「昔、武蔵野国に、たいそう酒好きのおじいさんとお饅頭のすきなおばあさんが息子の田吾サークと一緒に住んでいた。秋の終わりころ、おじいさんとおばあさんがなくなった。田吾サークは立派なお墓を作り、田のあぜに生えていた目立たぬ草を球根と一緒に植えた。1年近くが過ぎ、再び秋になると何本も茎がのび、真っ赤な花をつけた。そして噂がたった。雨の夜に墓の辺を歩くと夫婦の幽霊が出る、その幽霊がくちぐちに「まんじゅう・・・・」「さけ・・・・」と恨めし気にいう。やがて人々は真っ赤なこの花を饅頭・酒・・・マンジュシャゲと呼ぶようになった。(新編武蔵野国風土記番外編)」
高等学校同期で奥武蔵自然歩道を歩き、巾着田に行く。巾着田は高麗川の見事な蛇行を利用した水田で、昔の小銭いれに似ているところから名づけられた。近年用地の買収がすすみ半分が公園化されており、いま彼岸花の盛りである。
ヒガンバナ科。この科の植物は世界で1000種以上と知られている。キツネノカミソリ、スイセン、キズイセン、ハマオモト、タマスダレなどである。
田のあぜ・墓地など人家近くに自生する多年草。救荒植物と言うこともあるが、鱗茎にアルカロイドを含む有毒植物で、動物たちも知っているのか、この花には近づかない。野犬に墓を荒らされたりされないよう墓地に植えたり、ネズミが穴をあけて水漏れをおこさないように川の土手や畦に植えられる。巾着田のものもその伝だろう。
秋の彼岸ごろ、50cm内外の一茎をだし、頂部に6ないし7個のつぼみをつける。それぞれがわれて6片の花被、雄シベ、雌シベが顔をだす。やがて花被は外側にそり、雄シベ、雌シベは花被を越えて蔓のように大きく飛び出す。葉がないから、生け花にしてもほとんど水を吸い上げずしかも枯れぎわはぐずぐずとだらしない。だから数本だと、色あせるのが目立ってしまうのでがばっと100本くらいいけるとか。
雄シベ、雌シベはあるが、日本に分布するものは3倍体で結実しない。しかし中国には種子で繁殖する2倍体も存在する。日本のものはもっぱら鱗茎の分裂によって繁殖する。
・・・と知ったかぶりで書いたが、3倍体というのが問題。普通染色体は二つで一対をなし2倍体と呼ばれるが、3つでセットになるものがあり、これを3倍体と呼ぶらしい。3倍体は奇数対のため成長しない、不妊になるなどの特性があり、種無しスイカなど応用例があるのだそうだ。
冬の初めころ線状の葉を出し、翌年の春かれる。実はここにこの花の戦略がある。丈の低い草は、光をどのように葉に受けるかが問題である。冬に展開できるとすれば、他の植物は枯れ伏しているので、独占的に太陽の光を享受できるのである。
しかしこの葉と鱗茎のゆえに、ノビルやアサツキとも間違って誤食されるケースがあるようだ。水によくさらすとアルカロイドが流出するから食用になるといわれるが、一般には薦められない。むかし飢饉のときにこれを食べたために死亡した例が多く残っている。
カミソリバナ、シビトバナ、トウロウバナ、マンジュシャゲ、捨子花、天蓋花などと呼ばれる。中国原産といわれ、古くから日本に到来し、本州以西に生え、まれに栽培される。友人から聞かれた。「なぜ曼殊沙華というのか。」
冒頭の話?あれは私(筆者)の口からでまかせである。ごめんなさい!
「赤い花なら曼殊沙華 阿蘭陀屋敷に雨が降る 濡れて泣いてるジャガタラお春・・・・。」花を観賞しながら、我々は口々に唄ったが、山口百恵の歌にも「曼殊沙華」というのもある。しかしあちらはマンジューサカと呼んでいるとか。梵語でこの花のことをこういうのだそうだ。曼殊沙華はこのマンジューサカから来たとする説と葉がでるまえに「まんず咲く」から来たとする説があるという。こちらが本当です。
最後に最後に帰り道から眺めると白い彼岸花を発見した。シロヒガンバナで黄色のショウキズイセンと赤い彼岸花を交配してできたそうだ。もう相当に普及しているらしい。
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