小泉首相が再度北朝鮮を訪問し、金正日総書記と会談、日本人拉致被害者のうち蓮池さん、地村さんのお子さん5人が帰国することで合意、夜にはその5人が実際に帰国、というニュースで1日中日本はゆれた。
この事件について日経新聞記事を参考にしながら思いつくまま述べてみたい。
背広、スーツ姿の5人の様子が映し出されている。16歳から22歳。彼らは北朝鮮で生まれ育ち、比較的恵まれた生活をしていたようだ。北朝鮮というと脱北者の悲劇のみが大きく報道されているが、彼らはそういう立場の人とは無縁のようだ。その5人がある日父母がいなくなり、自炊生活を始めたと思ったら、言葉一つ分からぬ、日本に行け、である。彼らはまだ飛行機に乗ったことすらないのではないか。不安でないわけがない。
曽我ひとみさん問題については立場の違い、ということを改めて考えさせる。ジェンキンス氏は現在64歳、1965年に脱走し、北朝鮮入り、80年に曽我さんと結婚、二人の娘さんがいるとのことだ。米国は日本の要請にもかかわらず、日本に帰国した場合、現在のイラクの状況なども勘案し、訴追するという厳しい姿勢を崩していない。これをジェンキンス氏の立場からみれば「とても日本などに行けない。」と感じるだろうし、娘二人に一緒に北朝鮮に留まって欲しいと考えるのは当然の成り行き。北朝鮮も家族が北京で再開することに同意している、とのことだからもうこれは家族の問題である。もちろん、日本が米国にジエンキンスさんは例外にして、という権利はない。
家族会はゆれているように見えた。数で言えば政府が認定した不明者10人の家族が多くをしめているようで、今回総書記が「白紙に戻って再調査する。」と約束したとはいえ、それ以上の伸展が全くなかったからであろう。そうした中で「二回もだまされて平気な顔をしている」「退陣すべき」などの言い過ぎとも思える発言もあったという。
食糧25万トン、医薬1000万ドル支援は、前者を1キロあたり200円、後者は1ドル110円で換算すると511億円になる。記者会見で「人道支援は家族帰国の代償と受け止められるのではないか」と問われた首相は「米国も韓国も人道支援を行ってきている。日本も国際社会の応分の負担を果たしたい」と強調した、とある。この金額は代償なのか、人道支援なのかは議論の分かれるところと思う。
今回、日朝平壌宣言が日朝関係の基本と再確認し、国交正常化にむけて事務当局間で協議を再開する事が確認された。私にはむしろこちらの方が大きな問題になるように見える。極東アジアに平和が訪れるのは結構なことだが、貿易、人的交流などどのような影響がでてくるのか、どうもぴんと来ずもう少し知りたい。妥結の時期が明言されているわけではないから、じっくり時間をかけて取り組んで欲しいと思う。
核・ミサイル問題について総書記は「核を持ちたいと思っているわけではない、朝鮮半島の非核化が最終目標というのが基本的考え方だ。六カ国協議の中で平和的開発をはかるために努力する。」というが、今の時点では当然のことと思う。むしろ、小泉首相が「今日のやり取りを米国に伝える。」としたところ、総書記が「是非お願いする。」としているところに注目したい。彼らは日本に米国へのパイプ役を期待しているように思う。
今回の成果について民主党は「拉致事件の全容解明・全面解決への外交カードを自ら捨ててしまうことになりかねず、外交的な大失態である。」と批判する。一方共産党や社民党は基本的には歓迎する、としている。タス通信が「小泉首相は東京に凱旋帰国する」と伝えるなど、米国、中国、ロシアなど諸外国メデイアは一定の評価を与えている。
今回の訪問はリスクを大いに伴った。それだけに個人的にはクリーンヒットであることは間違いなく、小泉首相はこの問題では出来る限りのことをやった、と感じる。歴代首相が何もできなかった問題に、ここまで道筋をつけたことはやはり素晴らしい。
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