弟とインドに旅行してきた。JTBのセットツアーで、行程はデリーから入り、ベナレス、カジュラホ、アグラ、ジャイプールと回って再びデリーに戻る7泊コースである。インドは二人とも初めてである。昨年行こうとしたが、パキスタンとインドの雲行きが怪しくなり、危険との話でやめにしている。
ベナレスは、遠藤周作の「深い河」やNHKで報道されたガンジス川での人々の沐浴、火葬など、カジュラホは、エロチックな秘仏群、アグラは、タジ・マハール、アクバル帝が作ったアグラ城、ジャイプールは、象に乗って向かう山の上にあるマハラジャの城、デリーは、遺跡もさることながら町の喧騒あたりが売り物か。代表的な北インド観光コース、バス、鉄道、飛行機と多くの乗り物を利用して、毎日長い時間旅行するもので、体力的には結構きつい。以下知識不足を省みず、独断と偏見で総括する。
二つ印象に残った。
第一はこうして豪華な旅行のできたことの幸せだった。
後ろに親がついているのかも知れぬが、汚い着物をきた女の子が、かけた歯を見せながら手を出す。歩くことすらせず、這いずり回って男の子が手を出す。一方でマハラジャは、城を見世物に、自分は奥の豪華なイスラム風屋敷に鎮座し、押し寄せる観光客など歯牙にもかけぬ豪華な生活を送っている。もっともそう言うわれわれは、超豪華な大名旅行を楽しんでいる・・・。その落差に驚く。
同時に、人は誕生から死という大きなサイクルの中にある、という当たり前のことをバナーラスで感じた。生れ落ち、生を楽しみ、やがてまた消滅してゆく・・・・それ以上でも以下でもない。だから思い切り生きる事こそが、むしろ神の御心にもかなっているのではないか。大名旅行も続ければよいではないか。それが神から与えられた己の道と認識するなら・・・。むしろ怠惰に過ごすより立派だ!大名旅行もいつかできなくなるときが来るのさ。
第二は圧倒的なエネルギーを感じ、これからのインドの成長を感じた。合わせて日本はもっとこの国に接近を図るべきではないか、と感じた。
街は活気にあふれている。戦後、日本が急速に復興したのは、日本国民の復興への憧れだった。若い力だった。それを今のインドに感じるのである。人々は日本人から見れば平均的には貧しい暮らしに甘んじているようだが、不幸には見えぬ。
10億の民、日本の国土の9倍の広さ、そして国土は、なかなか肥沃で農業に向いているようだ。この条件は、紙の上だけでは分からぬがすごい大きさだ。
一例を挙げるなら、ムンバイ(ボンベイ)は、インド第二の都市で、映画産業が盛ん、地方から多くの若者が明日のスターを求めて押し寄せているという。映画は今どんな作品でも作れば儲かる、くらいの成長産業であるという。結局人々が平均的には映画を見る余裕ができたが、その数が大きいため、ヒットするらしい。
障害は、物理的には教育問題とインフラ問題だろう。
識字率がいまだに72%と言う結果は、少し知識があれれば、うまい商売が出来るという土壌をもたらす。その結果が大きな格差。改善するにはまずは教育の充実だろう。小学校5年の5343制をひき、小中学校が義務教育だが、田舎では義務教育を受けることすらできぬものが多いという。次いでそのための道路・水道・下水・公共施設・情報網などのインフラ整備だろう。そのための財源確保が必要だ。たとえばこの国はまだ相続税がほとんどないらしい。それをとる政策をとったとき、富裕層の反発が予想される。どのようにしたらよいのか。
精神的には、宗教やカースト制度ではないか。カースト制度を完全に廃止し、人は生まれながらにして平等と認識させることだろう。しかしアウトオブカースト問題など、表面的に成功しても人々の心の奥まで浸透させるには制度改善と共に時間の経過が必要に見える。
宗教問題は、国民がどういう形の国を求めるか、という観点も必要だ。先進国とは違った形になるかも知れぬが、宗教をいかした国づくりを模索すべきなのだろう。
短い物見遊山旅行だから。大した事が分かるわけはない。しかし行くと行かぬでは大違いである。「百聞は一見にしかず。」・・・・どんなところ、といわれても説明しづらいが、今度のインド旅行は私に何かを教えてくれた気がした。
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