結婚している長女から、孫娘をこちらでお祭りにつれて行きその晩泊めてくれないか、と言われたときは、二つ返事で引き受けた。しかし日がたつにつれて心配が募ってきた。
小学校2年の女の子なんて、私には異邦人だ!
風呂はどうするのだろう。銭湯に連れて行ってもいいが、男風呂というわけにはゆくまい、しかし女風呂だと、自分で洗えるのか。
夜、寝るときは二階に部屋があるから一人で寝かすべきか、私の側がいいのか。
洋服はどうするのだろう。翌日学校に行くそうだが、普段着をどうするのだろう。
しかしいまさら引き下がるわけにゆかぬ。長女は切り札を持っている。「小さいとき、お父さんとお母さんは、私たちをおばあちゃんに預けて海外旅行したじゃない!」
3時過ぎに長女につれられて、件の孫娘がやってくる。すぐに「お祭りに行こう。」最初からいれこんでいる。
長女が去り、いよいよおじいちゃんと孫娘で井草八幡。あれもこれもやりたいらしい。しかしボール掬いはモナカの皮がすぐに破れるし、射的は一発も当たらぬ、くじ引きで景品をもらうゲームはカスばかり・・・。それでもよほど面白いらしく、お参りなどは手抜きして、私をあちらへこちらへ引き回す。
八幡様から荻窪までは歩かせた。「バスに乗れば早いのに・・。」というのを、説き伏せるのに一苦労。やりたがっていたボーリングをやらせてあげるから、とおだてた。
ボーリングは例の左右ガードレールをつけてもらってガーターの出ないようにしたもの。1年位前に比べて、力は強くなったが、せわしく走っていって投げるスタイルは同じ。母親と同じだ、と心中苦笑。
「夕食はテラスでバーべキューか、回転寿司がいい。」というので、後者にすることにしていた。ところが荻窪駅近くになると「マグドナルドがいい。」いくらなんでもかなわん。また一苦労。子どもの意見の移ろいやすいこと。
いよいよ回転寿司。彼女はお寿司がまわっているところから自分でとるのがお好み。わざわざさびぬきを握ってもらって上流側のあいたところに皿をいれてやるのである。
ぶらぶら歩いて帰っていよいよ問題のお風呂。
身長138センチ。同年代の中ではかなり大きい方らしい。もう少しふくらみを持ち始めた体をみせ、「おじいちゃんのおちんおちん、大きい」といいながら、風呂に入ってくるのだからかなわぬ。
その上、とんでもない事が起こった。彼女が洗い場と洗面所の間のアルミドアの鍵をガチャガチャやっているうちに、外に出られなくなってしまった。
「おじいちゃん、窓から外に出て入ってきたら・・・。」しかしスッポンポンで出るわけにも行かぬし、第一玄関のカギは閉めたはずだから家に入れない。一時はスッポンポンのおじいちゃんと孫娘が「このまま出られなかったらどうしよう!」と考えた。
幸いガチャガチャやっているうちに、ようやく開いたが、孫娘は平然として「鍵、変えなきゃだめだよ。」
風呂から出ると「今日は遊びに来たんだから、何かしなけりゃ、だめよ。」「お祭りに行った記録を書かなければいけないんだろう。」「寝る前にやればいいから。」とトランプの相手をさせられる。彼女は木の板に釘をうちつけて、パチンコ台のようにした手作りの工作をおみやげ、と持ってきた。それも遊んで見せろ、とうるさい。こちらはもうオネムの時間・・・・。「居眠りしちゃ、ダメヨ!」「ハイ!」
ようやく就寝の段になると「おじいちゃん、お布団、こっちへ寄せてよ。」ぎょっとするようなことを平気で言って「わたし、恐い。お手て、握ってて・・・。」いわれるままに手をだすと包み込むように握って、3分後にはもう寝息をたてている。寝顔が可愛く、思わず髪をなぜてやる。しかし恐い、というので部屋の中の小さな電気も、廊下の電気もつけておいた。そのせいもあって、逆にこちらは全然寝つかれない。
翌朝。
朝食は長女が「何でも食べる、雑食性!」と言っていたから、パンに目玉焼き、ソーセージ、ピーマン、きのこ、それにジュースにした。しかしなかなか落ち着いて食わぬ。散々苦労したが、目玉焼きときのこはとうとう残した。
いよいよ学校へ。制服姿がそれなりに似合っている。
こちらは武蔵小金井まで送ってゆくつもりだったが、荻窪駅に行くと、「着いてこないで、お友達が来たらはなれて・・・。」ホームの柱の蔭から見ていると、男の子が二人、続いて女の子が一人近づき、予定通り7時29分の電車に乗っていた。中に約束していたお友達が乗っているはずだから、さぞにぎやかなことだろう。
家に戻る。やれやれ、子どもに振り回された20時間たらず。疲れた・・・・・。
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