オリーブオイルをフライパンにたっぷり流し込み加熱する。そこに腹をぬき、軽く塩コショウをしておいたイワシをならべる。ジュッと音がし、台所がくさくなるからあわてて換気扇をまわす。焼きあがったら皿にならべ、鉢植えからとったバジルの葉とレモンをふりかけ、食卓に・・・。これが私のすきなイワシの食べ方である。
この食べ方はリスボンに行ったときに覚えた。港がちかいせいか、あそこは何かというとイワシ、それに干した鱈である。それに墨と一緒に焼いた小さな烏賊である。しかしリスボンのおかげで私はこういった魚に目覚めた?ような気がする。
イワシの自然誌(平本 紀久雄 中公新書)を読む。
イワシは栄養豊富で、食用、肥料用など昔から幅広く使われ「海の米」とさえ呼ばれていた。ところが1988年に最高450万トンも水揚げされたものが、90年代半ばには70万トンに過ぎなくなるなど、その資源量が大きく変動している。房総に住み、長年イワシの生態を研究してきた著者はその理由をさぐるため、この書を著したという。
イワシ類(ニシン目)の魚は。世界にざっと300種以上もあるといわれている。わが国周辺でも3科18属26種がある。ニシン体長36cm、マイワシ24cm、カタクチイワシ15cm、ウルメイワシ25cm、コノシロ30cm、サッパ15cmなどが代表的である。
ただ、魚屋にはこの記述よりおおきいものが売っているよう思った。そこで「さかなの見分け方」(講談社)、および「原色に本海水魚類図鑑」(保育社)を調べてみるとニシン35cm、40cm、マイワシ30cm、−、カタクチイワシ25cm,15cm、ウルメイワシ30cm,30cm、コノシロ30cm、30cm、サッパ25cm,20cmとなっていた。
イワシは魚体の大きさによって大羽イワシ(体長20cm以上)、ニタリイワシ(18-20cm)、中羽イワシ(15-18cm)、タツクリ(5-8cm)と呼ぶこともある。口の中の鰓でプランクトンを漉し取って生活しマイワシの場合、時速2キロ程度で1日26キロ動き回る。世界各地で、とれ外国産のものは種類が異なるものも多いようだ。
マイワシは体に横に7個の黒色斑が1列に並んでいるから区別できる。もっとも私が区別できるようになったのは最近だからあまり自慢できない。
マイワシは大半が冬から春にかけて産卵し、1回に生み出す卵の数は体長20センチ前後の雌で3-5万粒といわれ、産卵期海中に数回に分けて産卵する。ふか直後から全長6ミリくらいまで漂流期、30ミリくらいまでのマシラス期、60ミリくらいまでの稚魚期(カエリ期)をへて約6ヵ月後にはタツクリ、ヒラコなどと呼ばれる幼魚期にはいる。ちなみにカタクチイワシの仔魚をシラスと呼び、幾分大きく、姿かたちがよいので高値で取引される。
シラスボシはもちろんシラス、チリメンジャコはマシラス、煮干は・・・・ウーン、書いてない!料理に出されたとき、シラスとマシラスはどう区別するのか知らない。江ノ島に行ったとき、観光食堂みたいなところでシラスを注文したところ、小さな皿にちょこっとのせて出してきた。ぺロッ食ったが、あれはどっちだったか?
群れをなして餌をもとめて南北に回遊する。銚子の漁師の話ではそれらを「上りイワシ」「下りイワシ」、ほかに「沖寄せもの」「浦回しイワシ」などと区別する。群れを成すのは群れの方が安全で遊泳エネルギーが少なくて住む、丈夫な仲間だけが選択的に集まれる、雌雄の出会いの場が広がる、などが理由であろうか。
マイワシの漁獲量は、カタクチイワシ等にくらべて大きく変動する。その理由は気候や海況などの環境変化や人為的な乱獲も要因の一つだが、著者の結論は「マイワシ自身の質的変化」である。
「マイワシ固体群は機が熟すると、環境好転を背景に生き残る。1972年級群は突如卓越年級群になった。このようなひとつの卓越年級群がつぎの卓越年級群を生み出し、資源量は年々増加してゆく。資源量水準が高くなるとやがて餌不足が起り、成長や発育が遅れてくる。やがて極限に達すると、ちょっとした環境変化を背景に突如カタストロフィーが起こる。」(177p)
庶民はあまり気にせずに、冒頭のオリーブオイル焼きでも、酢漬けでも、刺身でも思い切り食っていればいい。それがイワシへのせめてもの供養?最後に九十九里町に町立「いわし博物館」というのがあるそうだ。機会があったら一度尋ねてみたい。
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