表面には言わぬが、世の中に「女はバカ」と考えている男性は多いのではないか。「女子と小人は養いがたし」などということわざもある。男性は女性を経験する事もその逆もないから難しいが、この書は答えの手がかりを与えてくれたように感じられた。
講談社+α文庫の一冊。著者は1955年生まれ、香川大学教授の岩月謙司。もともとは生物科学などを研究した人らしいが、人間行動学、動物行動生理学を専攻する。著書も多い。
一般に人間は自分が快だと感じることを熱心に、繰り返し行う動物である。受験勉強も、ボランテイア活動も本人が快を期待して行う活動だ、という解釈はそのとおりと思う。
女性は、特にその傾向が強く、たくさんある快の中、特に恋愛や結婚から大きな快を得ようとする傾向が強い。熱心に化粧し続けるのも、きれいになることが快であり、それにより大きな利益を得ると考えるからである。婦人服売り場やファッション雑誌に向ける女性の熱意、金銭的投資、時間的投資を見よ!
快が得られれば、心が安定し、安心する。おしゃべりを通じて快や不快を共有しようとする。身近な人、夫や恋人や友人とつながり、安心を得る。これに対し男性は、社会の中で自分の位置づけをみて安心する。愛されても、女性ほど心は安定しない。
女性は、快、不快の感情を正確に記憶する。この感情を思い出し、共感することによっておしゃべりが成り立つ。感情中心であるから話題は無尽蔵、一方で自分の感情を語るのが好きであり、聞き役を無意識であるが必死に探している。
女性は、感情が優先し、事実はそれに付随して理解する。快は善、不快は悪と考える。ただし思考は「自分が楽しく生きるため用」になっている。公私混同などもここから来る。感情の記憶をもとに考えるから、短絡的に結論を出し、男性が理解できないケースがある。「あいつの顔をみたくない・・・・不愉快だ・・・・よって死刑だ!」感情を正確に記憶しない男性にはついて行きにくい。男性は社会から正確な記憶、時には責任まで求められるから、事実中心に記憶し、感情はそれに付随する。
女性は、同じ考えで男性を記憶し、ランキング付けをする。そしてこのランキング表をいつもチェックしている。「誰が一番自分を気持ちよくさせてくれるか」「誰が自分に安心とリラックスを与えてくれるか」「誰と一緒にいるとき、自分は一番楽しいのか。」女性は過去にどんな快、不快を得たかを思い出し、反芻するが男性にはあまりない。旅行の写真などはその典型的な例である。
その上女性は、自分の感情に基づく判断に自信をもっている。従って、一度きらいと判断された男性ともとに戻ることはほとんどない。感情の判断は絶対的である。その裏づけには観察力の細かさと、優れた総合力がある。女性は愛されることを目的に行動するから、恋人の些細な行動も見逃さない (浮気のチェック)。目的がはっきりしており、記憶された事実や感情の全部を使って直感的に総合的に判断する。守って貰えること、興味を持ってもらえる事が一番大事!そうでなくなると自分の存在価値すら疑ってしまう。
女性は、過去の感情を自分の中でネットワーク化して蓄積している。涙もろいのは他の事実との関連で自分をそう感じさせるからだが、男性は理解できずパニックになる。またうそ泣きというのもこれを利用している。女性は、感情ネットワークをもとにイメージで行動する傾向がある。またこのシステムを完全化するために0点か100点かの二分法を使いがちである。ただし安全第一を考えるからこの閾値はかなり高い。あなたと彼は100点、そのほかは全部0点!
しかし女性のカンを妨害するものがある。
第一は愛されなかったことによって起こる自己欺瞞である。幼少のとき父親を「嫌い」と感じたとき、これはまずいと考え、無理やり自分に「これは好きだという感情だ。」と思い込ませる。これが暴力亭主、ゴキブリ亭主選択につながる。
第二は与えられたものの中から選択するため、過去において経験した快が小さいものばかりだと、それが最高と勘違いしてしまう。ニセモノの愛しか経験したことのない女性は、ニセモノの愛を本物の愛と認知してしまうようになる。
第三は自己受容できない場合。自己受容とは自分自身を受け入れ、自己を可愛いと感じる心である。これがあると、女性は誇りを持って生きられる。この受容の精神は女性の魅力であり、男性はこれによって勇気づけられ、魅力的に見える。逆に言えば自己受容のできぬ女性は男性との関係がうまく行かない。
最後に自己受容を高めるために必要なのは父親の愛であるとする。そしてこれが女性のカンを冴え渡らせる!この最後の結論は母親の愛を強調する一般の心理学教科書とは違っているようにも見えるが、著者の思いも込められているのだろうか。
またこの書での議論はあくまで一般論である、実際は個人差が大きく、当てはまらぬケースも多く見られることは留意しなければならない。タイトルは、どうもうまくないような気がする。たとえば「男の発想法、女の発想法」くらいなのならよいのだが、「女はバカ」とあると、それだけで人類の半分は買わなくなるかもしれない。何しろ彼らは感情だけで判断するのですから・・・・。
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