桜の開花宣言はとっくに出たのに、そのあと悪い天気が続き、一向に満開にならない。
椿も同様で、わがやのものは満開になった後、雨に打たれる毎日を過ごしている。
書店で花百科「つばきと早春の花木」というグラビア刷りのきれいな本を見つける。その本によると、中国で「椿」と書くと、センダン科の落葉高木チャンチャン(香椿)をさし、日本の椿とはまったく別種。椿の中国名は「山茶」で、古名は「海榴」または「海石榴」である。
日本は「日本書紀」に「吉野の住人が天武天皇に白海石榴を献上」、万葉集には椿の歌が9種あるという。しかし注目されるようになったのは村田珠光が「侘茶」を創始し、利休が発展させたころからで、茶花として広く利用されるようになった。
ところでこの本を買ったのは、我が家には結構たくさんの椿が咲き出したが、名前の判然とせぬものが多いからだ。以下に本知識と実際での薀蓄・・・。この本では椿を花の咲き方で分類している。
玄関脇の一番よいところを占めている椿は、「一輪咲き」で多分侘助と思う。侘助系の椿は茶人にことに好まれた。起源は文禄・慶長の役に出陣した加藤清正が朝鮮から持ち帰って、大坂、場内に移し植えたものだ、とする書物があるとか。利休時代に侘助という茶人がいてことのほか愛したからその名がついたとの説もあるがあきらかでない。
ただ私は「多分侘助と思う。」としたが、実はやぶ椿の区別がどうもつかぬ。この本によると侘助は「花の少ない冬に咲き、一重小輪で猪口咲き・・・」「雄シベが退化した品種群で、子房(発達して実となる部分)に毛があることから、「太郎冠者」の自然未生品種であることが確かめられている。」。我が家のものは確かに一重小輪で実をつけないのだが・・・・。
もう一つはト伴(ぼくはん)。花心が大きくぽっこりとまるく、花びらは深い赤で、それほど大きな花ではない。「唐子咲き」という咲き方だそうで古典の名花とか。別名を「月光」。
さらに崑崙黒(コンロンコク)。花心が花びらにつつまれているように見える。「宝珠咲き」というそうで、解説には「咲き始めのとき、花心に大きな宝珠を作る。肉厚の花弁の中輪」とある。崑崙というからには中国産かインド産なのだろうか。他に「千重咲き」の乙女椿や「牡丹咲き」あるいは「獅子咲き」の光源氏もある。
ヨーロッパに椿ブームを起こしたのは、日本の椿であった。18世紀初め、オランダ東インド会社商館医ケンベルが牡丹咲きや千重咲きの椿を紹介した。イギリス人コーツ郷は「香りはないが完璧無比な花」と賞賛した。その椿を題材にアレクサンドル・デユマが1848年に小説「椿姫」、5年後にジュセッペ・ベルデイの歌曲「椿姫」が発表された。その後気候の違いなどからヨーロッパの椿園芸熱は沈静化したが、第二次大戦後にアメリカでまたブームが起こった。
愛好家たちが待ち焦がれたのが黄色い椿。中国南部で発見された金花茶がそれで、1980年日本にも導入された。近年には、ベトナムなどで新たな原種探しがはじまっている。ただ思うのだが薔薇と同様、青い椿というのはまだ聞いた事がない。
一昨年始めた「お茶」は膝が痛くなって昨年秋にやめてしまった。しかしお茶を通じて椿などにも興味をもつようになった。最近この椿を一輪か二輪、玄関の花瓶に飾るようにしている。背景に今はボケを使っているけれども、蘇芳桜や雪柳がそろそろで、そちらも使おうかと思っている。開花前後のものをかざると、一日か二日で蕾が開き、結構長い間楽しめる。しかしあるときに侍の首のようにぽとりと台の上に落ちているのを発見する。
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