米カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授中村修二氏が、青色発光ダイオード(LED)の発明の対価の一部を日亜化学工業に対して求めた訴訟で、東京地裁は請求どおり200億円の支払いを命じた。判決は中村氏の特許発明が「青色LEDの製品化を可能にした」と指摘、特許権の効力が切れる2010年まで、日亜が権利を独占することで得る利益を約1208億円と算定した。その上で、中村氏の貢献度について「50%を下回らない」とし、発明対価を604億円とした。しかし請求が200億円であったため、全額の支払いを命じたというものである。
青色LEDは赤、青、緑色の光の三原色のうち、研究者の間で開発が極めて難しいとされていた半導体素子。中村氏は日亜化学工業在職中の1990年に「404号特許」と呼ばれる窒化物の成長手法を発明。この装置を使って青色LEDの開発にも成功、同社が発売を始めている。青色素子の実現でほぼすべての色をLEDで実現できるようになり、情報機器などの分野で市場規模が拡大している。
職務発明をめぐる訴訟における対価容認額は増加傾向にある。つい2日前には光デイスク読み取り技術をめぐる日立特許訴訟で東京高裁が一審判決の4.6倍、過去最高額の約1億6300万円を支払うよう命じ、世間を驚かしたばかりである。それにしても200億円。
日亜化学は中村氏の方式では現在の製品にはできず「当社の利益に全く貢献していない。」と強調し、「巨額のリスクを負担した企業に破天荒ともいえる巨額の成功報酬を請求することは、安定収入と巨額のリスク報酬の二重取りを求めるもので理論上許されない。」と批判し控訴するという。
産業界は「巨額すぎる」「企業内研究は会社の経営資源を使っており、パテントは企業にある」「会社と研究者がはっきりした契約をしておくべきだ。」など一応に困惑の表情。「これで訴訟に走る人が増える」「これほどのリスクと負担をさせるなら、日本から研究拠点を撤退させる企業が現れるかもしれない。」などの声すらでている。
しかし研究者は「プロ野球のスター選手と同様に、スター研究者への手厚い報酬は士気を高める。日本の科学の発展にプラスになるだろう。」などとおおむね歓迎。しかしそれでも特許で企業が得る利益の何パーセントが個人に還元されるべきかは議論のあるところ。
正直言ってなんとも言いがたい。
しかし常識的には企業内発明にこれだけ企業が負担しなければいけないとなるとずい分問題が出るように思う。社員の発明により得た利益を社員に還元すべきだ、という観点に立つと、ほとんどの企業が多額の出費を強いられることになると思う。当然大発明はそれに順ずる小発明や、時には実用新案、提案等にまでおよんでは不思議でない。さらには営業の場合はどうだろう。10億の売り上げを達成したら、1億の利益、そのうち私の貢献した分は20%で2000万円、などと言い出すことはないだろうか。
大体会社というところは、社員の無償の奉仕で成り立っているところがずいぶんある。お役所か駐車場の管理人みたいに決められたことを粛々とこなしていればそれでよいというものではない。みな会社のために尽くそうと幾分なりとも考え、工夫し、努力する・・・それで給料がもらえると信じているからだ。一方で個人は、普通はたとえば研究職に永久に留まるわけではなく、管理職になったり移動したりしてゆく。
もしどうしても発明に対する正当な評価を受けたいというのなら、会社と会社員としてではなく、それこそプロ野球の選手のように個々に契約するべきである。もちろん、好条件で迎えられることもあろうが、成果が上がらなければ自由契約になることも覚悟しなければならない・・・・。
ただ200億円という金額に驚くが、技術という国際的な競争力を持つ企業や個人を日本の企業が軽視してきた点に警鐘を鳴らした点では評価できる。国際的な競争力を持たぬ大手銀行などとメーカーの大きな待遇格差はどう考えてもおかしい。
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