方々も出迎えていてくださいました。ぼくのお母さんもきていました。」

確か荻窪駅で猛烈な尿意をもよおし、我慢できなくなってバスの停留所で漏らしてしまったのだけれど、子どもながら都合の悪いことはちゃんと避けて書いている。

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