このごろどうも私は老人映画に取り付かれている。「アバウトシュミット」「恋愛適齢期」そして今日はガールフレンドのAさんに誘われて日本映画「死に花」
東京郊外にある洒落た老人ホーム「らくらく長寿園」、入居に際し億の金が要るが、老人たちは実に優雅なセカンドライフを満喫している。元映画プリデユーサーの菊島(山崎努)、無類の女好きで1000人斬りを目指す穴池〔青島幸男〕、ほら吹きムードメーカー庄司〔谷啓〕、銀行支店長だった伊能〔宇津井健〕、頭の中で様々な計画を立てる源田〔藤岡琢也〕、その源田ファンの遠山〔加藤治子〕、誰もが恋愛も趣味も若者に負けぬ元気ぶり。新人職員の井上(星野真里)は目をみはるばかり。
そんな中、源田に突然死が訪れた。故人の希望により派手やかな葬儀が行われ、遠山の心中までついた。彼は菊島に「死に花」という一冊のノートを託した。それはなんと銀行の地下まで穴を掘って17億円あまりを強奪するという奇想天外な計画。しかもその標的は伊能が一方的に責任を押し付けられてリストラされたあのサクランボ銀行。
マドンナ明日香〔松原智惠子〕にだけうちあけたはずの計画はあっという間に広がり、みんなやろう、やろうともりあがる。菊島の資金を元手に軽トラックを買い、ウオータージェット、エンジンポンプ、コンベア、ヘルメット、ビール?など取り揃え、いざ出陣。
掘り進むうち突如としてサクランボ銀行合併のニュース。あの支店は閉鎖になるのだという。そうなればすべての努力は水の泡。岸辺のホームレス先山(長門勇)、井上も加わっていつのまにかチームは7人。残された期間はわずか1ヶ月。掘って、掘って・・・しかし彼らに驚愕の展開が待ち受ける。果たして彼らは人生に最後の「死に花」を咲かせる事ができるだろうか。なんだかワクワクしてくるでしょう?
この作品の原作は太田蘭三という人。1929年生まれ、今年75歳?「殺意の三面峡谷」など山岳推理小説で有名。私も「餓鬼岳の殺意」というのを読んだことがある。彼のコメントがカタログに載っている。その一部・・・・「老人というと介護を連想し、老い先が暗くなる。老人を侮ってはいけない。いまどきの若者には負けないパワーがある。三途の川を渡る前に一花もふた花も咲かせようと、渾身の力を結集して、老い先にパット明るく希望の灯を点けたのが、この物語に登場する老人たちである・・・・・。」そうだ、そうだ大いに共鳴。 僕たちも映画のようにやろうとAさんの手を握ったら蹴飛ばされた。世の中、ままならぬ・・・。
ところで小説はウソと割り切り、荒唐無稽をあたかも真実のように描くところが面白い。かって島田荘司は「占星術殺人事件」を書いた。そこでは日本各地で7つに死体が発見される。ところがどの死体も首の部分だの胴の部分だの少しづつたりない。実は殺されたと思われたうちの一人が残り6人を殺し、死体をそれぞれ7つに切って、肉片を6つづつ組み合わせ、ばら撒いたのだという。にせ札作りじゃあるまいし、第一人はみな顔かたちが違うじゃないか、と思うがなかなか楽しい。
この銀行強盗計画もそんな伝。何しろ5人が毎日多摩にある老人ホームを抜け出した隅田川の護岸に穴を開け、トンネルを掘り進み、銀行地下にある17億円を盗み出そうというのだから・・・・。岸辺では谷啓ふんする偽の警官が毎日見張り、そして誰もきづかぬというのだからもうお笑い・・・・。しかしそれは言わぬこと。
ただ、一つ、私はこの物語のウソっぽいところで気になるところがある。
高額の老人ホームのメンバーがみなそんなに充実した人生を過ごしているか、という点。聞くところによると、実際はする事がなくひがなぼんやり、その上老人同士の社会だからどうしても生気がぬけてくるとか。ここにでてくる主人公はみな70−75歳、その年齢であれだけの元気なら老人ホームになぜ入るのだろうと思う。入居は、自分ひとりで頑張れるだけ頑張り、いよいよ動けなくなってからでいい、と思うのだが・・・。
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