203「サンマの話」(10月9日 曇)

サンマはなるべく、強火の遠火で焼くほうがいい、と聞いて、ガスコンロの魚焼器をやめて、市販の受け皿つきの網をガスコンロに載せてみた。煙が沢山出るから、排気ファンはまわしっぱなし、それでも台所が少し煙り、家中にサンマの臭いが立ち込めた。しかしレモンを少したらし、大根おろしで食べたところ、実においしく感じた。特に皮のこげた部分のにおいがなんともいえずいい。

しかしある友人の話によると「サンマは塩焼きよりも刺身。」だそうである。

私がサンマの刺身に出会ったのは3年位前に東北ドライブ旅行に行ったときが始めてである。気仙沼ですし屋により勧められて食べたが、こんなものかと思った。しかし最近自分でさばいて、食ったところ、改めてそのうまさを感じた。皮のむき方を覚えたのでまた機会があればつくりたい。

サンマを食っているうちに疑問に思ったこと。欧米でイワシや鱈を食うがサンマを食った話を聞いた事がない、なぜだろう。佐藤春夫の歌に「秋刀魚の歌」というのがあり、「・・・さんま苦いか塩っぱいか。・・・」どこが苦いのだろう。魚屋に行くとわれわれが買う一尾100円くらいのサンマの横に300円のサンマが並んでいる。よく見ると少し大きくて太いように見える。あれは長寿のサンマなのだろうか。

早速、図書館にインターネット。

サンマは北部太平洋と日本海に分布している。タツ目サンマ科サンマ属で、種類はわずかに4属、いわゆるサンマのほか、ハシナガサンマ(大西洋、南太平洋)、小型のもの2種である。つまりいわゆるサンマは日本近辺のみ!

秋から冬にかけて生まれた仔稚魚は越冬した後、春になって黒潮に運ばれ、常磐水域へとはこばれる。夏になると主食である動物プランクトンの豊富な北海道から千島沖へと回遊し、急速に成長する。8月下旬に入ると移動と産卵のためのエネルギーを十分に蓄え(脂20%以上)、日本列島にそって南下を始める。この脂に頭のよくなるDHA(ドコサヘキサエンサン)、動脈硬化を防ぐと言われるEPA(エイコペンタエン)など多量に含まれる。しかし11月紀州沖で水揚げされるころには、身もやせ、脂は5%減っている。

サンマの産卵は謎につつまれているが、11月ごろ相模湾を過ぎるころ一斉に産卵する説、四国、および九州沿岸で1-4月に海に漂うホンダワラなどの流れ藻に産み付ける説、年中産卵する説、などがある。大部分のサンマは1年しか生きないことが最近明らかになった。

このような生態から当然サンマは水温の低いところでとれたもののほうがうまい。水温11度以下からとれたサンマは焼くと燃え出すと言われ、水温18度以上になると脂がおちだす。水温17度はサンマにとってお肌の曲がり角で、この水温以上だと虫に食われ銀色の肌にしみが出る。今日食った奴は途中から燃え出してあわててガスの火を細くしたから、寒いところで取れたものなのだろう。

サンマは胃がなく、腸が極端に短いため、絶えず何かを食べていなくてはならない。1年であれだけ成長するのだから、当然と言えば当然だが、大食漢である。苦味は肝臓中の成分に由来する。肝臓は新鮮なものは豚や鳥のレバーを食べたようにトロっとした甘みににた味がするが、鮮度が落ちてくると苦味の強いアミンが生成されるのだそうだ。

サンマを日本人が食べだしたのは江戸初期、マグロ、イワシと共に下等魚とされ、武士はほとんど食べなかった。落語「目黒のサンマ」は殿様が鷹狩の帰途、目黒の茶屋で舌鼓をうち「サンマは目黒に限る。」とのたもうた話だが、それにはこのような背景がある。現代の貴人、天皇陛下や小泉首相は・・・食べるんだと思うけれど知らない。

サンマは大きくて張りのある体をしたものが、目が黒々としたものがいい。尾が黄色いものは脂がのったサイン。ただ、サンマは区別されて泳いでいるわけではないだろうから、途中どこかで人間が仕分けするのだろう。

最後に焼いたサンマは大根おろしがあうと相場がきまっている。あれは焼け焦げに発癌物質が含まれる事があるが、大根おろしにそれを抑える働きがあるのだそうだ。

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