255「恋愛適齢期」(4月23日〔金曜日、晴れ〕)

映画でもと考えて歌舞伎町を散歩、ガールフレンドのAさんが言っていた「恋愛適齢期」という映画が目についた。現代はSomething's gotta giveというのだがどう訳せばいいのだろう?

ハリー(ジャック・ニコルスン)は、音楽界の大立者は63歳の独身富豪。お相手はいつも30歳以下の人もうらやむ美人ばかり。そんなハリーが、新しい恋人マリンとともに、二人だけのロマンチックな終末をすごそうと、ニューヨーク・ハンプトンビーチにある母親の別荘にやってきた。

そこにそうとはしらない母親のエリカ(ダイアン・キートン)が妹のゾーイとともに登場。エリカは50台半ば、離婚暦を持つ女性劇作家という設定。突然あられもない姿で現れた娘のボーイフレンドに思わず絶句、気まずい夕食となった。しかもその後、ハリーは心臓発作で倒れ、大騒ぎで病院に運び込まれた。
医者、関係者、看護婦が覗き込む中「バイアグラは飲んだか。」・・・首をふり激しく否定するハリー。いよいよ治療に入り、点滴が始まる。「今入っている薬がバイアグラと反応すると命取りになる事がある。」と述懐する医者。突然物もいわずに、注射針を引き抜き、ベッドを飛び出すハリー・・・そんなユーモアが客の笑いを誘う。

ハリーはエリカの別荘でしばらく療養生活を送ることになった。いつの間にかゾーイとマリンが消え、別荘には二人きり。招かれざる客の上、傍若無人なそのふるまいにエリカの執筆生活は乱され、我慢の限界。そんなハリーとは対照的に、病院の若い担当医でエリカの戯曲の熱烈なファン、ジュリアン(キアヌ・リーブス)が彼女に恋し、その思いを打ち明けてくる。20歳も年下とあってエリカはうろたえるばかり。しかし一方で一つ屋根の下で暮らすうちにハリーの意外な内面に気づき、彼女は次第に引かれていく。そして激しい甘美な夜・・・・「もうあきらめていたのに、こんな事ができるなんて」とすっかりのぼせてしまう。この辺キートンの演技がさえる。

ところが健康を取り戻したハリーは、性懲りもなく再び若い女性の下へ。激しく愛しただけに怒りと悲しみも深いエリカ。苦しんだ彼女は、今までのハリーとの生活をコメデイしたての戯曲として書き始める。「僕がブロードウエイでみんなの笑いものになるのか。」とぼやきながらハリーは旅に出る・・・・・。

監督、脚本,製作はこのような作品を手がけて一流のナンシー・メイヤーズ。彼女の最近の作品にはメル・ギブソン、ヘレン・ハント主演の「ハート・オブ・ウーマン」(2000)がある。ロマンチック・コメデイでなかなかお洒落な作品である。話がよくまとまっており、ハッピーエンドで、音楽がよく、画面が美しい。別荘から見る海辺のシーン、最後のパリのアレクサンドル2世橋での再会などうまいなあ、と感じた。

ところで小説や映画では、視点という事が非常に大事だと思う。10代の恋愛映画は、その年齢の子にはむくけれど、私たちの興味は引きにくい。先日の芥川賞作品「蛇にピアス」「蹴りたい背中」などは到底異次元の世界だ。私たちは私たちの年代の作品に興味がわく。去年6月にみたニコルスンの「アバウトシュミット」では主人公も66歳。定年後の男の孤独と悲しみを描いた作品であった。ハリーの63歳は、私とほぼ同じ年齢。このくらいの年齢の男を演じさせるとニコルスンは一番?初老のあなたに是非お勧めの作品である。奥様か恋人とどうぞ。

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