242「悲しい!」(3月9日(晴れ))

新聞記事によると、8日兵庫県姫路市豊富町の採卵養鶏業「浅田農産」本社近くの鶏舎敷地内のクスノキで、同社の浅田肇会長(67)と妻の知佐子さん(64)が首を吊って死亡しているのがみつかった。会長は会社の上下の作業着、知佐子さんはグレーの服とズボン姿だった。自宅に「たいへんご迷惑をかけました。」などと書かれた遺書があった。長男である浅田農産秀明社長は、両親の自殺について警察から事情聴取を受けた後泣き崩れたという。

最近友人に「歳をとると感受性が鈍くなる。」と言ったところ「いや、逆に涙もろくなる。」と言われた。私も涙もろくなったのだろうか。同世代としてわけもなく悲しい。
ウエブサイトを調べたところ「身から出た錆、て感がなくもない。・・・・マスコミを甘く見すぎたようだ。」などと書いている人がいたが、とてもそんな気にはなれない。

新聞記事などをつなぎあわせると、浅田会長は1936年兵庫県の専業農家の次男として生まれ、小学校卒業後、すぐに養鶏の仕事を始めた。1960年浅田農業を創業。養鶏業を始めた理由について「米や麦を作っても、収入は年に2,3回。卵やったら日々の収入があるから。」と話し「採算の取れる年は少ないから、ごっつう苦労したなあ。」と振り返ったという。

浅田農産は今では姫路市の本社工場のほか、創業地の佐用郡佐用町、朝来郡和田山町、京都府、岡山県に農場を持つ。175万羽の鶏を保有し、独立系では業界トップクラスの規模。73年に法人化し本社を現在の姫路氏豊富町に移した。79年に販売部門を独立させ「アサダエッグセンター」を設立。オリジナル商品に「高原の蘭」がある。2003年6月期の売り上げは両社で合計88億円。

京都府は家畜伝染病予防法の届出義務違反容疑で府警に告発する方針をすでに固めていそうだ。すでに従業員らの事情聴取をすすめており、鶏をうめるなどの防疫措置が一段落した時期を念頭に、具体的な告発日程を農水省と協議し、最終決定するという。府幹部によると「社長から事情を聞いたが、会長からはまだだった。」

届出がおくれていることを徹底的に非難されているわけだが、その場に自分を置いてみるならば、当局に届け出るだろうか、と疑問を持つ。目の前で鶏がばたばた死んでゆく、世間でいう鳥インフルエンザかもしれないという危惧が頭をもたげる。しかし届け出れば大量の鶏の処分だの、工場閉鎖だのが待っている。しかもその補償をしてくれるわけではない。そうではない、ことを祈りつつ、何とか原因を突き止めようとするのは人情ではないだろうか。届出が遅れたことをのぞけば浅田農産は完全な被害者である。順風満帆の経営をしていたところ、カラスのせいか何か知らぬが突然鶏が死んでゆく・・・・・。まさにふって沸いた災難である。

経歴から見るとおり会長は立志伝中の人物であった。多分、この正月には彼らは幸せの絶頂だったに違いない。息子も二代目として立派に成長し、後の心配もない。苦労した創業時代に思いをはせながら余生を十分エンジョイできると祝杯をあげたに違いない。

人の運命とは分からぬものだ。私より5歳上、それだけ少しお考えに古いところがあり、親兄弟から教えられた世間様に対してすまないという気持ちが、お強かったのだろうか。たかが5つあるうちの1つの工場、告訴されたって大した罪になるわけではない、たとえ会社がつぶれたって男一匹何とかなる、そのくらい図太く生きてもらえなかったものか。府の事情聴取など知ったことか。会長は7日従業員一人ひとりに頭を下げ「一から立て直しだから頑張ろう」と話したという。その言葉、ご自分に言ってほしかった。

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